召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M心霊ファイル13: 心霊悪徳商法 (第3幕)
「これやな、そのモルタっちゅう奴の
ホームページは!」
楽しい夕食後、物部かすみは早速自分のスマホを取り出して、「死神モルタ」とか「呪い代行」などのキーワードを使って検索を行った。そしてどうやら問題のホームページを見つけたのだが、そこには残念ながらモルタ自身のプロフィールや顔写真などは記載されていない。まるで、
「M Mのホームページ並みにシンプルだね」
と最神玲が呟く感想の通り、全く文字だけのシンプルな作りであった。だがそこに記載されている内容は、M Mの内容とは全く異なる、と言うか全く正反対である。M Mは霊的な事で困っている人を助けるべく除霊や降霊術の案内が書かれているのに対し、モルタのホームページはまるで
「まさに、典型的な呪い代行業者のやっちゃな」
とかすみが指摘するように、誰かに恨みがある人を募り、報酬と引き換えにその相手に対し呪いを代行するという、そのような内容で溢れていた。そんな中、呪い代行料金と言う項目があったので、かすみはそこをタップした。すると
「ん?何やろ、めっちゃ良心的っちゅうか――」
昔のうちらの所の降霊術の料金並みやな、とかすみは感心しながら隣で一緒に画面を見ている神室霊華にそう伝えた。そこに表示されている料金は二万円と書かれていたのだ。そうなると、
「それって、どういう事なんだろうか......」
と玲は疑問を呈するが、世間一般の呪い代行料金とそんなに変わらない状況だと金にならないため、敢えて別口でカモを見つけてはあくどい金額を請求しているのだろうか?
「うーん、まぁなー、
それも分からんことは無いけど......」
何やら腑に落ちない態度のかすみである。すると神室霊華が
「それでしたら、例えばここで依頼を受けた
呪いの対象者に対し、後から呪いを解くために
別料金を吹っ掛けているということは
考えられないでしょうか?」
と今感じたことをそのまま2人に伝えた。かすみは腕組みをして考えているが、「それは十分にありそうやな」と隣の神室霊華の方を向いて、彼女の目を見ながらそう答えた。だとすると、依頼した方からすると、堪ったものではないだろうか?玲がそんな疑問を呈すると、かすみは
「せやけどなー、二万円でとりあえず
相手が苦しむ様子を目に出来れば、
それでまぁええか、
と思わなくもないけどなー」
もしそのまま死んでしまったら、後味悪いだけでなく、寝覚めも良く無いだろうと言うことをかすみは指摘した。そのため、暫くの間は苦しませて、もう駄目だとなる寸前に法外な料金を吹っ掛けて除霊する、そんなビジネスモデルでも作ったのではないだろうか、と言うことをかすみは2人に語った。
「そうですね、師匠のその考えであれば、
これまでの事やホームページのことを含めて、
しっくりきますね」
と神室霊華も何やら納得がいったようだ。
その後、かすみはそのホームページの一番最後までスクロールした。最後には連絡先が表示されているが、それ以外に何やらモルタのブログと言うか活動報告と言うか、SNSへのリンクも貼られていた。そこでかすみは、そこをタップしたところ、何やら呪いの成果報告みたいなことが書かれているのを目にした。
「何や、結構やってるみたいやなー、こいつ」
とかすみは呟きながら見て行くのだが、意外と古くから商売をしていることが分かった。そのことを神室霊華に伝えると、神室霊華は何やら首を傾げて不思議な物を目にしたような表情でかすみを見つめ返した。かすみは何か気になることでもあるのか尋ねると、
「はい、師匠。今日お話を伺った限りでは、
今年に入ってから活動が活発と言うか、
派手で悪質と言った方が良いのか、
そんな良く無い評判を耳にするようになったと
伺っております」
要するに、古くから呪い代行業を営んでいた人物が、今年になってどうして急に忙しくなったのか、何かそこに理由があるのかが気になるというのだ。
「うーん、もしかしてやな、1つの仮説としては、
例の呪いの動画とも関係するアプリを
手に入れたとか、そんなんとちゃうんかな?」
「それも可能性としてはあるかもしれませんが、
ただですね――」
恐らくモルタから悪霊を憑依された人物に対する除霊を神室霊華は何件か行っているという。もしそうであれば、既に呪い返しを受けているのではないか、と神室霊華は指摘するのだった。かすみも腕組みをしながら大きく頷いて、
「確かに、そりゃそうなるわな。
せやけど、こいつはまだピンピンして
商売やってんねやろ?」
