召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
久し振りの召喚術談議 (後編)
そして次に最神玲はあることをその場にいる全員に伝えた。
「今、タチアナさんと
古代の召喚術って何なんだろうか、
と言うことを話し合っていたんですが...」
とつい今し方タチアナとの会話を再現しつつ、玲は自分の解釈を皆に伝えた。そして
「狩猟や移動の道具以外に実は
切断する道具としての機能もあるんですよ」
と言いながら、4人から少し離れた所に玲は移動し、手元にヘキサグラム型召喚門を設置した。そして回転の術式を記入すると、そのヘキサグラム型召喚門は中心軸周りに勢いよく回転を始めた。この光景はかすみを除く3人に、この日何度目かの驚きを与えたようだが、実は本番はこれからである。玲がそのまま「前進」と指示すると、その回転したヘキサグラム型召喚門は前方の雑木林に向かって飛んで行った。そしてそのまま1本の杉の木にぶつかるのだが、ヘキサグラム型召喚門は跳ね返されることなくそのまま杉の木を切断し始めた。そして数十秒後には杉の木が切断されて、向こう側に倒れて行った。その後玲は直ぐに「後退」を指示して手元に戻した。そして安全の為に召喚を解除してから、4人に向かって
「こんな風に木を伐採したり、
あるいは加工する道具として
利用したんじゃないかと思うんですよね」
と話を締め括った。だがこの時も、誰一人何も声を発することは無かった。かすみはと言うと、回転する召喚門は実際に玲が実演したのを覚えており、だがそれで殺されそうになったという玲の話は、どうも眉唾ではないかと疑っていた。だが今、目の前で杉の木が切断される光景を見た途端、自分がもしあれで攻撃されたら果たして防ぐことが出来るのだろうかと危惧し始めた。そして暫く経ってから、エンペラールが何度目かの再起動をしたようで、直ぐに玲に矢継ぎ早に質問を繰り出した。ただやはり一つ一つに答えるのは大変なので、玲はエンペラールの召喚の書に今の術式を記入した。するとエンペラールは、直ぐに手の平サイズのヘキサグラム型召喚門を設置し、それが回転する様子を観察した。そして地面に転がっている枝を手に取り、それを切断するように動きを調整した。すると思った位置で綺麗に切断することが出来た所で、満面の笑みを浮かべた。そして残る3人に玲はどうするか尋ねた。するとかすみを除く2人は、やはり古代語の問題があるため遠慮するとなったが、かすみはと言うと、
「うちもまだ古代語っちゅうのが
よー分からんけどな」
と前置きしつつ
「ただな、この間みたいに武器持った連中に
追い回された時、転移でけへん場合に
やっぱ反撃する手段は必要やと思うからな」
と言うことでかすみはその術式を自分の召喚の書に記入してもらった。そして
「多分複雑な動きは無理やけど、
『進め』と『停止』と召喚解除だけあれば
何とかなるんちゃうかな」
と自分が思ったことを伝えた。そしてかすみの言葉を耳にした神室霊華は、玲に「すいません、やはり私も師匠と同じく、それを記入してもらえないでしょうか?」とお願いした。玲は快く引き受けて、神室霊華の召喚の書にも記述した。そして玲は
「本来、召喚術って
人を傷つけるものじゃないと僕は思うんだよね。
でも自分を守ることは必要だし、
そうやって割り切るようにしているんだ」
という自分の思いを皆に伝えた。
そして最後に玲はある召喚術が正しく機能することを発見したことをエンペラールとタチアナに伝えた。
「エンペラールさんとタチアナさんは
既にご存じのこの術式ですが...」
と言って玲は、 死者の宴”を地面に設置して召喚した。すると地面が割れてそこから死体かゾンビか霊体か、要するに生きたものではない何かが這い出て来た。それを初めて目にした神室霊華は「ひっ」と引き攣ったような悲鳴をあげて口元を手で押さえた。そして以前であればその何かは攻撃することもなくただひたすら湧き出るだけであったのだが、今回は途中で湧き出しが止まった。そしてその場でじっと佇むのだが、その時玲がタチアナに向かって
「タチアナさん、召喚した兵隊を使って
あのゾンビに向かって攻撃を仕掛けてください」
とお願いした。タチアナは黙って頷いて、ロムリア兵を数体召喚した。そしてそのロムリア兵に前方にいるゾンビを攻撃させた。すると、攻撃を受けたゾンビ軍団が一斉に動き出し、襲い掛かるロムリア兵と戦闘を始めた。そして、ゾンビ軍団がやられると、それを補充するように地面から新たなゾンビが姿を現した。そしてロムリア兵が全滅すると、ゾンビ軍団はその場で静止した。そしてそれを見届けた所で、玲は一旦召喚を解除した。
