召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
RINAの召喚術試験 (第1幕)
フランスにあるタチアナ・エグリスコバが所有していた別荘にて異世界からやって来た大召喚術師を無事元の世界に送り届けた最神玲と物部かすみは、そのまま自分達の別荘に戻って来た。そして一日の疲れを癒すべく、留守番をしていた神室霊華を交えた3人で寝る前の露天風呂を楽しんでいる。
「エンペラールさんが抜けるだけで、何やろな、
この露天風呂も何か凄く寂しい感じが
すんねんけど......」
とかすみは今までの賑やかな露天風呂の風景が急に以前の静けさを取り戻したことに、少なくない戸惑を感じていた。そんなかすみの戸惑いは、玲も神室霊華も同様に感じており、
「やはり、露天風呂って大人数で入ると
賑やかで楽しいんだよね」
「そうですね、玲さんの仰るように、
お風呂もそうですが、食事も大勢の方が
楽しいですしね」
とそれぞれが感想を述べた。するとかすみが、
「ほな、あれやな。今度RINAさん
連れてきたらええんちゃう?」
と絶大な人気を誇るアーティストであり、今はかすみの三番弟子でもある、ことRINAを連れてきたらどうかと提案をした。すると玲が何かを思い出したかのように
「そうだ、RINAさんの離れを作っておかないとね。
そうだなー、明日から作業を始めるかなー」
とRINAを迎えるための準備を進めようとする玲に対し、かすみが
「そやけど、まだRINAさん転移でけへんやろ。
せやから、まだちょっと早いんちゃうの?」
と疑問を呈した。これは玲に対する何時もの難癖ではなく、単に感じたことをそのまま伝えだけなのだが、2人の会話を耳にしていた神室霊華が
「そうですね、私から見ましても、
まだ転移は無理かと思いますね」
とかすみの意見に同意しつつ、今現在の状況を簡単に2人に報告することにした。
RINAは神室霊華の指導の下、忙しい合間を縫って召喚術、特に降霊術と除霊を積極的に練習していた。勿論彼女が使っているのは、玲が用意した霊体人形である。しかもラハニ・カヤンの練習でも使用したたまに怨霊が現れるスペシャル版である。そして神室霊華から譲り受けた召喚エネルギーチェッカーを腰に巻いて、日課のように毎晩練習を続けているという。RINAのその熱意はどこから来ているのかと言うと、自分の妹のを悪霊から守るためである。
「ただ、RINAさんは凄く真面目な方でして、
こちらの出した課題を忙しい合間を縫って
ちゃんと仕上げたりしてますね」
と指導役である神室霊華の評判は上々である。そうすると、あとはどのタイミングでRINAにこちらに来てもらうかなのだが、当然玲には案はないし、神室霊華も然り。だがかすみはと言うと、
「偶然にもその件に関係すんねんけどな、
今日神薙家に行ったやんか。実はな――」
と言うことで、神薙家に出向いた件を玲と神室霊華にその場で語った。
今日の日中にかすみは、神薙宗座衛門から呼び出されて神薙家を訪れていた。訪問の理由だが、何時も美土路神社の社務所で寝ていることをめられたとか、あるいは社務所で内職をしていたことがバレたとか、そう言うネガティブな話ではない(かすみの母親の物部京子が同席していれば別だが)。実は美土路神社のリフォームと言うか、建て替え工事が完了しており、美土路戦勝祭が行われる前に落成式に相当するを執り行うことになっている。それが9月の連休の後半を予定しているのだが、その奉祝際に何かしらお祝いのイベントを催したいということで、その相談に乗って欲しいと言うのがかすみの呼び出しの理由である。本来なら、こういったイベントは、宗座衛門の妻の千絵子か娘の華蓮が妥当なのだが、両名共に今は東京にて生活をしている。特に華蓮は、東京の服飾専門学校に通っており、今は学業を優先させたいという宗座獲門の意向もあり、こういった相談事をかすみにお願いしたのだった。
