召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M、未解決事件に迫る (第3幕)
週末土曜日の午後1時、最神玲と物部かすみ、そして神室霊華の3人は、東京警視庁にやって来た。早速受付で特捜対策室の千歳警部補を呼び出してもらい、待つこと5分、受付に紺のスーツに白のブラウスと言う、一見就活生かと見紛うような装いの女性が姿を現した。確かに顔や髪型の雰囲気から就活中ですと言っても十分に通用しそうである。そして早速M Mの3人の所にやって来たのだが、実は玲とは初対面であったのでその場で自己紹介をすることになった。そしてやはり、
「神室霊華様もご一緒されていたとは
知りませんでした」
と神室霊華を見て驚きを隠せないようであった。こういう時、かすみは何時もの「玲が女装しているんとちゃいますよ~」と言いそうになるが、玲本人が隣にいるのでこの手は使えない。そのため心の中では少し悔しい思いをしていたのだった。それからM Mの3人は、千歳の案内である会議室に案内された。そして早速
「この会議室は貸し切りでして、
テーブルの上に置かれているのは、
捜査資料と証拠品となります」
とM Mの3人は千歳警部補から説明を受けた。会議室のテーブルの上には10カ所程の資料の山があった。”一体どんだけ未解決があんねや?”とはかすみの心の中の呟きだが、かすみでなくても皆そう思ってしまうだろう。だが実はこれらは全未解決事件のほんの一握りでしかなく、更にここにあるのは全てが懸賞金が付く重要犯罪であるというのだ。勿論、全ての未解決事件に懸賞金が付く訳ではなく、中には強盗や詐欺に関する案件も含まれている。そしてやはり警察としては、一番注目浴びている重要犯罪の解決をまずは目指しているというのだ。そこで早速一つ目の案件の所にやって来て、M Mの3人は千歳警部補からの説明を受けた。
「この事件は10年前に港区で起きた
殺人事件の資料です。被害者は...」
そしてそこに幾つか証拠品が透明な袋の中に密封されているが、残念ながら犯人に関する遺留品は無いという。となると、何時もの降霊召喚と言うことになるので、かすみが早速行うことにした。すると何やら現れたので、玲は霊視グラスを千歳警部補に渡して確認してもらうことにした。最初はやはり幽霊を見てどうしても驚いてしまうのだが、かすみと神室霊華の行う降霊術を何度か見ているためか、直ぐに気を取り直してその霊体に話しを聞くことにした。その結果、その霊体は被害者本人であることが分かり、そして自分を殺害したのは......
「えっ、じ、自分の兄弟にやられたんか?」
とかすみが驚くように、被害者の兄弟、正確には弟が自分を殺したと訴えて来た。千歳警部補はこの件に関する捜査記録を何度が読み直しており、そこには兄弟間の怨恨に関する記述が無かったことを把握していた。そのため最初はこの霊体が嘘をついているのか、あるいは記憶が曖昧になっているのではないかと懸念し、そのことを玲に尋ねた。すると玲は、
「霊体はですね、嘘をつくことは出来ないんですよ。
なぜなら彼らは生前に記憶したことを
思い出すことしかできませんからね」
ただし、生前に嘘を吹き込まれた場合はそれを確認する手立てがないことは伝えておいた。
その後千歳警部補が被害者から具体的な殺害方法を聞き出すに従い、今では兄弟間の殺人と言う線を確信したのだった。念のためにボイスレコーダーに録音していた内容を再生して確認しながら聞き出した概要をノートパソコンに打ち込んで、どこかに送信した。更に、
「すいません、ちょっと捜査課に
この件を伝えに行きますので、
暫くこちらでお待ち頂けますか?」
と言いおいて、そのまま会議室を出て行った。M Mの3人は特にすることが無いため、手持ち無沙汰となってしまったが、かすみは早速別の山にある捜査資料を手に取ってパラパラ捲りながら中を見だした。
「師匠!!勝手に見てはダメですよ!」
と神室霊華はかすみに注意するのだが、かすみは「あー、かまへん、かまへん」と手を振って気にせず見続けている。そのうち「へぇー」とか「ほぉー、そうなんや」などと呟き出したのだが、丁度その時部屋の扉が開いたため、かすみは直ぐに机の上に資料を戻した。”うわー、やばい、やばい”と額にうっすらと汗を浮かべながら何とか平静を保った。そして扉の先に目を移した時、そこに千歳警部補だけでなく、彼女の上司だろうか、がっしりした体格で、濃紺のスーツに身を包み、頭髪を短く刈り込んだ年配の男性が一緒に入って来た。そして早速M Mに挨拶をしたのだが、
「えっ、捜査第一課長って、あのドラマのなんか?」
とかすみは再びここでもボケをかますのだが、玲は何も言わずにかすみの頭を軽く突くだけにした。その人物は正真正銘、警視庁捜査第一課を取り仕切る警視正であった。するとかすみが驚いた表情になり
「えっ、嘘、ドラマは確か俳優のが
なんちゃら言う役名でやってたやんな。
ほいで現実はその内藤貴志さんなんやな。
あかん、脳がバグりそうや!」
とかすみは頭を抱えてってしまった。そんなかすみの失礼な態度に対し玲はかすみの代わりに内藤第一課長にお詫びした。尤も、先方は何やらニコニコしながら
「お嬢さんが頭抱えるの、分かりますわ。
誰でも最初そうなりますからなー」
とかすみと同じ関西弁でそう答えた。するとかすみは、東京で地元の関西弁を耳にしたからなのか、すっくと立ちあがって、
「えっ、おっちゃん、関西人か?」
と遂には捜査第一課長に向かって「おっちゃん」呼ばわりし出した。これには玲だけでなく、神室霊華が目を丸くしてしまい、「し、師匠、それは失礼ではないでしょうか?」とかすみをめた。だが、
「あー、かまへん、かまへん、
それよかお嬢ちゃん、どこの生まれなん?」
とかすみに尋ねてきたのでかすみは自分の地元を話した。すると、
「あー、ほな泉南やな、わしは北摂や」
と言うことで、何やら同郷人にしか分からない言葉で会話が始まった。だがこのままだと先に進まないので、神室霊華が
「皆さん、そろそろ本題に戻りませんか?」
と皆の顔を見ながらそう伝えた。するとかすみと内藤第一課長は何やら2人同時に頭を搔きながら「すいません」と謝罪して来た。これには神室霊華だけでなく、上司の後ろに控えていた千歳警部補も呆気に取られながら、つい「プスッ」と含み笑いを漏らしてしまった。お陰で場の空気は和んだ感じになるのだが、確かにこのままでは話が進まない。それよりも、千歳警部補がなぜ上司を連れて来たのかだが、
「実は、どうしても皆様方がされる降霊術を
見たいと仰いまして...」
と言うことのようだ。そしてまずは昨年都内で起きた中本蓮司の件を始めとする変死事件に関する捜査協力への感謝をM Mの3人に伝え、改めて今回の未解決事件に関する捜査協力への感謝も口にした。そして早速次のケースの降霊術を行うことになった。