召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M vs. 霊能力者 Part2 (第4幕)
日米の著名な霊能力者による霊能力対決の最終戦は、大型連休中の東京都心で行われる。何時もであれば渋滞があって思うような時間に到着するのが難しいのだが、連休中の都心は比較的スムーズな移動が出来るようで、神室霊華の運転する車は予定よりも少し早い時間に大手町にやって来た。
ところで目的地である将門塚は周囲を高層ビルに囲まれた中にポツンと存在している。まさかこんな所に日本最恐の怨霊が眠っているなどと、誰も想像できないだろう。そして大型連休には地方から東京に観光でやって来る人達が多くいるのだが、何時もであればわざわざここに足を運ぶ人は皆無である。だがこの日はどうやら様子が違っていた。M Mの3人が将門塚に到着した時、辺りには大勢の人が集まっていた。
「何やねんな、この人だかりは!!」
と早速かすみのボヤキが始まった。集まっていた人に話を聞くと、どうやらここでアメリカの有名な霊能力者による平将門の除霊が行われるという情報がSNSで拡散されているようで、興味本位でやって来たというのだ。すると、かすみは
「全く、あいつら、これを自分達の
商売ネタにしようっちゅう魂胆やな!
しかも日本の神さんをなめてやがる!!」
とボヤキを通り越して怒りへと変わって行った。そしてかすみのこの怒りの源は、M Mの3人がここに来る前の車中にて話し合った結果にも関係していた。その結果とは、どうやらビショップ・モルヴェインらの能力と言うか術では怨霊の除霊どころか、それを鎮めることすらできないだろうと見ていた。恐らく十中八九、怨霊を怒らせるだけになり、その後はどう見ても悲惨な状況しか目に浮かばない。それ故、かすみの「日本の神さんをなめてやがる」に繋がるのだった。
ところでビショップ・モルヴェインらの除霊法について、玲はここに来る途中の車中でこんなことを口にした。
「あれは、霊を霊界に送り届ける方の除霊ではなく、
霊そのものを消去する除霊だと思うんだ」
この玲の意見に対し、神室霊華も何となく同じような印象を持ったようだ。そして玲の説明は続き、
「僕は良く知らないんだけど、
エクソシストって悪魔祓いなんだろ?
悪魔と言う存在が何なのかは分からないけど、
霊体ではない何かだろうし、
それを霊界に送り届けることは
彼らの仕事には入ってないと思うんだよね」
つまり、絶対的な善である「神」に対し、絶対的な悪である「悪魔」がキリスト教の中には存在し、ただし神を本来の意味での除霊をすることは当然出来ないはずだから、その対となる悪魔を同じように除霊することも本来は出来ないはずである。ちなみにかすみは、神が霊界の支配者であることを知っているので、玲の説明には十分に納得していた。そして本来の意味での除霊ができないために、除霊とは言うものの、実際はその存在を消去しているのではないかと見ていた。そして、このことを知ってか知らずか、ビショップ・モルヴェインらの一行は、怨霊たる平将門を除霊と言う名の下で消去しようとしているのではないかと考えたのだ。だが悪魔と怨霊は決定的に異なる訳で、それを同次元で考えている彼らに、果たして怨霊の除霊が出来るのだろうか?
「なあ、玲、もしそんなことして
平将門を怒らせてしまい、
その結果悲惨な状況になったら、
うちら太刀打ちできるんかな?」
と助手席に座るかすみは後部座席に座る玲に振り向きつつ、かなり不安な表情になってそう尋ねた。
「あー、それは大丈夫だと思うよ。
どんなに怨念が強くても霊体は霊体だからね。
何時もの様に降霊転移門を設置すれば
済むはずなんだけど...」
と最後は何やらお茶を濁すように口籠ってしまった。かすみは玲が言わんとしていたことが何となく分かった気がした。そして玲の後を継ぐように
「果たして除霊して良いのかどうかやろ?」
とかすみは口にした。玲は何も言わずただ頷いた。例え怨霊であっても今は信仰の対象となっている訳で、それを怨霊だからと言ってに除霊して良いかどうかは分からないし、これは全く別の問題に直面する。
さて、M Mの3人がこの人だかりのせいで先に進めずにいた時、突然彼らの目の前に道が開けた。と言うか、ビショップ・モルヴェインの一行にいる大柄の男性霊能力者が強引に道を開けさせただけなのだが。そしてM Mの前にビショップ・モルヴェインその人が現れた。早速神室霊華と握手を交わし、この対決のルール説明がされた。尤もルールも何もなく、ただ除霊すればその時点で終了となるのだが。そしてどちらが先に行うかを決めようとした時、神室霊華は自ら後攻を選んだ。実はこの案はかすみからもたらされていた。と言うのは
「あいつらに先にやらせて、
自分達の能力が通用しないことを分からせんとな!
