召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
超常現象に関する国際会議 (第6幕)
超常現象に関する国際会議も中盤を折り返し、今日は3日目となる。そしてこの日は、物部かすみが待ちに待った晩餐会が開催される。そのためか、朝からかすみの心は上の空と言うべきか、何やら浮ついた状態である。と言うのも、実はこの日に至ってもまだ何を着て参加するのか迷っていたからだ。だが全く何も決まっていない訳でもなく、かすみの中ではある程度候補を絞っていた。それは、昨年のかすみの誕生日にロムリアから贈られた、“ノクターン・ブラック”と名付けられた深い黒のミニマルドレス、“星屑の祝祭”と名付けられためくラベンダーシルバーのロングドレス、そして今年の誕生日に贈られた深緑のスレンダーラインドレスとアイボリーのレイヤードドレスの4点である。ちなみに、昨年贈られた“のヴェール(Evening Veil)”と名付けられたがかったグレイッシュブルーのロングドレスは、色味としてラハニとブルーが被るためそちらは避けることにした。そして今、ホテルの部屋の中にはその4種類のイブニングドレスが、かすみの工房から持って来たマネキンに着せられて窓辺に置かれている。かすみはその前を腕組みをして行ったり来たりしている。そんなかすみの様子を横目に神室霊華は、既に深いワインレッドのイブニングドレスを選んで、今はかすみ同様、マネキンを召喚してそこに着せかけている。神室霊華はもう一着かすみから贈られているのだが、そちらはラハニの衣装と色が被るため、それは避けている。そしてラハニはと言うと、こちらは選択の余地がなく、今年の誕生日に贈られた最高級シルクサテンで仕上げられている深いミッドナイトブルーのシルクドレスで出席する予定だ。
そして問題のかすみだが、「やっぱ、他の人とも被らない色味の方がええよなー」と誰かに確認したいのか、そんな独り言を呟いているのだが、そんなかすみの独り言に律儀に答えた神室霊華は、
「そうですね、それが理想ですけど、
なかなか難しい気がしますね」
と無難な答えを返した。だがかすみは、その言葉に後押しされた訳ではないが、
「せやな、ほな最初のインスピレーションに
従うことにするわ」
と言うことで、選ばなかった衣装を全て別荘の工房に転移で戻した。そして漸く衣装が決まったところで、3人で朝食を取りにビュッフェ会場に向かった。
この日のかすみは、昨日と同様、色々な会場に足を運んでいた。だがやはりと言うか、専門的な議論が多いため話について行くことが出来ず、直ぐにどこかに船出してしまいそうになる。そのため今日は直ぐに心霊の講演室にて講演を聞くことにした。
ところで昨日は、パラレルワールドの講演室で講演を聞いていたのだが、何やらパラレルワールドは何次元まで存在するとか、どの次元はこうなっているとか、そんなことを数学的に証明したとかなんとか、そんな話に研究者たちは夢中になっていた。勿論かすみは、既にパラレルワールドの存在を確認しており、しかも実際にその世界に足を運んだりした。そしてかすみの感覚では、そこに難しい数式が入る余地はなさそうに思うのだが、残念ながらそれをする手立てがない。そのためかすみはその部屋を出て再び心霊の講演室に戻ろうとした時、ある講演室が目に入った。そこで何気なくその部屋を覗いてみると、講演内容が意外と面白く感じて、暫くの間その部屋での講演を聞いていた。そこは、未確認生物を扱う部門の講演会場であった。ただ、残念ながらかすみの人生で未確認生物に出会った経験はないのだが、話しを聞いているうちに、
“あれ?あいつの召喚したのも
UMAとちゃうんか?”
と思ってしまったようだ。当然かすみの指すあいつとは、言わずと知れた最神玲である。そして彼が召喚したものとは、猫のにくたまや熊もどきたちである。これはかすみの何時もの弄りであるのだが、講演を聞いているうちに、
“今度玲の召喚した動物を紹介したら
メッチャオモロイんちゃう”
と思うようになり、講演後早速そのことを神室霊華とラハニ・カヤンに話した。すると2人とも怪訝な表情でかすみの意見に対し首を横に振りつつ
「師匠、それですと、玲さんがグレて
家を出てしまいますよ!」
とかすみを脅すように警告を発した。ラハニは神室霊華の言葉に大きく頷いて
「レイサンデテイッタラ、
カスミサン、コマルデショウ?」
とかすみと玲の2人を心配しながらそう口にした。まさか2人から反対されると思っていなかったかすみは、少なくないショックを受けるのだが、それ位に彼女達は玲の事を大切な仲間だと思っていたようだ。かすみは少しだけ反省して、「ごめんな、うちが軽率やったわ」と2人に対し謝った。
そして今日、かすみとラハニの2人は、心霊現象の講演を聴講中である。ちなみに、会場となっている半円形劇場だが、昨日から何やら聴講者が多くなっている印象をかすみは受けていた。隣にいるラハニにその点を尋ねると、やはり人が多く感じるという。どうやら初日の神室霊華の基調講演の影響ではないかとラハニはそう答えるが、かすみもその通りだろうと見ている。何といっても、アメリカでは知らぬ人はいないとも言われる著名な霊能力者でありエクソシストでもあるビショップ・モルヴェイン自ら、神室霊華の降霊術を認めたという事実は、確かに宣伝効果としては抜群であろう。それと同時に、神室霊華が降霊術で鑑定した絵画の件も、そのニュースがいま世界を駆け巡っている。これは後日判明することだが、神室霊華が聞き出した修道院は今現在もイタリア北部のアルプス山脈の麓にある田舎町に存在している。しかもそこには、昔から由来の分からない風景画が飾られているという。実はその風景画はまさに神室霊華が呼び出した作者の作品であることが判明したことから、神室霊華の降霊術による鑑定の信頼性がさらに増したのは事実である。
そして神室霊華の名前が広く知れ渡るようになってくると、そのおこぼれではないが、やはりM Mの評判も上がったことは嬉しい誤算であった。と言うのも、初日の歓迎レセプションでは、早速かすみの元に色々な国の心霊研究者や霊能力者達がやって来て名刺交換を行った。しかも必ずかすみの事を「ビールの女性」と笑顔で呼びかけるのは、当然神室霊華の基調講演で使用されたかすみの写真の影響である。お陰で直ぐに打ち解けた感じで(片言の英語ではあるが)色々と話すことが出来たのはM Mの代表としては良かったと思っている。
“しかも、メッチャ受けたし、
うちとしては万々歳や!”