召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
美少女降霊術師の心霊事件簿12: 探偵業始めました (第2幕)
さて、M Mのホームページがリニューアルされてから数日後の師走のある日、早速依頼が舞い込んだ。美土路神社の自宅にて夕飯を楽しんだ後、物部かすみがリビングにてそのメールをスマホで確認すると、山陰地方のある町に住む女性からの依頼であった。どうやら娘を少し前に事故で亡くしたというのだが、亡くなる前日、ちょっとしたことで娘と口論となり、娘にその件で謝ることなく娘が他界してしまった。そして丁度娘の四十九日法要が近いことから、あの時の事を何とか娘の霊に会って謝りたいというのだ。そこでかすみは早速訪問する日時を調整し、今週末の土曜日の午後にお邪魔すると伝えた。そして当日は、かすみ1人で向かうことにしたのだが、これは大人数でお邪魔しても迷惑であろうとのかすみの判断である。
「まあ、かすみ1人でも大丈夫だとは思うけど、
またあの時の連中みたいなのが
待ち伏せしていないとも言えないから、
用心に越したことは無いよ。
もし何か手助けが必要となったら
僕と神室さんに連絡くれれば直ぐに行くからね」
「うん、わかった。まあ、確かにあん時も、
まんまと呼び出されて拉致られてんけどな、
一応ガスマスクは直ぐに召喚出来るように
用意してるから、多分なーんも心配ないと
思うねんけど」
と最神玲とかすみは、そんな会話している。すると神室霊華がキッチンから戻ってきて、
「それでも師匠、油断はいけませんよ。
何時も冷静でいてくださいね!」
と心配症からか、ついかすみを可愛い妹として過保護に見てしまう。かすみは苦笑いを浮かべるも、神室霊華の心配する気持ちも十分過ぎるくらいに分かるので
「有難うな、霊華さん。
勿論油断はせぇへんから安心してや」
と答えた。
週末土曜日を迎えた何時もの別荘では、かすみが何時もの制服に着替え終えて、今はリビングの大型スクリーンに大好きな新喜劇の映像を投影して楽しんでいる。そして玲と神室霊華がそれぞれ離れから母屋に戻って来た所で、かすみはスクリーンを元に戻して、早速出掛けることにした。
「ほな、行ってくるな!」
「無理はすんなよ」
「気を付けて行ってらっしゃい」
とかすみは2人に見送られながら、目的地に向かって転移した。
かすみは、山陰地方のの小さな盆地に佇むある町にやって来た。そこは古くから栄えた城下町のようで、街の郊外には城跡が残されたりしている。また鉄道も通っているため、意外と交通の便は悪くない。そして事前の調査では、その町の郊外にある山の麓に小さいながらも神社があることを確認していたので、かすみはそこを転移先に選んで転移した。そして通りに誰もいないことを確認すると、その場に自律型のレンタカーを召喚した。早速運転席に乗り込んで行き先を伝えると、車は勝手に動き出した。
“そう言えば、最近運転席に座ることなかったなー”
確かに殆どの場合、隣で一番弟子の神室霊華が運転していたので、かすみの運転する機会は無くなったのだが。そんなことを考えながらハンドルを握りつつ、目的地まで車を走らせること10分、メールに書かれていた住所と思しきアパート前にやって来た。そこは鉄骨モルタル造りのアパートで、築年数が新しく外観は洒落た印象を与える。早速かすみは近くの空き地に車を停めて、そのアパートの1階の105号室の前にやって来た。そしてインターホンを押して来意を告げると、メールで依頼したと思われる女性がドアを開けた。確か申込みフォームには年齢は50代半ばとあったのだが、心労のせいだろうか、かなりやつれており、また化粧をしていないためか顔の皺が目立つため、どう見ても更に年齢が上に見えてしまう。それでもかすみは改めて来意を告げると、その女性はか細い声で「どうぞ、よろしゅう頼みますけぇ」とかすみに伝えた。
かすみは中に入ると直ぐに奥の部屋に通された。そこには仏壇がなく、ただフローリングの床の上に台が置かれており、台の上には白い布が敷かれて簡単な祭壇がえられていた。そして祭壇の上には亡くなった娘の遺影が飾られいる。遺影の女性はにこやかな表情でこちらに向かって手を振っている。女性に尋ねると、どうやらでどこかに出掛けた時に撮った記念写真だという。その笑顔の女性は、自分の幸せな感情を溢れんばかりに前面に出して明るく生き生きした表情を母親に向けており、それだけ見ても普段から本当に仲の良い母娘であったのだろうと思われた。そのためか、ちょっとしたいのせいではないが、その後直ぐに娘が不慮の事故で他界したという事実は、母親に一体どれくらいのダメージを与えたか、恐らく誰にも想像できないだろう。
そんなことを思いながら、かすみはその場で正座して遺影に向かって手を合わせた。そして直ぐに改めて自己紹介をし、こちらで降霊術を行うことで間違いないかを確認した。「はい、お願いします」とか細い声で女性は答えてから、ふとその場で立ち上がり、祭壇の横に置かれていた白い封筒を手にして元の位置に戻って来た。そしてそれをかすみに差し出して「ほいじゃ、これで頼みます」と伝えた。かすみはその封筒に手を付けず、女性の目を見て
「こちらは、ちゃんと娘さんが
降霊された時に頂戴します。
もし降霊されない場合などは、
受け取りません」
なのでそれまではそちらで預かってください、と伝えた。女性は一見不思議そうな表情を漂わすも、直ぐに「分かりました」と言って、その封筒を元の場所に戻した。それを見届けたかすみは、これから降霊術を行うことを伝え、一番確実に降霊できる遺骨を使うことを提案した。女性は「はい、それで頼みます」とか細い声でそう答え、その後かすみは祭壇に安置されている骨壺を祭壇の前に敷かれている座布団の上にそっと乗せた。そして何時もの降霊召喚門を設置してお出迎えの術式を加え「召喚」と呟いた。すると、どうやら本人の霊体が降霊されたのを目にしたところで、鞄の中から霊視グラスを取り出し、それを女性に渡した。女性は何やら不思議な眼鏡を手にして、思考を無くしたように茫然とそれを見続けているが、かすみが「それをかけたら分かりますよ」とだけ伝えて、漸く霊視グラスを掛けた。すると
「えっ?えっ!?えーー!!」
と恐らく今日初めて、その女性は人としての感情を表に出して叫び声を上げた。そして直ぐに「あああ、なんかね?」と声を震わせながらも目の前の霊体に声を掛けた。すると、その霊体が
「・・・お、か、あ、さ、ん」
と女性に向かってそう呼びかけた時、その声に思わず反応したのか、女性はその場で泣き崩れた。そして「茜、茜、茜...」と娘の名前を呼び続けながら、娘の霊体に抱きついた。
その後何とか落ち着きを取り戻した女性は、娘の霊体に口論の件を謝罪した。娘の方は全く気にしておらず、少し笑顔を見せながら母親のやつれ具合を心配している。霊体で無ければ、そこには普段の母娘の会話があるだけだった。そして少しずつだが元気を取り戻した女性は、先程の元気のないか細い声とは打って変わり、今は心の底から嬉しそうな表情を湛えてかすみにお礼を伝えた。そして、祭壇に供えてあった封筒を再度かすみに渡した。かすみは遠慮なくそれを受け取り、何時ものお洒落リュックの中に仕舞った。