召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
美少女降霊術師の心霊事件簿11: 死の宣告 (第4幕)
それは3月下旬の3連休のことである。丁度物部かすみが弟子のラハニ・エランの結婚式に参加していた時である。その連休初日、はここから1時間程の所にある地元の山に趣味の写真撮影に向かっていた。そして何時もであれば夕飯までには帰って来るのだが、その日は帰りが遅く、帰宅したのは深夜に近い時間だったという。余りに心配していたので祥子は彼氏に何があったのか尋ねると「ちょっと道に迷っちゃったんだ。ははは」と少し元気がないものの、何時もの明るさで答えたので、そう言うことだと受け止めた。ところが、
「た、確かに、それから体調がよくないからと、
か、会社を休んだりしてたんだ」
と言うように、体調不良と言うことで有休を使って休みを取っていたという。「もししんどかったら、病院に行く?」と祥子が尋ねても、「いや、そこまで大ごとにはならないから、大丈夫だ」と言うことでそのまま様子を見ていたという。そして4月になったところで、元気になったようで会社に行くようになったのだが、
「そう言えば、普段は私が先に帰宅して
夕飯の準備をするんだけど、
4月以降は何時も彼の方が先に帰ってたんだ...」
そしてやはり体調がよくないからと言うことでそのまま横になる日が多かったというのだ。
「まあそれでも、無理してたのか分からないけど、
毎日会社に行くことはしていたんだけど...」
結局同じ状況が続いたというのだ。そして大型連休になったとき、
「本当は家でゆっくりしていたら、
と言ったんだけど」
少し楽になったからと言うことで、一緒にどこかに観光に行かないか?と誘われたという。そこで近場で連休中は意外と空いている東京都内の観光に向かったのだった。
「そして帰りに、あの事があったんで、
てっきり彼のことかと思ったんだ」
と祥子が言うように、確かに状況からすると、彼の方の寿命が尽きかけている感じを受けたりしたのだが。ところが実際はそうではなかったようで、
「祥子、その占い師が伝えたのは、
恐らく祥子の方だと思うんよ」
とかすみは祥子に伝え、ついでにその占い師が実はあそこで店を出していた事実がないことも伝えた。
「えっ?うそ! だってそこにあの人いたし、
私その後でお守り貰ったし...」
と言うのだが、かすみは一つの仮説を披露した。
「多分な、その人は祥子の守護霊か
何かなんとちゃうか?」
と言うのだ。流石の祥子もかすみの言葉を聞いて目を丸くしながら沈黙するが、そのうち何やら思い当たることがあるのか、ポツリとかすみに次のような事を語った。
「そう言えば...あの占い師さんの目、
何だろう...初めて会ったのに
親しみを感じたんだ」
「だからお守りを私に握らせたのかな?」とかすみに問い掛けるが、かすみはうんと頷いて肯定するだけだった。
さて、どうやら祥子の方が死の宣告を受けていたのではと言うことになりそうだが、では彼女達の目の前にいるこの霊体は一体どういうことなのだろうか?
「祥子、よく考えるとな、
3月の連休から数えて、
丁度今日か明日が49日になるんやわ」
「えっ?か、かすみ、それどういう事?」
と言うことでかすみは、うろ覚えだがと断りつつ、確か魂が成仏するかどうかに関係してたんちゃうか、と言うことをまず伝えた。そして念のため自分のスマホを取り出して検索した。すると、
「何かな、仏教でな、魂が極楽浄土へ
旅立つための最後の審判が行われる
最も重要な日とかやって」
だからその日に祥子と一緒に旅立とうとしたんかもしれへんな、とかすみはそう伝えた。祥子は何となく、彼の性格からしてそれがありそうだと思ったのか、体をぶるっと震わせた。それから、
「かすみ! そうすると、私は......