そうせんと、これから何度も仕掛けてきよるわ」
とかすみが口にしたように、とにかく一度痛い目に遭わないと、こういう連中は何度も同じような事を仕掛けてくるからここでガツンと分からせる必要があるというのだ。
さて、神室霊華からの思いもよらぬ後攻宣言がされたことに対し、ビショップ・モルヴェインは心の中で これでこの勝負はもらったな と勝利を確信したものの、顔には驚きの表情を見せていた。そして
「我々がここの怨霊を除霊した時点で
あなた方の負けになりますが、
それでも良いのですか?」
と自信たっぷりに神室霊華に問い掛けて来た。だが、神室霊華の決意は変わらず、「それでも構いませんよ」とこちらもにこやかに微笑みながら答えた。ビショップ・モルヴェインは神室霊華の微笑みの理由が分かっていないが、もしかしてこの勝負を捨てたのか?と自分の都合のいい方向に思考を向けていた。そしてこちらも負けじとにこやかに微笑みながら
「では先に始めますね」
と言って対決が開始された。
早速ビショップ・モルヴェインの合図で除霊の準備が始まるが、その様子を見ていたかすみの後方の人だかりから「かすみ、かすみ!」とかすみを呼ぶ声が聞こえて来た。
“ん?うちのことを誰か呼んでるのか?
でも東京に知り合はいないはずやねんけど...”
と考えながら後ろを振り向いた時、目線の先に懐かしい親友の顔が見え隠れしていた。
「あっ、明日香やんか!
自分ここで何してんねんな?」
とかすみは高校時代からの親友である山本明日香に向かって声を掛けた。明日香は人込みをかき分けて何とかかすみの傍にやって来た。そして、
「かすみの方こそ、ここで何してんねんな?
あっ! 神室霊華様の助手っちゅうことか?」
とまあ当たらずとも遠からずなことを言い当てたので、かすみは「まあ、そう言うこっちゃな」と言葉を返した。それよりも、
「明日香の方こそ何でここにおんねんな?
帰省したんとちゃうん?
あっ、美鈴も一緒なんか?」
とかすみが明日香に尋ねると、どうやら昨日まで仕事をしていたというのだ。
「ホンマ、あっこはな、
マジでブラック企業やで!」
と明日香はかすみに向かって愚痴を零すのだが、どうやら連休明けの国会のために必要な資料の準備をしていたらしいのだ。一方の谷田美鈴はと言うと、現在海外旅行中と言うのだ。「羨ましい限りやわ」と明日香のボヤキが加わるが、その明日香も本来であれば今日から帰省する予定だったのだが、
「京香からな、何やここで
霊能力者対決があるらしく、
神室霊華様がその対戦者っちゅうことを
言ってきてな」
もしかしてかすみがくっ付いてんとちゃうか?とLINEしてきたと言うのだ。”全く京香の奴、いらんことしよるな”とかすみは心の中で毒づくが、それよりも明日香に対し、ここは危ないから離れた方がいいと忠告した。だが、
「なぁなぁ、かすみ~。
そこにおるんがかすみの彼氏か?」
と明日香はニヤニヤしながらかすみに問い掛けたが、勿論その指差す先に居るのは玲である。
「ちゃうわ、アホ!
あいつはうちとこの従業員であり、相棒や。
そこんとこ、間違わんといてな」
と明日香にしっかりと釘を刺した。その時神室霊華がかすみの方に振り向いて「師匠、そろそろ始まりますよ」と伝えて来たとき、明日香が「うわー、マジ、ホンマもんの神室霊華様やんか!!」とテンションが上がり舞い上がってしまった。そこで仕方なく、神室霊華に明日香を紹介し、握手してもらうことで明日香に満足してもらった。そして、
「ホンマにな、明日香、
マジ危ないから離れてた方が無難やで」
と言いつつ、かすみはこれから始まろうとしているビショップ・モルヴェインらの儀式を見守った。