召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲と物部かすみ、謎の招待を受けるパート2 (第5幕)
司祭のサワノは最神玲からのブーメラン攻撃をしながら、杖を持つ右手を前方に差し出しそこにヘキサグラム型召喚門を召喚した。そしてその召喚門に更に彼はある術式を加えた。すると、その召喚門が、重心を軸にして勢いよく回転を始めた。その様子は、まるで歯を剥き出しにした電動丸か、金属を切断する時に使うグラインダーと表現したら分かり易いだろうか。そしてサワノが「前進」と命令すると、その回転する召喚門が玲の居る場所を目掛けて飛んで行った。玲はサワノが何かを召喚したのを目にした時、
”何だ、あいつもブーメラン飛ばすのか?”
と少しがっかりしながら、自分はブーメランをサワノに向けて飛ばしつつその様子を見ていた。ところが、ヘキサグラム型召喚門がそのままの状態で突然回転を始めたのを目にした玲は、今日何度目かの驚きに包まれていた。
”うわー、何だあの術式は、マジかー”
と再び心の中で雄叫びを上げていたのだが、次の瞬間その回転した召喚門が自分目掛けて飛んできた時、その興奮が一気に冷めて、恐怖のどん底に落とされた。
”やばい、やばい、やばい、
あれに触れたら即死だ!”
と思ったかどうかは分からないが、玲は瞬時に金属製のドームを召喚し身を守ることに専念した。玲の考えでは、あの回転しているブーメランは、金属製のドームにそのまま弾かれて元に戻るか、運が良ければドームに衝突して砕けるか、ドームに刺さって身動きが取れなくなると期待していた。ところが、
“えっ、うそ、うそ、ちょっ、
それは無しだよー”
と心の中で嘆いていた。一体玲に何が起きているのか?実はその回転している召喚門が、まさにグラインダーとなって金属製のドームを切断し始めたのだ。そして丁度その時、カフリングからかすみが転移出来ないと訴える声が聞こえて来た。玲はその場で自分も転移を試みるが確かにできない。そこでかすみに転移防止措置のことを伝えながら、場合によっては霊界に向かうことをアドバイスした。そして今まさに自分も霊界に向かうべきか考えていた。と言うのは、回転する召喚門の先端部が玲の目の前に現れたのを目にしたためだ。だが、この召喚門はサワノの命令で向かって来たのを思い出した時、1つの回避策を閃いた。ただし、これは自分も何かしらダメージを受ける危険性があるが、玲としては逃げるよりも召喚術で何かやってみたいことの方が強く作用するため、直ぐに準備にかかった。
まず、自分の周りにヘキサグラム型召喚門を用意し、”魂の門を叩く者”の術式を作動させた。すると自分の周囲に猛吹雪が発生した。それからすぐに玲は、切断面の真下で頭を覆いながら出来る限り回転するヘキサグラム型召喚門の軌道から避けるべく体を低くしてしゃがみ込み、そして直ぐに金属製のドームの召喚を解除した。すると、回転する召喚門が玲の頭上ギリギリの所を通り過ぎ、そのままの勢いで地面に突き刺さって消滅した。だがその勢いで石の破片が周囲に勢いよく飛散し、その一部が玲の背中や足腰を直撃した。玲は痛みに耐えながらも回転する召喚門の攻撃から回避できたのを確認し、急ぎ立ち上がって吹雪の中を後退し始めた。だが流石に体が冷えて動きが鈍くなってきたため、止む無くそこで召喚を解除した。そして直ぐに閃光弾を打ち上げて、サワノの居る場所を確認した。意外と近くの空中を漂っているサワノを確認した玲は、直ぐにサワノの真下にあるものを召喚した。
一方のサワノはと言うと、誰もこの攻撃から逃れることが出来ない、ある意味最終兵器のような召喚術を解き放ったのだが、玲が金属製のドームを展開して防いだのを見た時、やはりこの男を敵に回すべきではなかったと、後悔し始めていた。だが、そのまま回転する召喚門がドームを突き破ろうとするのを目にすると、後は時間の問題、これで俺の心配の種は無くなると安堵の表情を浮かべていた。ところが、最神玲と言う男は何をしでかすか分からない。そして次の瞬間、突然目の前に猛吹雪が発生し視界が完全に遮られてしまった。これでは召喚門を制御することが出来ない。いや、それよりも、この猛吹雪は一体どこから現れたのか?もしかしてこれも召喚術なのか?果てのない疑問が次から次へと湧き上がるが、この吹雪は視界を遮るだけでなく、体温も奪うことが分かった時、
”このままだと、あいつも凍死するか?”
