召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M、未解決事件に迫る (第2幕)
さて、話は元に戻るが、物部かすみが懸念している点、それはM Mの除霊と降霊術の費用が、4月から一律20万円に値上がりしたことであり、もし沢山の未解決事件があると、果たしてそれだけの料金を支払えるのか?と言うことにあった。そんな時に神室霊華が
「そう言えば、未解決事件の場合、
懸賞金が出ますよね?」
と2つ目の紅白天を天つゆにつけながらそう口にした。すると
「そや! それがあるな、確かに。うんうん」
とかすみは何やら頷きながら考えだした。未解決事件の場合、捜査特別報奨金制度が設けられており、犯人逮捕に直結する情報提供者には百万円から三百万円、最高一千万円の報奨金が支払われる。もしM Mの降霊術で犯人逮捕が可能となったら、当然彼らに対し報奨金が支払われるということになる。
「それなら、多分費用的な問題は
クリアされそうだね。
尤も降霊術も万能ではないからなー」
と最神玲は一つの懸念点を指摘するが、かすみも神室霊華もその点は理解していた。その懸念点とは、例えば殺害された人物が無事召喚されて犯人を言い当てれば何も問題はない。ところが、その人物が召喚されないこともあり得る訳で、そうなるとその先に進むことは出来ない。ただし、
「でもね、犯人が残した遺留品、
特に血液があれば多分大丈夫なんだけどね」
と玲が口にするが、かすみは血液と聞いた時点で、「あっ、あれやな! あのプルプルするやっちゃな!」とニコニコしながら答えるが、神室霊華は一体何を言っているのかが分かっていない。そこでかすみが人の血液を使うと、その人物を召喚出来ることを説明した。
「ただな、召喚される時、
その人がなぜか知らんが
プルプルと震えるねん!」
と自らプルプルと揺れながら神室霊華に説明した。神室霊華は何時ものかすみの冗談かと思って聞いていたが、玲が
「かすみも一度あのプルプルを
体験したら分かるよ」
と真顔になってかすみに向かって伝えた時、神室霊華はかすみの言っていることが本当のことなのだと理解した。
「ほな、玲、後でやってーや!」
とかすみは何やら面白そうなアトラクションを見つけた時の様に、目を輝かせながら玲に訴えた。
さて、楽しい夕食が終わったら、次はかすみが待ちに待ったかどうか分からないが、かすみのプルプルする時間がやって来た。そこでまず玲は自室に脱脂綿を取りに行った。そして戻って来て直ぐにかすみの指に針で穴を開けて脱脂綿にかすみの血液を含ませた。その後3人でかすみの部屋に向かい、かすみをベッドに横たえて準備が完了となる。玲は念のためにその場で降霊転移門を設置し、そこにかすみの血液を含ませた脱脂綿を置いた。すると、
「う、う、うわわわわわ、
れ、れ、玲、う、う、うち、
ふ、ふ、震えてる!」
とプルプル震えながら叫び出した。その時玲はここぞとばかりに、かすみの机の上に置いてあった写真盾を手に取り、かすみの体の上に置いた。すると写真盾が小刻みに振動しながら動き出すのだが、そのコミカルな挙動を見ていた神室霊華は、つい「プスッ」と含み笑いを漏らしてしまった。更に玲は、その机の上に置かれていたノートやペンをかすみの上に並べだした。
「こ、こ、こらー、れ、れ、玲、
う、う、うちで、あ、あ、遊ぶなー」
とかすみは抗議するが、これは何時も弄られている玲からの仕返しであった。
「かすみ、プルプルした状態が分かっただろ?」
と玲はプルプル震えるかすみを上から覗き込みながらそう口にした。玲としてはそれで満足したので、一度解除することにした。するとかすみが
「もー、玲、何すんねんやー」
と言ってベッドから起き上がるや手にマキザッパを召喚し、早速玲に一シバキ加えた。
「かすみが何時もしてくることを
そのまましただけだよ」
と玲は抗議するが、
「うちはええねん。お前がするのが
腹立つっちゅうことやー」
と再び吠えたかすみは玲をシバキにかかろうとするが、玲も簡単にやられはしない。直ぐに再び降霊転移門を設置した。するとかすみはマキザッパを手にしながら再びプルプルと震え出した。
「も、も、もう、わ、わ、分かった。
れ、れ、玲、か、か、堪忍して!」
