召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M心霊ファイル13: 心霊悪徳商法 (第2幕)
「師匠、今晩は」
と何時もの挨拶で美土路神社の神職用住宅にやって来た神室霊華は、自前のエプロンに袖を通して、早速今週の料理番である物部かすみの手伝いをすることにした。今日は手作り餃子を焼くということで、かすみが用意していた餃子のを、2人でダイニングの椅子に腰かけた状態で餃子の皮に包む作業をすることにした。そして作業をしながら、神室霊華は今日の出来事をかすみに話した。かすみは途中で言葉を挟むことなく、無言で餃子を作り続けるが、神室霊華が話し終えた時に、
「何やろな、めっちゃムカつくやっちゃな、
そいつ!」
と先ずはモルタと名乗る霊能力者と言うか死神に対して悪態をついた。ただし、かすみにもどうやらモルタが何をして悪霊を取りつかせるのかは、今の段階では分からない。ただ、
「もし、そいつが召喚術師やったら、
結構厄介やねんけどなー」
とかすみは声のトーンを少し落として指摘するのだが、もし相手が召喚術師であれば、場合によってはそれこそどちらかが死ぬまで戦うことも視野に入れる必要が出て来ることを懸念したのだ。そんなことを話している時、玲が自室から出て来た。そして神室霊華に挨拶をしつつ、そのままリビングに向かって何時ものようにテレビニュースを見だす。そこでかすみが、たった今神室霊華から相談を受けた件をそのまま玲に伝えると、玲も何やら興味を持ったのか、テレビを消してダイニングテーブルにやって来て
「それって、やはり召喚術師なのかなー」
とかすみと同じような疑問と言うか感想を口にした。
ところで、玲とかすみがなぜ召喚術師が関与していると考えるのか?それは、彼らであればそのような事を容易に出来るからである。実際、昨年のこの時期に玲とかすみ、そしてかすみの二番弟子のラハニ・カヤンが拉致される事件があったが、その時の実行犯に対するお仕置きとして同じような措置をしたことは記憶に新しい。あるいは玲に関しては、もっと古くに似たようなことをしている訳で、そのような点からも、召喚術師であれば悪霊であれ怨霊であれ、相手に憑りつかせることは容易な事なのだ。
「でもね、そのモルタって言う人、
その人が女性だったら分からなくもないけど、
男性だったらそれこそサモナルドからの
転移者とか転生者しか考えられないけどね」
と玲が呟くのは、そのモルタなる人物に関する人物像である。もし女性であれば、召喚術を扱う特殊な遺伝子を持っているため、地球人であっても可能性としては十分にあり得る。ただし、誰がその女性を召喚術師にしたのか?と言う疑問は依然として解決せずに残り続けるが。
一方、男性の場合、一般には召喚術師の子供として生まれない限り有り得ない。それこそ、玲の中身のカーンフェルトの故郷でもあるサモナルドからの転移者か転生者を疑うべきだというのだ。だが残念ながら、神室霊華にしても、その謎の霊能力者と言うか召喚術師の正体は分からない。そのため、
「先ずは、その人物に接触することが第一、
と言うことになりますでしょうか?」
と神室霊華は玲とかすみに尋ねるが、2人はただ頷くのみである。
「ただなー、そいつが召喚術師だったとしたらやね、
うちらどないすればええんや?」
とかすみは餃子を包みながら玲に尋ねると、玲は
「うーん、まぁね、止めるように説得して
止めてくれれば何も問題ないけど――」
その可能性はかすみが漫才コンテストで優勝するのと同じくらいに確率が低いだろう。そんなことを口にした玲に対し、かすみは
「はぁ?何やろな、玲さん。
うちのお笑いのセンス、
馬鹿にしてんとちゃうやろな?」
と餡でべたつく手にマキザッパを召喚し、早速玲をシバキにかかる。そんなかすみを目にした神室霊華は、
「師匠、先ずは餃子を作ることに
専念しましょうか?」
と何時もの様に無表情でかすみを嗜めるため、かすみは「ちっ」と舌打ちしつつ、再び餃子づくりに専念する。そして玲は一難去ったところで、先程の話の続きではないが、
「まっ、まあ、後はだね、その人を
強制的にお見送りするしか
手は無いんだけどね......」
と言葉を詰まらせながらも、玲はそのように伝えた。するとかすみがお見送りの言葉に反応して、
「玲、今、お見送り言うたな?
それって強制的にあの世に送る
いうことなんか?」
とかすみは心配そうな表情で玲に尋ねた。そこで玲は、ケンタリアにおける召喚術師の犯罪に関する処罰について、かすみと神室霊華に語った。
「......と言うように、相手に苦痛や
死の恐怖を与えるようなことをした場合、
問答無用で召喚術師は死刑となるんだ。
これはケンタリアに限らず、
サモナルドのどの国でもそうだと聞くし、
エンペラールさんやタチアナさんの住む
ロムリアも同様だってさ」
「ただそうすると、玲は殺人罪に
問われるんとちゃうんか?」
とかすみは凄く心配そうな表情でじっと玲を見つめる。玲もかすみの目をじっと見つめながら
「残念ながらこの国と言うか、
地球のどの国においても、
僕がやろうとすることは
何の罪にも問われないよ。ただね――」
自分の中では、それこそ永遠に重い十字架を背負い続けることになるだろうというのだ。だがもしそうなったとき、玲は迷うことなくその十字架を背負うつもりでいる。まさかかすみや神室霊華にそのような事をさせるとは全く思っておらず、勿論玲はそのことを一言も口にしないのだが、何やらかすみは玲の態度から一人で背負う心算だと察したようで、
「玲、あんな、そんな大変な事、
1人で背負う必要ないで。うちら仲間やからな、
仲間で一緒に背負おうな」
と先程までの態度とはガラッと変わり、かすみは玲のことを心配してそう話しかけた。そしてかすみの言葉を受けて神室霊華も
「そうですよ、玲さん。
独りで背負い込もうなんて
考えないでください。
私達は仲間なんですからね!」
と賛同した。玲はこの時ほど、自分は仲間に恵まれていることに感謝したのだった。その後は、かすみと神室霊華が焼き上げた餃子と冷えたビールを手にして、一日の疲れを癒すべく3人で食事を楽しんだのだった。