召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M vs. 霊能力者 Part2 (第2幕)
「しっかし、なんやねん、連中の格好は?
全身真っ赤っかやんか!
どっかの芸人のコスプレか?」
と物部かすみはいきなりボヤキ出した。ただしかすみが指摘した真っ赤な格好とは、真っ赤なスーツではなく、真っ赤なキャソックであるのだが。ただし一人だけ正面に金色のが施されたキャソックを着ており、恐らくその人物がこの霊能力者対決を企画したビショップ・モルヴェインその人であろう。歳の頃は神室霊華と同年齢の青い瞳に金色の髪という、西洋人形のような顔立ちの白人女性である。そしてM Mの何時もの3人は、彼らの出で立ちに特に関心がある訳ではなく、最神玲に至っては
「まあ、かすみ、
僕らも似たようなもんだけどね、ははは」
とかすみのボヤキに対し苦笑いを浮かべたりしている。ちなみにM Mは何時もの冬用制服の黒一色である。そしてこの光景を見ていた神室霊華はと言うと、これではまるで
“ルーレットのとの関係みたいですね”
と心の中で呟いていた。そんなルーレット対決が今、東京都心から離れた北関東の山中の廃村で行われようとしていた。果たして赤が勝つのか、それとも黒が勝つのか?時刻は午後6時。時間と場所については向こうからの指定があったので、それに従ってM Mの3人はやって来た。
「でも、向こうは10人で、こちらは3人ですか」
ただしこちらは少数精鋭ですけどね、と神室霊華は穏やかな表情でそう呟いた。ただし、
「何やねんな、あの金魚の糞みたいな連中は。
ごっついカメラ持って
ライト付けてるっちゅうことは、
テレビか何かなんか?」
とかすみが指摘するが、ビショップ・モルヴェインの一行になぜか霊能力者と同数の10名近い撮影隊と呼ばれるスタッフも同行しているのだ。まあ何となくだが、自分たちの活躍を記録してそれを公開することで顧客の獲得を目論んでいるのだろうと想像出来たりする。ちなみに、ビショップ・モルヴェインの一行は、大型の自家用機をチャーターしてやってきたらしく、その財力も半端ないと思われる。そしてそれ位に今回の対決には力を入れているのが伺えるのだ。もし日本の著名な霊能力者であり世界からも注目を集めている神室霊華を打ち負かすことが出来れば、日本の顧客を獲得できるだけでなく、世界にその名を轟かせると目論んでいるのだろう。
「ん?あっこにいるのが審判か?」
とかすみが指をさす所に居るのは、黒いキャソックに身を包んだ2人の男性である。1人は東アジア系でもう1人はアフリカ系である。彼らもどこかの国の霊能力者なのだろうか?かすみとしては、公平に判定してくれれば問題ないと思っている。そんなことを考えている時、ビショップ・モルヴェインと思われる人物がM Mの3人の所に近づいてきた。そして早速自己紹介を始めた。ちなみに、当然先方は英語であり、神室霊華は問題なく会話ができるが、かすみはかなり怪しいし、玲に至っては絶望的である。そのため玲とかすみは、最近流行の同時通訳の出来る翻訳イヤホンを使って話を聞くことにした。以下は、2人の翻訳イヤホンに聞こえて来た会話である。
「レイカさん、そちらの助っ人は
お2人だけですか?」
「はい、こちらの2人は
私の先生に当られる方々ですので、
一番安心できます。
ところでモルヴェインさん、
最初の試合はここで行うのですね?」
「はい、その通りです。
では早速始めますが宜しいですか?」
神室霊華は頷いてOKを出した。するとビショップ・モルヴェインは、審判役の2人をこちらに招き寄せて、M Mの3人に紹介した。かすみが驚いたのは、2人ともローマカトリック教会の本物の司祭と言うことであり、しかも俗に言うエクソシストと呼ばれる悪魔祓い師として現役で活躍しているというのだ。そして霊が見える人達でもある。だがそうなると、かすみは
「そちらで選んだ人が公平に判定できるんか?
