召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M vs. 霊能力者 Part2 (第1幕)
4月になると美土路神社のソメイヨシノは満開となり見ごろを迎える。そしてこの満開の桜を毎年のように社務所から眺めては、最神玲と物部かすみは春を感じている。だが昨年のこの時期は、美土路神社の評判を聞きつけて全国から大勢の参拝客がやって来て、正直ソメイヨシノを愛でる時間や暇はなかった。ところが今年はと言うと、何やらひと段落と言うか、一時のフィーバーは収まったようで、意外とここ何週間かは参拝客が少ないようだ。だが、昔の様にゼロとはならないのだが、それでもこの春の陽気のせいか、とうとうあの人は舟を漕いで長い航海に出てしまった。本当に久しぶりの航海という所だろうか。そしてもう一人の方はと言うと、相棒の寝姿をスマホに納めて、後で弄るつもりである。そして寝姿をスマホに撮られたあの人は、ほぼ1年振りの昼寝を堪能したのだった。
「かすみ、帰るよ!」
と最神玲が物部かすみに声を掛けた。すると、
「ん?もう朝ご飯なんか?」
「朝ご飯はとっくに終わってるよ!」
と玲がかすみに注意すると、かすみはカッと目を開いて、
「はぁ?うちまだ朝ご飯食べてへんわ!」
と玲に食って掛かる始末である。そこで玲はマキザッパを召喚してかすみをシバキし、
「か、す、み、さ、ん。
い、ま、か、ら、ゆ、う、は、ん、だ、よ。
わ、かっ、て、ま、す、か?」
と区切りながら説明しつつ、もう一発お見舞いした。これでどうやらかすみも正気に戻ったようで、
「もう、玲! 何すんねや!」
と怒り出す始末。だが自分が昼寝していたことを思い出したかすみは、「ちっ、今日はこれ位にしといたるわ」などと捨て台詞を残した。全くかすみは往生際が悪過ぎるというべきだろうか。そんなかすみを放っておいて、玲は
「じゃあ、僕は夕飯の準備をするから先に帰るね」
と言ってかすみを残して先に自宅に戻って行った。かすみは昼寝をしていたことがばれて気恥しいのか、無言のまま社務所の戸締りをして自宅に帰って行った。
帰宅したかすみは、早速キッチンから漂ってくる良い匂いに心を癒されていた。かすみを気分良くさせていたのは、今日のメインとなる今が旬のメバルの煮付けである。それ以外には竹の子の炊込みご飯とアサリのすまし汁である。何やら和風の凝った料理が並ぶようだが、これら全てを玲が作れるのか?と当然疑問に思われるだろうが、
「師匠、お帰りなさい!」
との神室霊華の出迎えから分かるように、彼女が主に作っていたのだった。ちなみに玲は、竹の子の炊込みご飯とすまし汁を担当している。そして神室霊華が何やらニコニコしながら
「師匠、今日は久しぶりに
ゆっくりされたようですね」
とかすみに声を掛けた途端、かすみは急に恥ずかしくなり俯くが、心の中では
“くそっ、玲の奴チクったな!”
と玲への恨みを募らせていた。
そんな不穏な空気に包まれていたかすみの目の前に、美味しい香りを漂わせるメバルの煮付けが出され、更に旬の竹の子の炊込みご飯とアサリのすまし汁を目にした途端、先程の恨み辛みはどこへ行ったのか、「いっただきまーす!」と元気よく言うや勢いよく食べだした。かすみのこの姿を目にした玲と神室霊華は苦笑してしまう。
“これでは育ち盛りのお子様ですね”
とは神室霊華の心の呟きであった。
「流石、霊華さんやな、
この煮付けの味付け、絶妙やわ~」
「師匠にお褒めに預かり光栄です」
と2人で会話を楽しむ一方で、更にかすみは
「この竹の子のご飯とはまあまあやな」
と玲に対しては冷たくあしらうことを忘れない。先程の仕返しとばかりに毒づくが、
“かすみの昼寝の証拠は
バッチリ押さえているからね”
と玲は心の中で呟きながら苦笑するだけにした。
さて、賑やかな夕食が終わった時、神室霊華は玲とかすみに相談があると言って自分のスマホを取りだし、ある項目を表示してからテーブルの上に置いた。それは神室霊華の仕事用のメアドに送られて来たメールであるが、文面は
「ん?何や、これ?英語やんか!」
「霊華さん、遂に海外へ進出か!」とかすみはニヤニヤしながら弟子の神室霊華に詰め寄った。神室霊華としては国内だけでも手一杯なのに、これ以上海外の分まで負担を掛けられるのは真っ平御免である。そんなことをかすみに伝えつつ、内容を要約して2人に次のようなことを説明した。
