召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
心霊サークル夏合宿: 日本海恐怖紀行 (第7幕)
行方不明の心霊サークル部員達を捜索する物部かすみを団長とする一行全員が恐る恐るポータルに入って異空間にやって来た時、早速かすみは元の世界に戻るための準備を整え始めた。神室霊華も一緒に手伝いながら準備が完了した所で、かすみはその場にいる全員に向かってあるお願いをした。それは
「申し訳ないけどな、ここからは
撮影NGでお願いしたいねんけど、
ええかな?」
であった。と言うのは、この模様が外に出た時、恐らくこれを真似しようとする連中が必ず出て来る訳で、
「まあ、自分達が使うだけやったら問題ないけど、
結局こうやって向こうに帰る門を作らない限り、
向こうの門は閉じへんのよ」
その結果はGホイホイではないが、どんどんこちらに人が送り込まれてしまう。そして向こうに帰るための門を開ける手段を持ち合わせて無ければ永久にこの世界に閉じ込められてしまう。
「そんな危険なを広める訳には行かへんから、
申し訳ないけど撮影は止めて欲しいねん」
このかすみのお願いに対し、全員かすみの指示に従うことにした。それを見て安心したかすみは、早速
「ほな、とりあえず向こうに帰る門を作るな!」
と言ってスマホを取り出し、玲から送られて来た資料を見ながら呪文を唱えだした。そして独鈷杵を使うとその場にポータルが完成となった。ただしそのままでは確認できないので、
「ここから撮影してもらっても良いですよ。
念のため暗視モードでそこにポータルが
あるか確認してもらえますか?」
と言うことで、早速呪いの動画のスタッフ達は暗視モードで確認を行った。そして先程と同じような空間の歪みを確認したことをかすみに伝えた。
「ほな、ここから元の世界に戻れるから、
もし何かあったら遠慮なく戻ってもらっても
かまへんですよ」
とかすみは一応忠告しておいた。
さて改めてこの異空間の様子を見ていたM Mを除くメンバーは、事前にかすみから元の世界がそのままコピーされているということを伝え聞いていたものの、やはり元の世界に戻ったのかと勘違いしそうになった。ただし、
「そう言えば、私が戻って来た時は、
もう外は暗かったはずですが、
ここは何やら明るいですね」
とディレクターの藤波智明が指摘するが、丁度黄昏時の明るさであった。そしてかすみと神室霊華は、あのポータルの世界独特の明るさであることを改めて認識したのだった。そして念のため窓の外を確認すると、
「やっぱなー、向こうはなーんも見えへんわ」
とかすみは口にした。そしてかすみの言葉を耳にした呪いの動画のスタッフ達と心霊サークル部長のは早速窓の傍にやって来た。そして外を眺めると
「せ、先輩、向こうって確か森でしたよね?」
と仁多牧がかすみに問い掛けると、かすみは
「元の世界はそやで。こっちの世界は、
あっこが境界線みたいやねんな」
と答え、更に境界線の外がどうなっているかは分からないことも付け加えた。すると
「じゃあ、先輩、僕らはここに
囚われたままと言うことになるんですかね?」
と更に尋ねると
「ここに設置した帰りのポータルが無いと、
一生出らへんくなるな!」
と真剣な表情で仁多牧の質問に答えた。
「さて、ほな、迷子の後輩達を
探しに行くとしましょか?」
とかすみの掛け声で、早速一行は行方不明となっている部員達を探すことにした。
かすみと神室霊華が先頭に立って行方不明者の捜索が始まった。本来であれば別れて探すべきであるが、かすみは歩きながら
「この空間が作られる時、
元の世界の物が全てコピーされるのは
さっき話したと思うねんけど......」
実は元の世界の霊体も一緒にコピーされることも伝えた。するとディレクターの京田美和子が
「物部さん、そうなると先程除霊した幽霊は、
この世界ではまだ残っていると
いうことなんでしょうか?」
と質問してきたが、そもそもこのポータルが出来たのはかすみと神室霊華が除霊する遥か昔である。そのことをかすみは指摘すると、箕山ケイが