ではどのようなイベントを企画しているのかと言うのだが、実は特に案はない。だが
「何かしら、景気の良くなるようなことを
考えるとな――」
例えば芸人を呼んで漫才をしてもらうとかどうだろうか、と言うことをかすみは相談された。勿論かすみとしてはそれは有りだなと思うも、それだけだと何か寂しい気もしなくもない。尤も昔の美土路神社の様子からはそれでも十分に贅沢だと思うのだが、昨年からの賑わいを考えると、やはりもう少し華が欲しいと言うのが宗座衛門の希望でもある。そうなると
「誰か有名人を呼んで
一曲歌ってもらうとかかな~」
とかすみは考えるのだが、差し迫った日程で果たしてそんな簡単に呼んで来れる芸能人がいるのかどうか、正直全く分からない。すると宗座衛門が
「それだったら、一層の事、
のど自慢大会でもした方が
良いんじゃないか?」
と提案するのだが、かすみからすると、そんな自己満足で終わるイベントが果たして奉祝際に合うのかどうか、その点に凄く不安と言うか疑問を感じている。とそんな時、ある考えがかすみの頭に浮かんだ。それは、
「歌ってもらうんやったら、
RINAさんに頼んでみようか?」
とかすみは宗座衛門に提案した。ところが宗座衛門は「RINAさんって、誰だい?」とかすみに尋ねるので、かすみはそれこそ新喜劇の転びをしそうになった。それでも何とか耐えつつ、宗座衛門に
「叔父さん! 5月の連休後に
ここで映画の撮影してたやろ。
そん時に来ていた若い女性やねんけどな~」
まさかもう忘れたんか?とかすみは心配そうに宗座衛門を見つめてそう尋ねた。すると、
「あー、あの時のお嬢さんか...
でも彼女は女優さんでは?」
と言うので、かすみはRINAの活躍について簡単に話した。序にスマホを取り出して、動画投稿サイトに投稿されている彼女のを再生したりした。そして、
「実はな、RINAさんが連れてきてた
飼い猫が逃げ出して、
偶々うちの神社に迷い込んだんよ。
それをうちで保護したのが縁で
RINAさんとも仲良くなってんけど――」
実はそれだけではなく、その後RINAの妹が悪霊に憑りつかれていたことで、その除霊をした縁でRINAとは直ぐに連絡が取れるようになったことをかすみは伝えた。すると宗座衛門も、
「そう言うことなら、
その件はかすみに任せようかな」
と言うことで、かすみがRINAに連絡を取り、果たして予定が取れるかどうかを確認することになった。
「ほいでな、そん時に一応RINAさんに
こういうイベントがあんねんけど、
どやろかと聞いたんよ」
すると、前向きに対応するという返事を貰ったという。ちなみに、この前向きとは、ビジネスの世界における善処しますとか、やるフリとかの前向きではなく、本当にスケジュールを調整して何とか出来ないかという検討を指している。
「かすみ、RINAさんに無理をお願いするのは
良くないと思うけどなー」
と玲は至極真っ当な意見をかすみに伝える。かすみもその点は十分に分かっており、
「そんなん当たり前やで、玲。
うちもな、もし無理なスケジュールが
組まれるようなら断るつもりやねんで。
ただな――」
夜のある時間だけであれば、それこそ転移で連れて来ることも可能ではないかというのだ。
「まあそうだけどね、でもRINAさんって、
まだ転移の事知らないんだろ?」
と玲は念のためにかすみに確認するが、かすみは首を横に振る。神室霊華もこの件には直接タッチしていない。となると、
「だとすると、まずはそれを伝えて
ちゃんと理解してもらってからでないと、
恐らく具体的な行動は出来無さそうだけどね」
と玲は懸念を伝える。かすみもわざわざ玲に言われなくてもその点は十分に理解している。そこで、
「近いうちに、RINAさんの家に行って
こういう術が使えるっちゅうことを
きっちりと説明してくるわ」
と言うことで、以後はかすみに対応を任せることにした。