召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
美少女降霊術師の心霊事件簿11: 死の宣告 (最終幕)
翌日、物部かすみは立林祥子と2人で永嶋瑛斗が消息を絶った山にやって来た。新緑が眩しい季節だからだろうか、好天に恵まれたからだろうか、それとも企業によっては連休最終日となるため地元の観光地でのんびり過ごしたいのだろうか、その山は多くのハイカーで賑わっていた。そんな中で、全身黒ずくめのM Mの制服に身を包むかすみは、若干、いやかなり浮いているのだが、こればかりは仕方ないと今は諦めている。昨日転移した時に着替えを持って来ても良かったのだが、そうするとこのことを予期していたようで何だか後ろめたく感じたりする。それよりも、自分としては行楽ではなく仕事で来ているということを自覚するためにも、やはりこの制服で来て正解だと思うようにした。そして先ずは出発点から目的の山頂を目指すルートを調べるのだが、ほぼ一本道のため迷うことはなさそうである。そして目的の山頂まであと少しと言う所で足を踏み外して転落したというので、ルートの後半部分に絞って重点的に捜索すれば済みそうだというのは、かすみとしては救いであった。そして、祥子は
「恐らくね、かすみ、彼のことだから、
途中から道を外れて
写真を撮りに行ったりしてると思うよ」
だから登山道から外れた開けた場所とか人が入り易い場所を探す必要があるのではと指摘した。確かにカメラのファインダーを覗きながら歩いていたら、いたり転んで崖から落ちたりしかねないな、と懸念を抱いたりする。そして2人による捜索が始まった。
地図によると山頂まではおよそ4km程となっていた。平地であれば1時間くらいで歩ける距離だが、山道のためそんなに簡単にはいかない。そして日頃から運動不足のかすみは、途中で音を上げてしまった。
「くそーっ、この格好はやっぱ歩き難いやんかー」
確かにスニーカーではなくローファーでの山歩きのため、かすみの叫びには同情してしまう。それよりも、かすみからすると
“全く、転移出来たら楽やねんけどなー”
とあくまでも楽をしたいようなのだ。それでも文句を垂れながらかすみと祥子は何とか行程の半分ほどを進んできた。そして
「この辺から少しずつ
周りを調べた方が良さそうやな」
とかすみが祥子に伝えた。そこでかすみは進行方向左側を、反対の右側を祥子が担当して、何かの痕跡が残ってないかを調べながら進んで行った。だが結局そのまま頂上付近まで到達してしまい、一旦そこで休憩を取ることにした。
「少し、休んだら、はぁー、
帰りも同じように、はぁー、
見てくとしようか、はぁー」
とかすみはかなり息が上がりながらも何とか奮い立とうとしている。そして再び同じ方向を担当して下って行くのだった。
暫く進んだ時、祥子が「あれ?」と声を上げた。「どうしたん、祥子?」とかすみは祥子の方に振り返ると、祥子は登山道から離れて奥の方に進んで行った。
「おい、祥子、足元に気ぃつけろや!」
とかすみは注意をしつつ、自分も祥子の後を追うことにした。だが直ぐに祥子はその場で停止した。どうやら木の枝に何かがぶら下がっているのを目にしたようで、ゆっくりと近づいてその何かを手に取った。それは、
「こ、こ、この帽子、彼のだ!」
と祥子は突然叫び声を上げたかと思ったら、帽子をギュッと握り締めたままその場にってしまった。かすみは直ぐに近づいて祥子が握り締めているその帽子を眺めた。所謂山歩きの時に使うハットのようだ。そしてなぜこの帽子が木の枝にぶら下がっていたのかは分からないが、永嶋瑛斗が気づかずにその帽子を木の枝に引っ掛けたのか、あるいは誰かがそこに落とし物としておいたのか。そしてこの場所は、登りからすると丁度陰にになるため、登りの時のかすみには気づくことが無かったのだ。
さて帽子がここにあったとなると、この付近かもう少し奥に遺体がありそうだと思う訳で、かすみは慎重に進みだした。そして念のためにカラスのレイちゃんを数羽召喚し、一緒に探してもらうことにした。すると数分後に1羽のカラスがかすみの元に戻って来て、遺体が確かにあることを告げた。かすみは直ぐに、「祥子、こっちにありそうやで!」と大声で叫びつつ、自分は慎重にカラスの後について行った。すると下草に隠れて見え難いが、直ぐに崖になっている所が現れた。そしてその下を慎重に確認した時、下の地面に洋服とズボンだろうか、着ている時の形で落ちているのを目にした。やはりあの下草のせいで崖の存在を見誤ってしまい、ここから墜落したとみて間違いなさそうだ。ただ残念ながら、ここからはそこに遺体があるかどうかは直接目視で確認することが出来ないが、カラスのレイちゃんの話では傍に骨が散乱しているというのだ。恐らく野生の熊かイノシシにでも食われた可能性もありそうだ。
