召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
神室霊華の生誕祭とRINAの歓迎会 (最終幕)
食事中の話題は、RINAが普段から思っている召喚術に関する疑問に玲やかすみが答えたり、あるいはかすみが召喚術に関係した最近の話題を提供したりした。そのうち、RINAの飼い猫のおもちがにくたまと外の探検から帰って来た所で、玲は猫用の食事を用意してそれをおもちに食べさせた。おもちはどうやら遊びに夢中だったのか、食べることを今ようやく思い出したかの如く、無心になって食べている。その様子を眺めていたRINAは、
「すいません、うちの猫が、何だか今まで
餌を与えられてないような勢いで
がっついているようですね。ははは」
と恥ずかしそうに笑うも、そんな飼い主の事を気にすることもなく、おもちは夢中になって食べ続けている。
そんなおもちの様子にほっこりした所で再び雑談がされるのだが、そのうち誰からともなく10日後に迫った超常現象に関する国際会議の話題が出た。するとかすみが
「そう言えば霊華さん、
あっこで話す内容ってもう決まったん?」
「はい、大体は決まりました。
恐らく会場におられる方々の興味を考えると、
降霊術による絵画鑑定を中心にしようかと
考えてます」
ただしその場で行うかどうかについてはまだ決めていないという。
「そっか。でもなー、そこで誰かの何かを使って
霊体を呼び出しても、
『それはヤラセだろう』
と勘繰られるだけやろうしなー。うーん、
それやったら、なーんもせん方が
無難かもしれへんなー」
「そうですね、師匠の仰ることも分かります。
でもまだ少し時間があるので、
私の方でも何か考えてみたいと思います」
と言うことのようだ。するとRINAが、先ずその怪しげな国際会議のこともさることながら、召喚術で絵画鑑定が出来ることに興味を持ったようで、そのことを2人に尋ねた。
「そっか、ラハニさんは知ってんけど、
RINAさんにはまだ話してへんかってんな。
実はな――」
と言ってかすみが話したのは、昨年末に起きたデルベッキオの絵画の発見と、その後の絵画の盗難事件のことである。RINAは勿論そのニュースは知っており、仲間内からもRINAの実家に何か眠ってないかと冗談で言われたりするほど話題になっていた。そんな大事件を引き起こした希少な絵画の発見から、それを盗んだ犯罪グループを摘発した裏でここにいるM Mの3人が深く絡んでいたことにRINAは驚きを持って聞き入っていた。
「……せやからな、RINAさんも
何か鑑定したい物があったら、
自分で降霊術で鑑定することが出来るねんで」
とのかすみの言葉で話が終わったのだが、RINAは腕組みをして何やら考え込んでしまった。実は今手元にないのだが、彼女の実家には何やら怪しげな来歴の品々があるようで、そう言った品々の鑑定が可能なのかをかすみに確認の意味を込めて尋ねた。
「多分問題ないと思うで。ただな、
そこに出て来る霊体が作者なんか
元の持ち主なんかは本人に尋ねて
確認するしかあらへんねん。
まあ、その場合は恐らく問題ないねんけど――」
全く何も召喚されないこともある訳で、その場合直ちにその品物が贋作だとは言えず、
「もしかして作者本人が転生して
別の人生歩んでいることもあるから、
その辺の見極めは重要やねんな」
という言葉で締め括った。RINAは何やら考え込むも、直ぐに「かすみさん、アドバイス有難うございました」と言ってかすみにお礼を伝えた。
そして午後2時10分前になった所で、そろそろ神室霊華の誕生日会とRINAの歓迎会を終えることになるのだが、その時玲が突然
「あっ、そうだ!