と少し楽観的になった。そして猛吹雪が止んだ次の瞬間、近くで強烈な閃光が発生した。サワノは暗視カメラを装着していたため、一瞬にして視界が真っ白になった。
”全く、諦めの悪い奴だ”
と思ったかどうかは分からないが、直ぐに回転する召喚門の準備を始めようとしたその時、サワノは巨大な手に捕らわれてしまった。
玲は、サワノの位置を確認するや否や、彼の真下に 命脈を絶つ鎖”の術式を設置し召喚した。すると地面が割れてそこからあの巨大な手、エンペラールが言うところの「ヴォルニウスの手」が現れたかと思ったら、直ぐ真上に停止していたサワノをがっしりと掴んだ。そしのそのまま引きずり込もうとした時に、玲は召喚を解除した。すると空中で何の支えもなくなったサワノは、そのまま地面に落下した。数メートルの高さであったが、流石に着地する体制を取ることは出来ず、そのまま固い地面に激突し意識を失ってしまった。これで漸くこちらの方は片が付いた。玲は早速サワノの魂を分離することにした。これで意識を取り戻すことは無い。そしてかすみに今の状況を確認しようとしたとき、かすみから
「れ、玲.......ちょっ、ちょっとな......
今から、れ、霊界に行ってくるわ!」
と連絡が入った。その声の様子から、どこか怪我をしているのか何やら弱々しい感じを受けた。そのため、玲は居てもたってもいられなくなり、「かすみ、待ってろ!!今そっちに行くからな!!」と叫んで直ぐにでもかすみの傍に駆け付けようとするのだが、ここは転移が出来ない。そこでかすみに、
「かすみ、大丈夫か?
怪我してるんじゃないの?」
と尋ねると、
「ま、まあ、ちょっとやっちゃったけど、
あ、あいつらシバク位は大丈夫や。
そ、それよりそっちはどうなん?」
と自分のことよりも玲のことを心配するかすみである。全く、自分のことだけ心配してろよ、と言わずにいられないが、これはかすみの性分である。そこでこちらは片付いたことを伝えると、
「そ、そっか、それは良かった......
じゃ、じゃあ、こっちも片付けてくるな」
と言って通話が切れた。玲は急ぎヘキサグラム型召喚門を設置し、そこに乗って「上昇」に対する古代語の命令を伝えた。するとその召喚門は玲を乗せて上昇を始めた。その後少し危なっかしい感じで玲は召喚門を操縦するが、何とか上空の穴から先程の執務室に戻ることが出来た。そしてそのままかすみが居た礼拝室に向かい、同じように床に開けられた穴から再びヘキサグラム型召喚門に乗って降りることにした。玲は閃光弾を打ち上げて周りの様子を確認した時、そこに2人の死体が転がっているのを目にした。1人は首が変な方向に折れ曲がっていたことから墜落死したと思われる。そしてもう1人は、額に銃弾が撃ち込まれての即死のようだ。かすみが撃ったのだろうか、それにしては鮮やかな腕前だと変な事に感心し出す玲である。それよりもかすみと残りの傭兵は見当たらない。だが、玲にはどこにいるかが直ぐに分かった。丁度洞窟の真ん中あたりの地面にその痕跡が残っていたからだ。かすみがそこに降霊転移門を設置し、それを全開した痕跡である。そこで玲はそこから霊界に向かうことにした。
玲は直ぐにかすみが倒れている場所を見つけることが出来た。そこにはかすみ以外に3人の傭兵が息も絶え絶えに転がっており、そして大量の骨の山もおまけとしてあった。玲は急ぎかすみに近づき彼女を抱き起すと、彼女からまだ温もりを感じることが出来た。加えてかすみの胸は規則正しく上下運動しているのを目にしたことで、どうやら疲れなのか傷みなのかで意識を失った感じを受けた。と言うのは、かすみの左腕からは、今は止まっているが銃痕による血の跡が確認された。そして左の大腿部にも銃痕が見られたことから、壮絶な戦いがあったのではと思われた。玲は急ぎ近くに降霊転移門を設置して外を確認し、地球のどこかの場所であることが分かった時点で、かすみを抱き抱えて霊界を後にした。そして直ぐに美土路神社ではなく、別荘の自分の離れに向かうことにした。