「ではかすみさん、もしその時に別の人が
この施設内にいた場合、
その人もコピーされるんでしょうか?」
と尋ねた。だがその問いに対する答えをかすみは持ち合わせており、
「答えはノーやね。人に関しては
コピーされへんみたいや」
であった。恐らく生命体かそうでないかで区別されるようだとかすみは補足したが、勿論その根拠はどこにもない。あくまでもかすみの経験則に頼るのだが、実際に玲と神室霊華を交えて美土路神社の自宅でポータルを設置した時、そこにかすみを含めた誰も存在していなかったことから、恐らくこの指摘は間違っていないだろう。そしてやはりかすみが懸念した通り、元の世界の霊体はそのままここにもコピーされたようだ。だが敢えて除霊せずに、そのまま行方不明者を捜索をすることに専念した。
「おーい、、、、
居たら返事してー!!」
「内木、鳥飼、宮尾、助けに来たぞー!!」
とかすみと仁多牧は大声で呼びかけ続けた。一方神室霊華と呪いの動画スタッフは、辺りを警戒しながら進んで行く。そして4階にはいないことを確認した一行はそのまま3階に向かった。そして3階でも同じようにかすみと仁多牧の両名が後輩の名前を呼び続けた。
その時、「キャアー!!」と言う叫び声が廃墟内に響いた。かすみと仁多牧はお互いに頷き合って声のした方向に駆け出した。そして「おーい、内木、鳥飼、宮尾、どこだー」とかすみが呼びかけると、「せ、せ、せんぱーい!!」と泣き叫びながら応答する声が前方から聞こえて来た。そしてかすみと仁多牧が声のした場所に到着すると、ある病室から3人が駆け出してきた。その様子を見たかすみは一瞬、前回のことが頭をったが、直ぐに3人が行方不明になった後輩であり、しかも泣き叫びながら出て来たことから、即座に当人であることを判断した。そして3人はかすみと仁多牧に抱きつきながら泣き続けた。その後かすみと仁多牧に追いついた神室霊華と呪いの動画のスタッフ達も、無事行方不明となった学生達を確保したことに安堵の表情を浮かべた。
さて、3人が落ち着いたところで、なぜ急に叫んだのか不審に思ったかすみは、そのことを尋ねた。すると
「じ、実は、へ、変な男に追いかけられてまして」
と思いもよらぬ答えが返って来た。かすみはその男がどんな奴なのか尋ねようとした時、廊下のかすみ達が来た方向とは反対方向から
「みぃーつけたー!!」
とその場に相応しくない場違いな声を耳にした。そして全員が一斉に声のした方向に振り向くと、そこには30代前後の茶髪の男が立っていたのを目にした。しかもその男の服装は、夏だというのに真っ赤なダウンジャケットとダメージジーンズという出で立ちである。そしてその男は、ただ立っていただけではなく、その右手には真っ赤なバタフライナイフを握り締めていた。そしてその男は、直ぐに
「へぇー、今回は沢山の人が居るんだねー。
楽しみだなー」
などと下卑た笑みを浮かべながら右手に持ったバタフライナイフの刃を舌先で舐めながらそう口にした。その男の様子からただ事ではない事態が発生したことは誰の目にも明らかなのだが、そんな時もかすみは冷静に相手の様子を伺っていた。そして直ぐにでも魂の分離をしようとしたその時、呪いの動画のスタッフの1人、日比野太郎が捜索班を庇うように前に進み出た。そして直ぐに空手の構えをしてその男と対峙した。するとその男は、何やら面白く無さそうな雰囲気を出しつつ、日比野を睨み付けながら
「お前な―、この刃物が分からんのか?あぁー!!」