ほな、違うかー、と漫才のネタのような台詞を吐いたまま、再び目を閉じて考えだした。そして直ぐに何やら結論が出たのか目を開けたところで、
「そうなると、やっぱ、うちらみたいな
召喚術が絡んできてるんかなー」
と呟くのだが、そのかすみの呟きに対し玲はかすみの目を見つめながら
「あるいは、アーティファクトを
使っていることも考えられるだろうね」
と突然そう返した。そしてかすみはアーティファクトと聞いた途端、「ほな、裏ではあいつらが絡んでんのか?」と目を丸くして正面の玲を凝視する。玲は「それは分からないけどね」と断った上で、
「ただね、彼らの目的とはやはり何か異なるんだよね。
もし彼らが裏で糸を引いているのであれば――」
除霊することはしないだろうというのだ。つまり悪霊を憑りつかせたら、そのままにして亡くなるのを待つのではないかと言うのだ。
「僕からすると、その方が
あいつらのやって来たことと
矛盾しない気がするんだけどね」
と言うのだが、残念ながら彼にもその答えは分からない。
さて、何れにしても、神室霊華が受けたというか相談された問題に関しては、これ以上考えてもきりがない。そうすると、後はどのように接触するかとなるのだが、
「僕としては、この中の誰かをターゲットにして、
そいつと接触させるしかないかな、と思うけど――」
当然その役は僕がやるよ、と玲は事も無げにそう伝えた。それに対しかすみは、首を横に振りながら
「玲、自分が餌になるのはええねんけどな、
恐らく相手にされへんとちゃうやろか」
と疑問を呈した。どういう事かと言うと、恐らくモルタは、悪霊を憑依させる人物を調べ上げた上で、金を持っていそうであれば除霊代を請求するために接触してくるのではないかと指摘するのだ。そして
「あんまな、金持ってへん奴やと、
そもそも接触せぇへんとちゃうか!」
「それこそほったらかしにされて、そのままお陀仏っちゅうこっちゃな、ひゃひゃひゃ」と変な笑い声を上げながらかすみはそう指摘した。玲は一瞬むっとするも、かすみの指摘も確かにその通りだと納得してしまう。とその時、神室霊華が何やら意を決したように、かすみと玲に向かって
「では、その役目は私で宜しいでしょうか?」
と伝えた。玲とかすみはお互いをじっと見つめている。そのうち、かすみが視線をそらして、神室霊華の方に振り向いた。そして
「ええんか、霊華さん?まぁ、命を落とすことは
無いやろけど、もし悪霊に憑りつかれたら、
結構苦しむんちゃうか?」
「うちは悪霊ちゃうけど、怨霊にぎょーさん憑りつかれたからな、ははは」と自虐を込めて笑いながらも、神室霊華を心配してそう声を掛けた。本来であれば、神室霊華はここまでする必要は無いし、恐らくかすみと出会う以前の神室霊華であれば、このような考えに及ばなかっただろう。と言うのは、彼女の霊能力者としての先生にあたるが行方不明となって以来、神室霊華は仲間を持つことなく、また同業者に頼ることなく、常に独りで対応しており、その点でから仲間意識と言う考えを持っていなかった。ところが、今こうして玲とかすみと言う掛替えのない仲間を得ることが出来たことで、神室霊華の中にも仲間意識が漸く芽生えだしたというべきだろうか。そして大切な仲間である玲とかすみの両名が、面識のない霊能力者達を苦しめる存在に対し手を打とうと真剣に議論する姿を目にした時、自分もこうあるべきと思うようになるのは自然の成り行きであった。勿論、神室霊華に不安が無い訳ではない。だが何かあっても、玲とかすみが必ず何とかしてくれると信頼しているため、神室霊華は何の迷いもなく自分がターゲットになることを伝えたのだ。
「ほな、霊華さんを呪ってもらうっちゅうことで
話進めるけどな、そうするとうちか玲の
どっちかが依頼せなあかんねんけど」
「確かにそれは何れ決めないといけないけどね、
それよりも、どういうシナリオで依頼するかを
決めた方がよくないか?」
とかすみと玲はお互いに真剣な表情で話し込んでいる。すると神室霊華が
「やはり、誰がどう見てもそれは絶対に許されない、
というようなシナリオを書かないと
どこかで破綻する危険性がありますから、
先ずは玲さんの意見に沿ってシナリオを作り、
それを見てどちらが依頼するか
決めては如何でしょうか?」
との案を示した。玲もかすみも、神室霊華の意見は尤もだと思ったので、大きく頷いて同意した。
「ほな、こんなんはどやろ?」
「これは、もう少し、こうした方が......」
「これは少し弱い気がしますが......」
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と3人はそれぞれ意見を出し合って、シナリオ作りを進めたのだった。