この一連の流れるような攻撃と防御の様子を目にしたエンペラールは、ただ一言「凄ーい!」と呟いた。そしてエンペラールが何度目かの質問を玲にするように見えたのだが、今回は押し黙ったままである。一体どうしたのか?もしかして感情が麻痺したのかと思われなくもないが、実はエンペラールは、玲が記述していた術式を見て大体の事を理解していたのだった。そして
「そうなんだ。そうするのね。
うんうん、なるほどね...」
と自己解決したかのように、満足げにそう呟いた。ただし、それでもエンペラールには幾つか分からない事があったので、その点を玲に尋ねた。
「レイさん、彼らの動きの制御は
私も多分そうだろうなと言うことは
分かったんですが、攻撃と防御、
それとあれは...」
と何かを思い出そうと満天の星空を見つめていたが、
「補充かしら、それとも応援かな、
あれはどういった命令になるんですか?」
と言うことを尋ねた。そこで玲はそれを説明する前に、それらをどうやって見つけたかについて語りだした。
「先程のサモネル教団の件では、
実は攻撃とか防御とかの古代語は
使われなかったんですよ」
と前置きしたうえで、この発見には玲と言うよりも、その中身のカーンフェルトがサモナルドに居た頃、子供の時に遊んだある歌が関係したという。
「僕らの子供の時、戦いの真似事をして
遊んでいたのですが、
その時にこんな遊び方をしてたんです」
と言って説明したのは、日本で言うところの人間将棋による模擬戦である。その時
「司令官の子が、『○○君前進』と言う時、
『ハレント○○』と言うんですよ」
と玲が説明した。するとその場に居る4人はその言葉を聞いてハッとした。そしてタチアナが代表して、
「レレ、レイ君、それって...
先ほど話していた古代語の前進の言葉だよね?」
とまだ驚きから復帰できないのか、声を詰まらせながらそう尋ねた。玲は大きくゆっくりと頷いた。続けて
「その命令の言葉なんだけど、
小さい子はなかなか覚えられないんで、
ある替え歌みたいなものを歌って
覚えたんですよ。それがですね...」
と言いながら、昔を思い出して玲はその替え歌を披露した。
「すいません、音程があってるか
自信はありませんが、こんな感じなんです。
それをつい最近思い出しまして...」
と言うのが真相であった。そして玲の説明が終わった時、エンペラールが
「私やセラちゃんは、残念ながらそう言う
模擬戦とかしたことは無いんだけど、
そうね...あっ、もしかしてカースなら
知ってるかもしれないわね!」
と突然そう叫んだ。カースとは今別行動中のカステリアルのことである。そしてカーンの子供の頃にもまだ古代語の影響が残っていたということは、ロムリアが健在の時代でもその可能性は大いにありそうである。
そんな時かすみが、何やらニヤニヤしながら
「玲、よーそんな昔の事を覚えてんなー」
数日前のことは良く忘れてたりするけどな、と玲を弄りだした。これには玲は苦笑いしつつ、ある切っ掛けをかすみに話した。それは、
「実はね、あの戦いのときに
あれ、この言葉どこかできいたことあるような
と言う不思議な感覚を持ったんだ。
でもねその時には分からなかったんだけど...」
その後、桜の咲く季節になった時、テレビであるニュースを目にした。
「丁度ね、山形県だったかな、あそこの桜祭りで
人間将棋が催されるんだけど、
それを見た瞬間に思い出したんだ!」
その映像を見た瞬間、子供の頃の記憶が蘇ったというのだ。そしてあの時に自分達が必死で覚えた命令が、実は全て古代語だったんだと知った時、玲はその場で意識を失うくらいの衝撃を受けたのだという。するとかすみが再びニヤニヤしながら
「そういやー、玲は偶にぼーっとしてるときあるけど
あれはそう言う時なんやな。あっ、でもほぼ毎日
ぼーっとしてるから、それはちゃうか...」
と一人でノリツッコミをして楽しんでいた。そんなかすみの弄りを無視して、玲はそれが切っ掛けで攻撃や防御の命令だけでなく、補充に関する言葉も思い出したのだった。そしてカーンの子供の頃の体験のお陰で、今まで謎だった 死者の宴”の目的と使い方が分かるよになった。そして正式版の 死者の宴”の術式に関しては、全員の召喚の書に記述した。尤も神室霊華は最初どうしようか迷っていたが、かすみから自分達が襲われることは無いから大丈夫と言うお墨付きをもらったので、お願いして記述してもらった。これで本日の召喚術談議は終了となったところで、その後はお楽しみの露天風呂タイムとなった。