そのメールの送り主は、ビショップ・モルヴェインと言う名のアメリカの著名な霊能力者であり、アメリカでは最近頭角を現してきた若手の霊能力者らしく、FBIの捜査にも協力するなど、人気と実力を伴う霊能力者として人気が出ている。まあ、アメリカ版の神室霊華と言う所であろうか。そんなビショップ・モルヴェインは、の名が示すようにカトリック教の司教かと思われるが実はそうではなく、これは神室霊華と同様、霊能力者としての通り名である。そしてビショップ・モルヴェインが神室霊華にコンタクトして来た理由は、ズバリ、比べである。ただしどちらが重い物を運ぶとかの腕力ではなく、当然霊能力の方である。そして力比べの日時と場所についてだが、近いうちに日本を訪れるようで、その時に決めようということである。そして
「助っ人は有りでも構わない、
ということのようです」
と神室霊華が補足説明をするように、要するに自分の取り巻きを引き連れて参戦してもOKということである。となると、恐らくビショップ・モルヴェインは大勢の弟子やら何やらを引き連れてやって来そうに思えるのだが、迎え撃つ神室霊華としては
「私自身、余りこういうことに興味がありませので、
さてどうしようか迷っております」
と言うことのようだ。ただし、下手に自分はやりませんと言えば、当然、相手は尻尾を巻いて逃げたと宣伝してくるだろうし、そうなると後々の自分の商売にも悪影響が出ることは十分に予想される。かと言って。大勢の霊能力者を同伴させるのも気が引けるということで、神室霊華としてはさり気なくだが、玲とかすみに助っ人をお願いしたいということであった。当然かすみは、神室霊華の意を汲んで二つ返事でOKを出したが、そこには
“うわ~、めっちゃオモロそうなこと
考えてくるやんか~”
という好奇心が働いていたことは言うに及ばないだろう。そして玲は
「僕としては、やはりこうい時に
かすみは必ず暴走するから、
それを上手く制御しないといけないので」
と言うことで参加を決めたが、実際はかすみと同様に面白そうという好奇心が働いていた。だが、これにはかすみから早速クレームが入った。
「はぁ?玲さん、
何時うちが暴走したんかな~?」
とマキザッパを召喚して自分の手にバンバン叩きつけて玲をシバク準備を始めるが、玲はかすみの過去の行いを列挙し出した。するとかすみには何やら思い当たることが多くあるようで、
「ちっ、全く、いらんことばっか覚え腐って」
と玲に毒づきながら、折角召喚したマキザッパをそのまま解除するのが惜しいのか、玲の頭に一発だけお見舞いしてから解除した。玲もとんだとばっちりを受けたものである。だが玲が指摘するように、確かにかすみの場合調子に乗って油断するととんでもない目に遭って来たのは事実である。
さて、神室霊華としては、恐らく地球上で最強の霊能力者2人を助っ人に出来たことから安心したようで、
「では、先方に連絡しておきますね」
と言ってその場で返信をした。ところでどんな勝負をしてくるのか、かすみとしては楽しみ以外の何物でもないのだが、
「ただなー、誰がどうやって判定すんねやろなー」
と言うように、誰がジャッジするのか?と言う問題が付き纏う。何となくだが、他の国の霊能力者を連れてきて判定させそうな気がするのだが、そいつとビショップ・モルヴェインの繋がりは無いんか?と言うことは分からない。まあどうであれ、ちゃんと霊が見える人物を連れてきてくれれば問題ない訳だが。そしてかすみと言うかM Mからすると、何時もの召喚術で簡単に決着がつくと考えている訳で、後は何時どのような勝負をするのかに関する連絡を待つのみであった。
神室霊華の元に返信が届いたのは翌日の未明であった。朝になってベッドから起き出した神室霊華は、サイドテーブルに置いてあるスマホを手に取りメールをチェックした。すると、ビショップ・モルヴェインからの返信をそこに確認した。早速神室霊華は内容を目にするのだが、「えっ?連休中ですか?」と誰にともなく問い掛けていた。メールには4月末に来日し、そこで3つの対決を行うことが記されていた。最初は制限時間内での除霊数を競う対決、2つ目は除霊の早さを競う対決、そして最後は......
“えっ?ま、まさかあそこで対決ですか!?”
と神室霊華は目を白黒させていたが、かなり危ないことになりそうな予感が今からしてきた。さて、直ぐに返信すべきかどうか迷ってしまい、結局何時ものあの人達に相談した方が無難だと思い直し、返事は保留のまま今日の仕事の準備に取り掛かった。そして夕方になって、神室霊華は何時もの様に美土路神社に向かった。