召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M心霊ファイル14: 消えた容疑者 (第5幕)
その後暫く会議室内で待っていた最神玲と物部かすみの元に、大阪府警の滝沢が戻って来た。そしてどうやら、彼らが追っていた事件が急展開を迎えそうだということで、その顔には先程の緊迫した表情から興奮の色へと変わった様子を玲とかすみは目にした。そんな滝沢に対し玲が、この鏡をどうすべきかを相談するのだが、
「うーん、そうですな。確かに最神さんの体験と、
わしらが追っていた奴の幽霊の話から、
その鏡に問題があるのは分かるんですが――」
自分もどうすべきかよく分からないと答えた。すると玲が
「もし何でしたら僕が引き取って調べますが、
ただ勝手に持って行くのはまずいので、
何か警察の協力とかあると嬉しいんですが」
と提案すると、滝沢は「おー」と何やら驚いた表情をしながら声を出し、「ほな、こうしましょか...」と言ってある案を出した。それは、やはりここに洋服を脱ぎ捨てた人物は入口にいた誰かによって拉致されたが、どうやらその時に鏡の縁にある複雑な文様の所を触れた可能性があるため、科捜研で指紋を調べるために持ち出したい、と言うことを提案した。
「ただですな、長いこと持ち出す訳には
いきまへんからな、ある程度過ぎたら
返さなあきまへんけど、宜しいでっか?」
と滝沢は玲にそのように尋ねると、玲は「はい、それでお願いします」と答えた。ちなみに玲は、その鏡を返すつもりはなく、その時は召喚した鏡を返すことにしている。バレル型で召喚すれば召喚解除しない限り残り続けるし、もし仮にある時突然鏡が無くなっても、自分達が疑われる心配はないと睨んでいる。
早速、3人はその部屋を後にして、そのままビルの管理室に向かった。そしてビルのオーナーの連絡先を聞き出した滝沢が早速問題の部屋にある鏡の件を電話で伝えると、捜査協力であればと言うことで快く持ち出しの許可を得ることが出来た。そこで3人は再び鏡のある会議室に戻り、玲がその鏡を外そうと手を伸ばした時、滝沢が
「最神さん、一応建前上、
これせなあかんからね!」
と言って白い手袋をポケットから取り出した。流石は現役の刑事である。いつ何時もそのような小道具を持ち歩いているようだ。そこで玲も鞄の中から手袋を召喚して取り出した。と言ってもどこにでもある軍手だが、それでも問題ないということで玲は鏡を外しにかかる。だが、玲は何やらまごついてしまう。そんな時に滝沢が、
「最神さん、こういのうはですな、
ここをこう持ち上げると――」
と言いながら持ち上げると、直ぐに鏡が外れた。どうやらフックに引っ掛かっていただけなのだが、ご丁寧に4つの角の所にフックがあったようで、それでガッチリと固められていたのだった。
さて、折角取り外した鏡を玲はどのようにして持ち運ぶつもりなのか?実は安易に転移させればと考えていたのだが、いざそうしようにも、滝沢がこの場に一緒に居るためにそう簡単に転移させる訳にはいかない。その時滝沢が「ちょっと待っててもらえまっか?」と言って部屋を出て行った。10分程すると、滝沢は風呂敷を手に戻って来た。そして
「この風呂敷っちゅうのは、
ホンマ便利でしてな。こうやって――」
と言いつつ、その場で鏡を包みだした。そして見事に鏡全体を覆うことが出来た所で、
「ほな、最神さん、
これお願いしても宜しいでっか?」
と尋ねるので、玲は
「はい、わかりました。こちらで調べまして、
何か分かりましたらご連絡します」
と伝えた。そして3人は鏡を持って滝沢の車に戻ったのだが、丁度昼過ぎだったことで、3人は近くの商店街にあるお好み焼き屋に入ることにした。そしてそれぞれが頼んだお好み焼きが焼きあがるまでの間、玲はこの事件がどうなるのか気になって滝沢に尋ねた。すると
「ええ、お蔭さんでこのまま
闇に葬られることはなくなりました」
と滝沢は上機嫌に答えた。どうやら自分達が追っていた今回の消失した人物が本ボシではなく、彼が口にした協力者が実行犯である可能性が出たことから、その協力者に関する裏付け捜査を今行っているというのだ。そしてこの降霊術による捜査に関連して、滝沢は玲とかすみにあることを尋ねた。それは
「今年の5月の連休後に、東京の方で
何やら未解決事件がぎょーさん動き出しましたが、
あれって、お2人が関係してはるんでっしゃろ?」
とほぼ事実を突き止めて、後は吐くだけだぞ、と言わんばかりの勢いで玲とかすみにそう問い掛けた。もっとも2人にそれを隠す理由はないため、
「ええ、警視庁に顔見知りの刑事さんがいますので、
それで協力したのは事実です」
と玲が代表して答えた。すると滝沢が
「ほな、未解決事件もさっきの降霊術でっか、
あれで解決できるっちゅうことでんな?」
と確認の意味を込めてそう尋ねたので、玲はそのまま「はいそうです」と答えた。その時滝沢は腕組みをして考え出すのだが
「実はこちらにも未解決事件があるんですが、
それについて協力頂けるんですやろか?」
と何やら遠慮がちに尋ねるので、これにはかすみが
「勿論、無料奉仕は無理ですけど、
無事解決した時は報奨金を支払ってもらえれば
問題ないですよ」
とニコニコとしながら滝沢に答えた。
ところでなぜ滝沢は玲とかすみが東京での未解決事件に関係していることを知ったのか?
「実はでんな、まあご存じかと思いますが、
あそこの一課長はわしらと同郷人でっしゃろ」
とかすみが「おっちゃん」と呼ぶ捜査一課長とはどうやら横の繋がりがあるようなのだ。もっともそれは非公式な繋がりと言う感じであるが、そこから玲とかすみの関与を知ることになったのだという。更に
「そのうち、他の県警からも
応援要請が来るんちゃいますか?」
と何やら仄めかすのだが、後日幾つかの県警から非公式な応援要請が来たのは事実であり、それに伴いM Mの収入が増えたことでかすみは上機嫌になったのは言うまでもなかった。
お腹を満たした玲とかすみは、その後大阪駅まで滝沢の車で送ってもらい、そこで別れることになった。ただし玲はと言うと、今は両手で鏡を包んだ風呂敷を持っている。それを何とかしたいのだが、2人で暫く歩いていた時、前方にコインロッカーを目にした。すると玲が
「かすみ、一番大きなコインロッカーに
預けよか?」
と玲はかすみに伝えるが、何でわざわざコインロッカーに鏡を預けるのか分からないかすみは、怪訝な表情を浮かべる。そこで玲がかすみの耳元でその理由を伝えると
「あっ、なるほどな。
それやったらバレへんな!!」
と納得したところで早速かすみはスーツケースの入る程の大き目のコインロッカーを探すことにした。だがなかなか空きが見つからずさ迷い歩く事20分、漸く一つだけ空いている少し古いタイプのコインロッカーを見つけることが出来た。そこで早速そこに鏡を収納するのだが、玲は収納と同時にそれを美土路神社の自分の部屋に転移させた。そしてお金を投入するフリをして鍵をかけるフリも入れつつ直ぐにその場を後にしたのだった。それから2人は、やはり予想通りと言うべきか、かすみは何時ものように新喜劇を予約して2人で難波の劇場に足を運んだ。そしてその日のかすみは上機嫌で美土路神社に戻ったのだった。