RINAさんの離れが出来ていたのを
伝え忘れる所だった!」
と立ち上がって叫んだので、かすみはビックリして
「な、何やねんな、玲。
そんな大事な事、忘れるか普通?」
と言いながら玲に気合を入れる意味でマキザッパを召喚して一シバキした。玲は突然かすみからしばかれたことで一瞬何が起きたか把握できずにその場で立ち尽くすが、直ぐに立ち直るやかすみに猛抗議する。だがかすみは知らん顔をしながら「そんなん、自業自得やろ」とく。そんな2人を苦笑しながら他の3人は眺めていたが、それよりも
「玲さん、折角の機会なので
RINAさんを案内されては如何でしょうか?」
と神室霊華からの助言を受けて、玲はRINAを連れて裏手の離れに向かった。
「RINAさん、ここはね、
僕たち専用の離れがあるんですけどね、
RINAさんの離れも作ったんですよ」
と玲はRINAに説明しながら、彼女専用の離れを案内した。そこは出来たばかりで、一歩室内に足を踏み入れると、部屋中に充満している杉の木の香りが鼻を|
る。実はRINAは、自分の別荘を持つのが夢なのだが、勿論今の収入からして高級リゾート地に別荘を建てたり購入することは何も問題はない。だが、いざその夢を叶えようとすると、どこにするか?あるいはどこかにしたとして、隣近所との付き合いはどうするのか?また、別荘の管理はどうするか?そしてこの忙しい状況で果たして別荘に滞在する時間が取れるのか?そんな細かな事が気になってしまい、結局二の足を踏んでしまう。
ところが、この別荘では、(どこにあるか分からない)隣近所を気にする必要は全くなく、しかも毎週末必ず誰かが滞在しているため、管理を気にする必要はない。加えて、転移が出来るようになれば、ちょっとした時間を見つけて露天風呂に入りに来ることも容易にできる。そうなると、今まで気にしていた問題点が全て解決される訳で、自分のイメージする別荘としてはまさに理想的な環境にある。そう考えると都内にある私室よりもかなり狭いこの離れであっても、まるで自分の王国のように感じてしまう。RINAはそんな気持ちを正直に玲に打ち明けると、玲ではなく一緒についてきたかすみが
「ここはね、誰に気兼ねすることなく、
自由に過ごすことが出来る場所やねんで」
と言いながら、自分達の離れの地下には専用の工房があり、自分達の趣味の時間をそこで送ることができることを伝えた。
「えっ、それって何なんですか?」
とRINAは驚きつつ興味を示すので、かすみはRINAを自分の離れに案内した。
「こんな風にな、クローゼットの中に
秘密の扉があってな――」
と言いつつ隠し扉から降り立った地下工房にRINAを誘った。そこはかすみのデザイン工房となっており、ロムリアから贈られた衣装やドレスをディスプレーしたり、専用の裁断器具や縫製器具を用意したりしている。RINAはそこに飾られている衣装に見惚れつつ、広い空間が地下に作られていることに驚きを示した。
「ちなみにな、霊華さんところは、
陶芸の工房になっててな――」
本格的な焼き釜が備えられているということを教えられたRINAは、「ここは何でも作っていいんですか?」とかすみに尋ねずにはいられなかった。するとかすみは
「ええで、何かこういうのが欲しいとか、
何かこうして欲しい言うことあったら、
玲に言えば作ってもらえるで」
とかすみは安請け合いするが、一緒についてきた玲は頭を掻きながら苦笑いを浮かべつつ、
「まあね、何かこういう工房とか、
あるいはRINAさんだとスタジオかな、
そんな施設が欲しいと要望してもらえれば、
その通りに作りますよ」
こういう仕事は召喚術で短期間のうちに出来るから便利なんですよ、という言葉を添えてRINAに伝えた。RINAは腕組みをして何やら考え込むが、直ぐに結論が出ないため、
「分かりました。少し考えてから
ご相談させてください」
と玲に伝えた。玲は「何時でも言ってくださいね」と伝えて、全員がその場を後にした。
「ほな、RINAさんを送り届けて来るな」
とかすみは口にして、
「RINAさん、ほな行こか?
あっ、その箱はここに置いててかまへんで。
後で送り届けとくな」
「かすみさん、有難うございます。
それと皆さん、今日は有難うございました。
凄く楽しかったです!!」
と別れの挨拶をしてRINAとおもちは、かすみに連れられて福岡のホテルに転移して行った。残った3人は片づけをしながら、賑やかな誕生日会と歓迎会を振り返っていた。
「そう言えば、タホマ君、
今日は静かに寝てますね」
「ワタシニエンリョシテ、
タヌキネイリシテルカモネ」
ハハハ、とラハニは笑いながらそんなことを口にする。玲と神室霊華は苦笑いを浮かべるが、そんな時かすみが戻って来て、ラハニが声高に笑っているのが気になって玲と神室霊華に尋ねた。そこで神室霊華がタホマのことをかすみに話すと、かすみは
「そんな、この年で気ぃ遣うようになったら、
えらいこっちゃで、マジで。
それよか、こんなにぎょーさん
召喚術師が集まってるから
緊張してんとちゃう?」
とニヤニヤしながらラハニにそう尋ねた。ラハニは「ソレ、アルカモシレマセンネ」と答えて、再び笑い出した。そして何とか片づけが終わったところで、女性陣3人はダイニングに集まり、10日後に迫った国際会議の晩餐会で着る衣装をどうするか話し合って時を過ごしたのだった。