何か信用でけんへんねんけどな?」
と早速クレームを伝えた。ちなみに、ビショップ・モルヴェインのスタッフには日本語の通訳が含まれており、そのスタッフから早速かすみのクレームが伝えられた。すると、判定を行う司祭達は口を揃えて
「神の名に誓って、
どちらかに肩入れすることはありません!」
と宣言した。流石のかすみも神を持ち出されてはどうにもできず、「ちっ、しゃあないな」と何時もの様に舌打ちしながらの捨て台詞を吐くしかなかった。
さていよいよかすみが待ちに待った勝負が始まるのだが、その前に先ずはどちらが先に行うかを決める必要がある。実はこの勝負、先攻後攻が極めて重要である。と言うのは、先に除霊を行う方が断然有利であり、後攻側は残りを除霊するだけになってしまうからである。そうなると先攻と後攻をどのように決めるかだが、かすみは当然ジャンケンを想定していたようだ。そのため、腕組みをしてああでもないとか、こうでもないとか考えだした。だが、
「師匠、玲さん、コイントスで決めますが
宜しいですか?」
と神室霊華から伝えられた時、かすはこけそうになった。だが考えてみると明らかだが、ジャンケンは日本的であり、例えばサッカーの試合では当然コイントスでキックオフの順番を決めたりしている。仕方ないそれに従うわ、と渋々ながら頷くかすみに対し、神室霊華は「では師匠、表か裏か決めて頂けますか?」とかすみに尋ねてきたので、かすみは適当に「ほな、表にしよか」と答えた。そして結果は............裏となったため、M Mは後攻となってしまった。その瞬間かすみは「もう、負けてしまったやないか!!」と頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。表か裏の1/2の確率であり勝つも負けるも五分五分なのだが、かすみの負けたという言葉は実はコイントスの結果ではない。彼らが居る廃村には確かに複数の霊体が確認されるのだが、どれも浮遊霊か地縛霊であり悪霊や怨霊の類はないため、一般的な霊能力者であれば制限時間1時間のうちに全て除霊することは可能である。そしてかすみの予想通り、30分としないうちに、その廃村内の霊体は全て除霊されてしまい、この時点でM Mの不戦敗が確定したのだった。
さて一人悔しい思いで肩を落としているかすみを他所に、玲はと言うと、実はビショップ・モルヴェイン達の行っている除霊法に興味津々であったのだ。彼らの除霊スタイルは、エクソシストの流れを汲んでいるのだろうか、聖水らしき液体を複数種類用いながら念仏なのか呪文なのか祈りなのか、そんな言葉を唱えて除霊して行った。しかも霊体1体に対し2人または3人が霊体の周りを囲んで同時に行うため、除霊する時間は10分以内とかなり短くなっていた。玲の隣でビショップ・モルヴェイン達の行っている除霊を目にしていた神室霊華も、やはりこの除霊法に興味があったようで、玲から
「神室さん、彼らの除霊法について
どう思われますか?」
と感想を聞かれた時、神室霊華は
「そうですね、先ず以前の私の場合、
除霊は1人で行いますから、
このようにグループで対応することは
ありませんでした。恐らく...」
エクソシストの流れを汲んでるのではないかと予想した。続けて
「それと、どう頑張っても
あそこまで短時間で除霊できるかと言われると、
無理ですと答えましたね」
と自分が抱く感想を玲に伝えた。ただし何やら気になる点もあるようで
「ただですね、彼らが用いているあれは
聖水でしょうか、やはりあれは気になりますね」
神室霊華の持つ知識を動員しても、あれだけの聖水を使い分けて除霊するのは知らないようで、あそこに彼ら独自のノウハウがあると見ていた。一方の玲はと言うと、実は彼らが使っている聖水の1つが、霊体の周りに結界を張っていることを目にしていた。それによって身動きを封じており、その後で別の聖水で除霊をしていたのだ。そのことを神室霊華に伝えると、神室霊華は目を見開いて驚いた表情のまま玲の方を振り向いて、玲に対し本当に結界の様子が見えるのかを尋ねた。玲は頷くが、どう頑張って目を凝らしても神室霊華の目にはその状況が見えてこない。そしてその頃になると漸くかすみが(精神的な落ち込みから)復帰してきたが、玲から聞いた事をかすみに伝え、同じようにそこに何か見えるか尋ねた。すると、
「うーん、何やよう分からんが、
ぼんやりしてて何かありそうな、
なさそうなっちゅう感じやな」
「そんな感じなんか、玲?」とかすみは玲に確認するが、玲は「僕の目にははっきり見えてるよ」との答えが返って来た。かすみからすると、玲に見えて自分に見えないものがある時点で腹立たしいのだが、こと召喚術に関することは玲に敵う訳がないのを認めており、やはり召喚術師の能力の差だろうと考えていた。2人のやり取りを耳にしていた神室霊華は
“師匠も少しわかる程度となると、
私が全く分からないのは仕方ないですね”
と今の能力の限界を悟って諦めていたのだ。