召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
賑やかな新年会 (後編)
物部かすみと神室霊華がキッチンに向かい、蒸したてのもち米を入れた容器を手にして外に出てきた。そして最神玲が記念撮影前に雪かきをした地面には、既にお湯で温められた臼が置かれており、そこにかすみは蒸したてのもち米を投入した。それから玲がを手にしてもち米を潰し始める。そして準備が整ったところで餅つきが始まるのだが、早速かすみが手を上げて自分が杵を持つという。となると合いの手を誰がするかだが、直ぐに神室霊華が買って出た。そして先ずは師弟による餅つきが始まった。お互いに振袖が邪魔にならないように紐を召喚してけをする。そしてかすみが「おりゃー」と勢いよく杵を臼の中についていく。そして何回かかすみがついたところで、その後つき手をラハニに交代すると、昨年の経験を生かして、器用に餅つきをこなした。そして次にRINAが襷掛けをして杵を持ってつき始めるのだが、餅つきの経験がないため、杵を重そうに持っている。
「流石に、餅つきって難しいですね」
と溜息交じりにそう呟くと、かすみが早速コツをアドバイスする。
「餅つきってな、大きく振りかぶると
メッチャ体力使って疲れるねんな。
そやから、こういう時はやな――」
膝を軽く曲げて腰を落とすこと、そしてあまり振りかぶらずに体重を使って体を前に移動させる感じで振り下ろす。そうすると楽にできる、と言うことを実演しながら説明した。RINAは早速かすみのように膝を曲げて態勢を低くして、前に移動する感じで杵を振り下ろした。すると
「うわっ、メッチャ楽に出来ました。
かすみさん、ありがとうございます」
とニコニコしながらかすみにお礼を伝えた。そしてRINAが何回か餅をついたところで、その後は神室霊華がもちをつくことになるのだが、合いの手は「じゃあ、僕がやるよ」と言って玲が買って出た。するとかすみは、
「霊華さん、絶対に玲の手に
杵を落としたらあかんで、
絶対に落としたらあかんで!!」
とニヤニヤしながら指示を出す。だがこれは指示や忠告ではなく、いわゆる前振りである。要するに「押すなよ押すなよ、絶対に押すなよ」のあれと同じである。そして神室霊華は、かすみの指示が前振りであることを見抜いており、かすみに向かって
「師匠、その手には乗りませんよ!」
と言いながら、早速玲と2人で餅つきを始めた。何やらテンポよく餅をつく2人を目にすると、まるで「何か夫婦で餅をついているみたいに息ピッタリですね」とRINAが感想を口にするように夫婦の餅つきと感じてしまう。すると、神室霊華は思わず顔を赤くしてしまうのだが、幸いにも外の空気がひんやりしているため、外に出た時点で既に赤みを帯びた顔色をしており、誰にも心の動揺を気付かれることはなかった。
さて餅が見事につきあがったところで、合いの手の玲は、そのまま臼の中にあるつきたての熱々の餅を、恐る恐る手を差し入れて、一気に持ち上げた。それをすぐ隣に置いてあるボールに移すと、早速かすみはそのボールを室内に運んで行った。そして全員別荘内に戻り、ダイニングに置かれているボールから一口サイズの餅を千切る作業を始めた。
「なんか、こうやって皆で作業するのって、
結構楽しいですね!」
とRINAは上機嫌で餅を千切って丸めている。するとかすみが
「せやねんな。ただな、これ結構熱いから
気ぃつけなあかんねんけど......あっつ!」
と早速言った先から右手を勢いよく振って冷ましている。かすみはよそ見しながら丸めていたため、餅の内部の熱々の部分を知らないうちに触れてしまったようだ。すると玲が
「全く、かすみ。よそ見せずちゃんと見ないと、
そのうち大火傷するぞ!」
と忠告するが、勿論かすみは玲の忠告はガン無視である。そんなかすみの様子に対し、神室霊華が苦笑いを浮かべるが、直ぐに
「師匠、玲さんの仰る通りですからね。
十分に気を付けてください」
と神室霊華から忠告を受けると、こちらは素直に従うのだった。かすみは、どこまで玲に冷たいというか、素直になれないのか。
餅が出来たところで、いよいよM Mの新年会が始まる。今年もリビングの一角にが設けられ、既にお節料理がテーブルの上に並べられている。そしてそこにかすみと神室霊華がお盆に雑煮を入れたお椀を載せてやったきた。今年もかすみの地元の白味噌仕立てと神室霊華の地元のすまし汁仕立ての二本立てである。するとRINAは2種類の雑煮を見て
「へぇー、白味噌って初めて見ました。
噂には聞いていたんですが......」
と言うことでRINAは白味噌の雑煮を早速手にした。RINA以外のメンバーもそれぞれ好きな雑煮を選ぶのだが、昨年同様、玲とラハニは両方をチョイスした。今年も何やら食べ比べをするつもりのようだ。それを見ていたRINAも「あっ、私も食べ比べしたいです」と言って、すまし汁の方もチョイスした。そして全員が揃ったところで、まずはM M代表のかすみからの新年の挨拶である。