と謝って来たので、玲は解除した。
さて、2人のコントを眺めていた神室霊華は、これは単にプルプルするだけなのかと勘違いしそうになるが、実際はこれで召喚出来ることを思い出し、そのことを玲に尋ねた。
「じゃあ、僕の部屋で召喚してみましょうか」
と言うことで、玲と神室霊華はそのまま玲の部屋に向かった。そして玲の部屋の真ん中で降霊転移門を設置し、そこにかすみの血液を含んだ脱脂綿を置いてから「召喚」と口にした。すると、
「じゃじゃーん、かすみ様の登場やでー!」
とかすみがマジックショーの演者の如く両手を広げながら突然現れた。そんなかすみのボケを無視しつつ、玲が
「まあ、こんな感じでかすみがここに現れる、
と言うことなんですよ」
と言いながら、これは一種の契約召喚であることを神室霊華に説明した。神室霊華も契約召喚の何たるかは理解していたものの、実際にやったことはないため、これが契約召喚なのかと感心しつつ、だがある点で少し戸惑うというか混乱していた。それは、
「これって、転移とは何が違うんでしょうか?」
と言うことである。見方によっては相手を強制的に転移させることと変わらないように見えるのだが、
「契約召喚の場合、一般には
契約した相手を服従させるとか、
あるいは対等な契約を結んで
仕事をしてもらうとかありますから、
その点では転移とは役割が違うんですよ」
と先ずは基本的な違いを説明した。更に
「勿論、相手を強制的に
転移させる場合などは、
今のようなことと
見かけ上変わらないんですが...」
と一拍おいてから、
「転移は一方向だけ、つまり行きだけで
完結するのに対して、
契約召喚は行って戻る、
つまり往復が発生するんですよ」
と転移と契約召喚との決定的な違いを分かり易く説明した。そして
「今回のかすみを使った契約召喚は、
霊界を経由した特殊なもののようで、
そのため違う空間からも
召喚可能なんですよ」
と神室霊華が予想もしない驚くべきことを玲は口にした。かすみもうんうんと頷きながら玲の言葉を肯定していた。その時神室霊華は以前体験したあの事を踏まえて
「えっ?もしそんなことが可能でしたら、
うっかり異次元と言うか異空間に
迷い込んでも元に戻ってこれる
ということでしょうか?」
と目を丸くしながら玲にその質問を伝えた。だが玲の答えはと言うと、神室霊華が予想した答えとは異なっており、
「まず、この契約では
その人の血液が必要なんですよ。
それが無いと召喚出来ません」
と先ずは前提条件を説明し、更に
「それとですね契約召喚の場合、
先程も言いましたように
契約召喚は行って戻るということになります。
つまり契約を解除すると
契約していた対象は元の所に戻るんですね」
と言いながらかすみの契約召喚を解除した。すると突然かすみがその場から消えてしまった。そしてかすみは自分の部屋から玲の部屋にやって来たのだが、この事実を目にした神室霊華は、
「それでは結局この方法は
異空間からの脱出には
使えないのですね」
とガックリと肩を落としながらそう呟いた。玲は申し訳なさそうに「はい、残念ながらそうなります」としか答えられない。
さて、犯人の血液が残されている場合、降霊転移門による契約召喚でその犯人を呼び出すことが可能になることは分かったのだが、その後どうするのか?と言う疑問が出て来る。
「なあ、玲、今のうちみたいに
その犯人が呼び出されたとしてやな、
そのまま犯人逮捕とはいかんやろ?」
「うん、そうだね。
召喚解除したら元に戻っちゃうしね」
「ほいで、自分が疑われていると知った途端
逃げ出すやろなー」
「ただ、また召喚すれば呼び出せるから
それは大丈夫なんだけど、それよりも」
と言ってその後の手順を玲は2人に伝えた。
「まあ、そやな。その場で魂分離して
話しを聞く方が後できちっと逮捕できるしな」
「ただ、その時の自供は残念ながら
証拠にはならないんですよね。
しかも当人が何やら自白させられたと思ったら、
後の裁判で厄介なことになりませんかね」
「ええ、なので、召喚後直ちに
魂を分離する必要があると思いますよ」
と3人はその後の細かな手順を詰めて行った。そしてM Mとして方針が固まったところで、玲は千歳警部補に承諾の連絡を入れ、早速週末に東京の警視庁に出向くことになったのだった。