「祥子、こっち、こっち!」
とかすみは祥子を呼んで崖の下にある洋服とズボンを見てもらった。すると、
「か、か、彼の、
で、で、出掛けた時の、
ふ、ふ、服装よ!」
とかすみにしがみ付きながら声を震わせて祥子はそう訴えた。となると後は下に降りて確認するだけだが、残念ながらかすみはロープの類を持参していない。もっとも召喚すれば問題ないが、こういう場合はむしろ警察に連絡して彼らに確認してもらう方が後々厄介毎に巻き込まれないことを経験的に知っているので、かすみは祥子と相談して警察に連絡することにした。
かすみが警察に連絡してから1時間程して、登山道を登って来る警察官一行を目にしたかすみは、手を振って合図を送った。そして数分後に合流した警察官と刑事、そして鑑識の一行を転落現場に案内した。刑事と鑑識が同行しているということは、かすみの読みでは、恐らく殺人事件を踏まえての措置だろうと思う訳で、その読みは恐らく間違っていないだろう。そして警察官一行は近場のしっかりと根を張る広葉樹にロープを巻きつけ、直ぐに崖下にロープを伝って降りて行った。そして崖下での鑑識作業の間、かすみと祥子は警察からの事情聴取を受けることになった。彼女達が事件の当事者として当然考えられる訳で、かすみもその点は理解していた。一方の祥子はと言うと、なぜ自分が事情聴取されないといけないのか怪訝な表情を浮かべていたが、かすみから「少し辛抱しいや」と優しく声を掛けられたことで、少しだが安心して事情聴取に応じた。そして崖下で現場検証を行っていた刑事と鑑識が戻ってきた時、現場に残されていた遺留品の確認をお願いされた。そこでその遺留品を改めていた時、祥子が悲鳴を上げた。かすみはビックリして祥子の方に振り返りながら「祥子、どないしたんや?」と尋ねた。すると、
「こここ、これ、わわわ、私のスマホ!!」
とそこにあったスマホを指差しながらそう叫んだ。更に
「あー、ここ、この、ささ、財布も、
わわ、私の!!」
と財布を目にした途端、やはり叫び出した。祥子が無くしたというスマホと財布が、まさかここにあったとはかすみも驚くしかなかった。それから衣服と彼の愛用していた一眼レフカメラもそこにあったのを目にした途端、愛する彼がまさにこの場で命を絶っていたという事実を突きつけられたせいなのか、祥子は気を失ってその場にれてしまった。
死因の詳細は検視を待たないと分からないが、鑑識の報告では滑落死で間違いないということだ。後は足を踏み外しての事故なのか、それとも誰かに背後から突き落とされたのか、その点はこの現場付近を調査しないと分からない。だがかすみは、”そんなん、本人に聞けば一発やんか!”であるが、まあそんなことを信じる警察はかすみの住む地元の警察位だろう。そして祥子が意識を失ってしまったため、警察官が彼女を背負って下山することになった。かすみも祥子のことが心配なので一緒に下山することにした。その後警察からの要請で出動していた救急車と麓で合流し、祥子は救急車に載せられて近くの病院に向かった。かすみはその病院の場所を聞いて後から合流することにした。実はかすみとしてはもうこれ以上何かする必要はないのだが、祥子一人で後の事をさせるのも気の毒だと思うため、明日まではここで祥子のことを面倒見ようと考えている。とりあえず、最寄り駅までのバスが到着したので、かすみはそれに乗って駅に向かうことにした。バスに揺られながら、かすみはなぜあの場所に祥子の持ち物、財布とスマホ、が落ちていたのかその理由を考えていた。
“やっぱあれかなー、自分の大事な物を
傍に置いておきたかったんやろか?
それにしても自分勝手すぎへんか!”
と思ったりする。尤も本人の霊体を呼び出して聞けば真相は明らかになるのだが、そこまでする必要があるかどうか、かすみには分からない。もし祥子が知りたいと言い出せば手伝うが、そうでなければそのままにしておこうと思っている。そしてバスが駅に到着した所で、かすみはそのまま駅に向かい、一度トイレに入った。そしてそこから転移して自宅ではなく別荘に向かった。”疲れてしんどい体を癒すのは、あっこしかないなー”と目を輝かせながら、離れに常備している着替えを持って露天風呂に直行するのだった。