私はどうしたら良いの?」
となるのは自然な成り行きであろう。そこでかすみは、自分が思っていることをそのまま祥子に伝えた。
「多分な、彼が行ったその山で
恐らく遭難したんちゃうかと思うねん。
そこで先ずな、彼の遺体を
見つけるべきやと思うねんな」
それから手厚く弔って埋葬したらええんちゃうか、とかすみは祥子に伝えた。確かに目の前の彼が幽霊である以上、それ以外に考えられない訳で、かすみに対し
「分かった、かすみ。
でもどうやって見つければ良いの?」
となるが、残念ながらかすみにもその答えは持ち合わせていない。だが何となくだが、目の前のこれに案内させれば良いのではないかと思いついた。尤も今のままでは役に立たないため、一度お見送りすることになるのだが、
「祥子、あんな、目の前にいる
元彼氏の幽霊やねんけど、
一度成仏させよう思うねんけどええか?」
とかすみは祥子に確認の意味を込めてそう尋ねた。それから、彼の霊体を降霊させ、その霊体に何が起きたかを聞きながら、彼の遺体の場所を突き止められるのではないかと提案した。「かすみ、それ以外に方法はないんだね?」と念のためかすみに確認する祥子である。もしかして今のあの姿の彼を元に戻せないか、そんな一縷の望みを託していたのかもしれないが、かすみは感情を殺して一言「ないよ」とだけ答えた。その途端、祥子はわっと泣き崩れてしまった。結婚まで約束していた彼が、既にこの世にいないという現実をどうしても受け止められないのだった。かすみは祥子の隣にしゃがんで彼女の肩に手を回し、しっかりと彼女を抱きしめた。そして祥子の涙が枯れたのか漸く泣き止んでから、鼻声でかすみに「ありがとう」と囁いた。かすみは「ほな、ええな?」と祥子に確認すると、祥子もうんと頷いた。そこでかすみは、目の前の霊体を霊界に送り届けた。それから彼が愛用していた物を借りて早速降霊召喚を行った。すると
「さっきの霊体とは全然雰囲気ちゃうなー。
めっちゃ穏やかな表情をしてるわ」
とかすみはそう呟くが、残念ながら祥子にはその様子が見えない。そこでかすみは霊視グラスを鞄の中から取り出してそれを祥子に渡した。祥子は不思議そうに霊視グラスを見つめながらそれを掛けてかすみが指差すところを見た。すると、
「えっ、嘘。彼なの?」
と瞬きしながらかすみが召喚した霊体を見つめていた。かすみは早速その霊体に幾つか質問をした。その結果
「やっぱりなー、3月の連休で遭難したんやな」
どうやら足を踏み外して沢かどこかに転落してしまい、その時に命を落としたということだ。そして状況が分かったところで肝心の場所について尋ねるが、
「確かになー、山ん中やから、
特に目印がある訳ちゃうしなー」
とかすみがぼやくが、広い山中をあてどもなく探し続けるのは骨が折れる仕事である。だが、どこから出発してどこに向かっていたということは何とか聞き出せたので、その情報だけを頼りに探すしかないと見ている。あるいは
“いっそうのこと、山全体に
降霊召喚門を設置したらどやろう?”
とよからぬことを考えだすかすみである。もしそんなことしようものなら、他の遭難者の霊体や動物の霊体まで呼び出してしまい、収拾がつかなくなる危険性がある。”まあ、こういう場合はあいつに聞くに限るな”と、最後は最神玲に頼ろうとしているようだ。
さて、かすみは一旦降霊召喚門を解除し、その後のことを祥子と話し合った。一応かすみは、こちらで宿泊することを装って来ているので、明日にでも問題の山に向かって捜索することを提案した。祥子もそれでお願いしますと言うことで、明日の予定は確定した。それよりも今晩だが、
「お願い、かすみ。一人にしないで!」
と祥子が涙目になってかすみに訴えるので、かすみは「ったく、しゃあないなー」とボヤキながら、一応宿泊用の荷物を駅のロッカーに入れている風を装っているので、一旦それを取りに行くと言って部屋を出た。そして直ぐに自宅に転移して、今晩の着替えをキャリーケースに放り込んでから、事の顛末を玲に報告した。すると
「山全体に降霊召喚門を
設置するしかないかなー」
と腕組みしながら考えだした。”何や、玲もうちと同じこと考えてんのか!”と結局玲も同じことを考えていることを知り、かすみは心の中でニンマリしていた。そしてやはり玲も何かしらアイデアがある訳ではないことが分かり、かすみはそのまま祥子のマンションに向かった。