「みんな、明けおめやで。
今年も気合入れて仕事に励んでや!」
と何やら従業員をこき使うブラック企業の社長のようなセリフで挨拶を行った。そこですかさず、玲がその点に対しツッコミを入れた。すると玲のツッコミに気をよくしたのか
「まぁ、あれやな、気合い入れるのは
玲だけやねんけどな!」
他のメンバーはちゃんと仕事しているから大丈夫やで、と言う感じで捕捉するのだが。これは何時ものかすみの弄りと言うべきだろう。そしてかすみの挨拶を受けたところで早速お節料理に舌鼓を打つことになった。するとRINAが、白味噌仕立てのお雑煮を味わうと、
「へぇー、これって甘いんですね。
なんかお汁粉のような感じですけど」
でもこんなに豪華な具材は入ってないけどね、とニコニコしながらお雑煮を堪能した。ちなみに、雑煮の中の具材は、どれも共通で、鶏肉、かまぼこ、小松菜などであるが、更に今年は大粒のイクラも添えられている。勿論、イクラは神室霊華の実家の紀家から持ってきた食材である。
RINAの感想を耳にしたかすみが、RINAに
「そういえば、RINAさんって、
どこの出身なんですか?」
と尋ねた。するとRINAは
「私は、四国の愛媛なんですよ。なので、
すまし汁タイプになりますね。ただ――」
こんなに沢山の具材を入れることはなく、餅と青野菜を入れるだけの至ってシンプルな雑煮だという。するとかすみが
「そういえば、愛媛県って行ったことないな。
ほな今年のうちらの慰安旅行、
そこにせぇへんか?」
とかすみが突然今年の慰安旅行先を決めてしまった。とは言え、玲は別に異存はない。むしろ早い段階で決めてもらう方が、後はどこに宿泊するかを決めるだけなので楽ではある。そして神室霊華もラハニも、皆で楽しめれば何も問題ないと考えている。そんな時にRINAは
「えっ、皆さんの慰安旅行ってあるんですか?」
と尋ねるので、玲が毎年かすみの誕生日に合わせて6月に慰安旅行をしていることを説明した。ちなみに、
「この仕事を始めた最初の年は慰安旅行は無かったんだ。
その次の年から僕とかすみの2人だけで
慰安旅行に行き、その次の年から神室さんが参加して、
昨年からラハニさんも加わったんですよ」
と言うことも併せて伝えた。するとかすみが
「RINAさんは参加できそうなん?」
と尋ねると、RINAは近くに置いたバッグの中からスマホを取り出した。そしてスケジュールを確認すると
「うーん、6月は大阪でコンサートがありますね。
ただ、週末だとこの日は大丈夫っぽい感じです」
と言って、その日を皆に伝えた。すると玲が
「まあ、かすみの誕生日にする必要はないから、
それで問題なければ、その日程で
どこかよさそうな旅館を調べておくけど」
と提案するが、4人の女性たちに否はない。よって、今年のM Mの慰安旅行は、場所と日にちが確定した。その後お節料理を堪能した5人の若者たちは、少しの休憩を挟んでから、正月太りにならないように運動を始めることにした。と言っても彼らがするのはあれであるが...
「今年は、絶対かすみの顔を
真っ黒にしてやるからな!」
「はぁ?玲さん、誰に勝負挑んでんやろなー」
と早速玲とかすみの間には火花が飛び散る如く不穏な空気が流れるが、今から行われるのは、お正月と言えばこれ、羽根つきである。昨年は玲とかすみは墨まみれになってしまったが、今年は相手を徹底的に叩くつもりで意気込んでいる。一方残りの女性人たちは、この2人に構うことなく、それぞれが羽子板を召喚して羽根つきを楽しんでいる。そして玲とかすみはと言うと――
「くそっ、玲の奴、来年覚えておけよ!」
「そっちこそ、来年は返り討ちだからな!」
と2人は悔しそうにしながら、相手への牽制は忘れない。そんな2人の姿だが、玲はほぼ予想通りと言うか、昨年同様、いや昨年よりも酷く、顔面はほぼ真っ黒である。これはかすみが、巨大な×を描いたのを皮切りに、大小さまざまな〇や×を描き尽くしたからだ。一方のかすみはと言うと、こちらは玲が意図的にあることをしていた。それは
「ぷすっ、か、かすみ、その半分顔、
凄く、すごーく素敵だよ。ぷすっ」
と玲が笑いながらかすみに指摘するのは、顔の左半分だけ真っ黒にされていたことである。するとかすみも負けじと
「玲、お前の真っ黒より、
こっちの方がオモロイやろ。
ほなうちの勝ちやんか!!」
ともはや羽根つき勝負ではなく面白さ勝負となってしまった。そんな2人を横目に、3人の女性たちは穏やかに羽根つきを楽しんでいた。それでも一応、申し訳程度に顔に墨が塗られているが、そこはご愛敬であろう。RINAのファンが見たら、増々RINAを好きになりそうな雰囲気を湛えていたりする。そしてもちろんこの時の映像はちゃんと撮られており、後で見返して皆で大笑いすることになるのだった。その後、定番の福笑い、ではなく玲笑いで盛り上がり、正月遊びを存分に楽しんだ5人は、夜遅くまで何やら話が盛り上がり、その後は露天風呂に入って疲れを癒してから眠りに就いたのだった。