召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲と物部かすみ、謎の招待を受けるパート2 (第4幕)
最神玲は咄嗟に身の安全を確保するために、衝撃のショックを吸収するスタント用エアバッグを召喚した。これは映画のスタントマンが使うようなタイプで、高さ30m以上から落下しても安心して使えるように設計されたエアバッグである。これを瞬時に展開させられるのは、召喚術師だからこそ出来た技であろう。そして今回は、事前に玲とかすみはお互いに相談して、あらゆる事態を想定し、それらに対応できる召喚術を瞬時に展開できるようにショートカット化しておいたのだ。ちなみに、このエアバッグは玲ではなくかすみが創成召喚したものであり、それをお互いにショートカット化していたのだ。また他には、頭上から何か落ちて来た場合に備えて、金属製のドームを召喚することも行える。そして、事前の備えのお陰で何とか地面への激突を免れたのだが、それでも思わず「あー、ビックリした」と呟いてしまった。確かにあの部屋の床下からは僅かだが風を感じていた。だがまさかいきなりそう来るとは予想していなかった玲だが、直ぐに上空を見上げると高さ30mはあろうかと言う洞窟の中に取り残されていることを認めた。とその時、玲のカフリングからかすみの悲鳴が聞こえて来た。
「かすみーー!どうしたんだーー!」
と叫ぶとかすみから
「くそー! あいつら! マジでしばいたる!」
と何時もの口癖が飛び出したことで玲は一安心した。そしてお互いに何があったのかを伝えあうと、
「ちっ、全くあいつらのやることは
ワンパターンか!
少しはひねりを加えろや!!」
とかすみが再びぼやき出した。どうやらかすみも別の所の洞窟の中に閉じ込められているようである。そんなことを話し合っていた時、玲の居る洞窟に動きがみられた。玲が確実に死んでいることを確認するためだろうか、上空に開いた穴から人が降りてきたのだ。しかも、何かに乗って降りてくる感じである。そこで玲は
「かすみ、こっちにお客さんが来たから
ちょっと相手してくるね」
と言いおいて、そのまま向かった。かすみの方も、
「あっ、何や上の方から1人降りてきてるわ。
うちもこっちを相手せなあかんな」
と言うのだが、その時玲が
「かすみ、試しにブーメラン投げてみたら?」
とアドバイスした。最初”ブーメランなかんある訳無いやろ”とぼやこうとするも、”あっ、あれか!”と思い出し、早速手元にヘキサグラム型召喚門を召喚した。そして試しに投げてみた所、懸垂降下中のその人物に命中し、そのまま真っ逆さまに落下した。
“あっちゃ~、あの人大丈夫かな~”
と呑気にそんなことを考えているかすみだが、どうやら1人やられたと判断したのか、上で待機していた残りの4人が一斉に懸垂降下をしながら下に向けて自動小銃を乱射し始めた。かすみは召喚門シールドを自分の周りに展開しているので直撃は避けられるのだが、それでも反射的に慌てて逃げ始める。そんな時も隙をついてもう一つのブーメランも投げてみた。すると1人に命中したが、何とか落ちることなく踏ん張ったようだ。
かすみは直ぐに自分の命を優先すべきだと考えて、場所を移動しようと動き始めた。とその時、足元で何かが砕ける感触が伝わって来た。流石にここでLEDライトを照らすのは自分の場所を伝えることになり自殺行為に他ならないため、何時ものあのキモイ奴を召喚した。そして足元を見た時、
「ううううう、うわーーーーー」
と思わず叫び声を上げてしまった。その様子をカフリングを通して耳にした玲が、「かすみ。大丈夫か?」と声を掛けてきたので、思わず
「う、うん、大丈夫やねんけどな、足元に...」
と言ったっきり黙り込んでしまった。かすみが見たもの、それは大量に積まれた骨、骨、骨である。しかも頭蓋骨も多くみられることから、それが人骨であることが分かった。ただし、いったいこの場所にどれくらいの人達の骨があるのかは想像できない。そしてかすみは、今その骨の山の1つに立っていたのだ。そこでかすみは急ぎその場を離れるために転移しようとしたが、
