召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲と物部かすみ、謎の招待を受けるパート2 (第3幕)
最神玲が謎の司祭に誘われるままその後について祭壇裏手の扉から先に進むと、そこは短い廊下になっていた。そしてその奥には重い鉄扉がひっそりとえていた。司祭の男はその扉を押し開けて中に入って行く。玲もその男の後から中に入ることにした。中に入った途端、玲は顔をしかめた。腐った木の匂いが鼻を刺したからだ。そこは執務室のような趣を持つ部屋のようである。そして床は今までの石畳とは違い木で作られていた。だが長年放置されたためか、その床が腐っているようでそれが嫌な臭いを部屋中に撒き散らしていたのだった。そして奥にある年代を感じさせる机の向こうに回り込んだ司祭の男は、椅子に座って玲をじっと見つめた。
「先ず、自己紹介をしましょう。
私は、サモネル教団の
アジア地区を担当しております
サワノと申します」
うーん、やはり日本人なのか、日本人にありそうな名前で自己紹介をしてきた。まあ、ハーフのタレントなどがいるのを玲も知っているので、特にそれ以上何も感想は無かった。そして、サワノは背もたれに体を預けながら足を組んで
「私は、あなたと物部かすみさんが
日本のサモネル教団を解散に
追い込んだことは知っております」
出来るだけ目立たないようにしていたつもりだが、なかなかそうもいかなかったようである。
「で、僕とかすみに対し、
その落とし前をつけに来た、
と言うことなんでしょうか?」
と玲は口角を少し上げて不敵な笑みを浮かべながらサワノにそう尋ねた。サワノは急に机の上に身を乗り出すような恰好で玲の目を見つめながら、
「いいえ、とんでもないです。
その逆ですよ、最神さん。
我々としてはあなた達と
上手くやっていけないか、
と思っております」
どうやら、玲とかすみをスカウトに来た感じである。尤もそれが本心なのかどうかは定かではない。それに対して玲は、
「うーん、そうなると幾つか
気になることがあるんですが...」
どうしてあなた方は何の罪もない人達を霊界に送っているのか?と言うことを尋ねた。ところが、サワノは再び背もたれに背中を預け、困惑を演じるように眉を寄せ、わずかに首を傾けながら、
「ん?霊界ですか?
さて、そんな所に人を送ることなど
出来ませんが...」
と玲の質問に対し完全に否定した。尤も彼が嘘をついているかどうかは後で確認すれば良いことであるので、玲は
「そうですか。
ではあなた方の目的何なのですか?」
「我々の目的ですか?
それは人類の幸福を願うことですよ」
さも当然でしょう!と言わんばかりに両手を広げて満面に笑みを湛えてそう答える。だがその笑顔の裏にはな心が見え隠れしていることを玲は何となく感じていた。
「では最後に。ヴェルハムとは何者ですか?」
「ん?ヴェルハム様は我が教団を立ち上げた
創設者であられるお方です。
そのヴェルハム様がどうかされましたか?」
「あー、すいません、質問の仕方を間違えました。
ヴェルハムは召喚術師ですか?」
玲のこの問い掛けに対しサワノは、ほんの一瞬だが肘掛けに置いた手に力が入りビクッとした表情を見せた。玲はそれで十分だと感じた。やはりヴェルハムはヴェランが古代のサモナルドから転生して来たのは間違いなさそうだ。念のためヴェルハムに会ったことやどこに住んでいるのかを尋ねるも「分かりません」としか答えが返ってこなかった。まあ、これも後で尋ねれば良いか、と玲は考えた。それならここで済ませれば良いのではと思われるが、その部屋の四隅には監視カメラが設置されている。もしこちらが魂の尋問を行えば、何をしていたかが向こうにバレてしまう。そうなると、今後この教団を調べるのに都合がよくないと考えたのだ。
「それで最神さん、
ご返事の方は如何でしょうか?」
とサワノは机の上に身を乗り出し、絡めた指の上に顎を載せながら玲に再度尋ねた。玲は腕を組んで考えるフリをした。勿論彼の中では結論は既に出ていた。
「やはり、カルト教団に興味はないので
無理ですね」
と玲は淡々とそう答えた。とその時、足元から僅かだがヒンヤリとした風を感じた。 あれ?この下って空洞になっているのか? と思う間もなく、サワノは「そうですか、残念ですが仕方がありませんね」と言ったかと思った次の瞬間、玲の立っていた床が突然大きな口を開けた。玲は驚きの余り口を開けて何か言おうとしたが、そのまま床に開いた暗闇の中に吸い込まれるように消えていった。
その頃、物部かすみは5人の傭兵なのか暗殺集団なのか分からない連中に囲まれていた。もしここで一歩でも動こうものなら、銃口が火を噴くだろうことは目に見えていた。だが、かすみとしてはそうなる前に転移することを考えていたので、あまり気にすることは無かったのだが。もしかして、転移しちゃうとあいつら同士討ちになるんちゃう、などと相手のことを心配したりする余裕が生まれていた。するとその時、かすみのカフリングから玲と教団幹部とのやり取りが聞こえて来た。残念ながら幹部の声は耳に届かないが、玲の答えから想像するにどうやら自分達に対して仲間になれ、と誘っている感じを受けた。そこで玲が質問をするがどうやら全て適当にはぐらかされている感じである。それから玲が「無理ですね」と言った途端、玲の絶叫が耳に届いたため、かすみは瞬時にパニックに陥った。
”やばい、やばい、やばい!
玲がやられたんか?”
と焦りだすかすみであるが、直ぐに「あー、ビックリした」と言う玲の呑気な声が聞こえてきたので、かすみは思わず「アホか、玲。ビックリさすなや!」と叫びそうになった。とりあえず玲は無事みたいなので何があったのか聞こうとしたその時、かすみの足元にも突然穴が開き、かすみも闇の中に吸い込まれるように消えて行った。