と言いながらバタフライナイフを両手の間で移動させながら日比野を挑発した。だが日比野はそんな挑発には乗らず、ひたすら構えを崩さず相手の様子を見ていた。そして男は、日比野の態度が気に食わないのか、「お前な―、痛い目に遭わないと分からんのか!!」と絶叫しながら右手に握り締めたバタフライナイフを日比野目掛けて突き出した。すると日比野はバタフライナイフを握る相手の右手の手首付近を左手ではねのけつつ、更に少し腰を落として自分の右手で男の目掛けて正拳突きを決めた。男はまさか攻撃がかわされただけでなく、反撃されるとは予想してなかったようで、そのまま左手で鳩尾を抑えながら後退するも倒れることはかった。どうやら運よくダウンジャケットがクッションの役割を果たしたようだ。そして態勢を整えると直ぐに日比野に対し連続してバタフライナイフによる突きを繰り出した。だがそんな攻撃も日比野は相手の動きが分かるのか難なく回避しつつ、相手の隙をついて左足の太腿に対しローキックを見舞った。不意を突かれた相手はバランスを崩すも何とか持ちこたえて体勢を立て直そうとしたその時、日比野の回し蹴りが相手の顎を捉えた。だがこの時も間一髪のところで左腕でガードしたのだが、日比野の回し蹴りの勢いのためか、バランスを崩して倒れそうになったため、反射的に右手で握っていたバタフライナイフを手放して倒れるのを防いだ。そして直ぐにバタフライナイフを拾おうと視線を日比野からそらした時、日比野は一気に間合いを詰めてから今度は側頭部目掛けて回し蹴りをお見舞いした。そしてこの回し蹴りは見事に男の側頭部に命中し、しかもその勢いで男はそのまま廊下の壁に激突し、額から血が滲みだしつつ、そこで意識を失って倒れた。日比野太郎の流れるような一連の空手技を見ていた一行は、惚れ惚れするような表情を湛えていた。そしてディレクターの藤波が
「うーん、いつ見ても
日比野君の空手技は凄いよなー」
と手を叩きながら日比野太郎を称賛した。そしてかすみはと言うと、魂の分離をせずに済んだことに対し特にクレームをする訳ではなく、逆に
「日比野さん、めっちゃカッコよかったけど、
一体どないしたん?」
と尋ねた。すると、
「僕は子供の頃から空手をやってまして、
大学に入ってからは他の武術とかを
やったりしてたんです」
まさかそれがここで役に立つとは思ってませんでした、と頭を搔いて照れながらそんな話を口にした。そして藤波が補足するには、この仕事では時に変な人に遭うこともあり、そんな時に彼の武術や護身術は非常に有効なのだということを伝えた。
さて、一難去ったところで、無事行方不明者を確保した捜索隊は、一度4階の病院長室に向かった。なお、襲い掛かって来た男については、かすみがリュックから結束バンドを(召喚して)取り出し、それで両手と両足を縛った状態にし、日比野と仁多牧が両手と両足を持って引き摺りながら連れて行った。一応念のため、男が持っていたバタフライナイフは、かすみがリュックの中に入れているレジ袋に入れ、何かの為の証拠品として警察に届けるつもりでいる。それからかすみが用意したポータルを使って3人の学生と襲い掛かって来た男と証拠品を元の世界に送り届けた。一応日比野と仁多牧の2人が学生たちのケアを含めて付き添うということで、後の措置は彼らに任せることにしつつ、男については警察と救急隊に連絡するように伝えた。そしてかすみと神室霊華と残りの呪いの動画のスタッフ達は、他に生存者がいないかを確認するために、そのままポータル内に残ることにした。
「師匠、もうこの世界には
誰も残ってない気がしますが...」
と神室霊華はその点をかすみに指摘した。かすみも神室霊華と同じ意見なのだが、
「それでも、何か遺留品とかあれば、
それを持ち帰って親族に手渡すことは
できるんちゃうかな?」
と自分の考えを述べた。神室霊華は、ハッとした表情をしつつ「すいません、確かに師匠の仰る通りです」と目を伏せながらかすみの指摘に同意した。恐らく昔のかすみであれば、これで無事解決、めでたしめでたしでそのままポータルを潜って元の世界に戻っていただろう。だがかすみも様々な経験を積んだことで、それだけでは済まないこともあることを自覚しており、今回も行方不明者が多数いたという事実が頭にあったので、何とかその痕跡とかがあればそれを親族に届けたいと考えていた。ただしかすみのそんな思いは残念ながら神室霊華以外には伝わっておらず、呪いの動画制作委員会は更に何か映像が撮れないか期待していた。ただしこの後、彼らはここに残ったことを大いに後悔することになるのだが。