「あっ、あれ?何でや?玲! 転移でけへん!」
と再びかすみは騒ぎ出した。かすみのその声を耳にした玲は、サワノからの攻撃を回避しつつ自分もその場で転移を試みることにした。だが確かにかすみの言う通り、転移は出来ないのだ。
「かすみ、恐らくここら辺一帯に、
転移防止措置が施されているんだよ」
どこかにそれを行っているアーティファクトがある筈だと伝えるが、恐らく城の方ではないかと懸念した。だが
「かすみ、最悪、バレル型かヘキサグラム型の
降霊転移門で霊界に向かえるはずだから、
それで逃げてくれ」
「わ、分かった。まあ、そうなる前にやな、
このかすみ様があいつらをシバクけどな、
ははは」
とかすみの強がりを耳にした玲だが、どことなく何時もの威勢のいいかすみがそこに見られないので、若干心配ではあった。それよりも、玲は自分の方も何とかしないといけないのである。
サワノが上空に開いた穴から文字通り「降りて来た」のを目にした玲は、てっきり自分が以前使った乗用ドローンか何かだろうと考えていた。尤も玲の居る場所からだと丁度逆光になるためその正体はよく分からない。そこで玲は閃光弾を発射して周囲を明るくすることにした。勿論そうすると自分の居場所も明らかにしてしまうが、特に隠れて何かするようなことは考えてない。そして玲が目にした光景は...
“えっ、嘘だろー、あれ?マジなんか?”
と玲が心の中で驚きの声を上げていたが、玲が驚いた原因、それはサワノがヘキサグラム型召喚門に乗っていたことであった。そして閃光弾により明るくなった洞窟の中で、そのヘキサグラム型召喚門の詳細を目にすることが出来た玲は、早速自分の召喚の書に記述した。これぞまさに玲と言うよりも中身のカーンフェルトの得意技がいかんなく発揮されたという所だ。だがどうやって操縦するかは分からない。そこで玲は試しに手元にヘキサグラム型のブーメランを召喚し、それを投げてみた。するとサワノは、何やら呟きながら前進と後退、左右への移動、そして上下方向への移動を行いながら、玲のブーメラン攻撃を回避し続けていた。なかなか当たらないブーメラン攻撃に玲は苛立っていたかと言うと、それはなかった。むしろ、偶々当たって落ちたらラッキー位にしか考えてなかったようだ。それよりも、サワノが口にしているのは恐らく古代語であり、玲はその古代語をまさに耳にする絶好の機会を得たため、心の中では歓喜の雄叫びを上げていたのだった。
”千歳一遇のチャンスって、
まさにこれを置いて他にないよな!!”
そんな玲の思惑を知る由もないサワノは、まさか最神玲が自分達と同じヘキサグラム型召喚門を使うことに驚きを隠せなかった。いや、それ以前にどうやってこの高さから落ちても無事なのか、いまだにその理由が分からず困惑してもいた。サワノは最神玲の死を確認し、その死体を回収するためにわざわざ執務室から降りてきたのだ。ところが、玲が死んでいるどころかピンピンしており、しかも攻撃を仕掛けて来たことに今もって信じられない思いに囚われていた。彼の知る限り、もし仮に召喚術で何か対応したとしても、落下まで数秒あるかないかと言う短い時間で何かを召喚することは、自分の持つ召喚術、それはつまりヴェルハムから贈られたアーティファクトの賜物だが、絶対不可能である。だが下から攻撃を仕掛けてきているあの男は、何事もなく着地しただけでなく、この自分に対し攻撃を仕掛けてきている。この時のサワノは、言い知れぬ不安と底知れぬ恐怖に駆られつつあったといっても言い過ぎではなかった。自分達の知らない術を操る謎の連中に、我々は無謀にも喧嘩を売ったのではないのか、と言う後悔と共に。だがこの命は既にヴェルハム様に捧げており、ここで命を落としても悔いはない、と日頃から崇拝するヴェルハムへの信仰心の賜物であろうか、サワノの心は少しずつだが平静を取り戻してきた。そして玲に対する反撃を始めようとしていた。