召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
月で餅をつけるか? (第2幕)
さてRINAの馬鹿笑いが収まったところで、ではどれを着たいか選んでもらうことになった。
「ちなみにな、このグレイ仕様は
3着しかあらへんねんよ。せやから、
2人は別の物になるけど、勘弁してや」
と物部かすみが補足説明をすると、ラハニが「ドウシテ3チャクシカナイデスカ?」とかすみに尋ねるので、かすみはここにいる3人分しかないからと言うことを説明した。ただそれだけだと説明不足で混乱するから、玲は詳細は省きつつ、昨年の夏に月に行ったとき、そこで宇宙船を見つけたこと、そしてその宇宙船に乗ったらある星に連れていかれ、そこで渡されたのがこの宇宙服だ、と言うことを補足した。すると案の定、ラハニとRINAは目を見開いたまま首を横に振り続けた。どうやら「そんなの嘘でしょう!」と否定したい気持ちが働いているようだ。
「どのみち、後であのを
見に行くんやろ、玲?」
「うん、場所は分かってるからいつでも行けるけど、
まだあそこに残っているかなー」
「でも、あの時のグレイさん達は、
結局持ち帰るのを諦めてましたよね」
とかすみと玲と神室霊華の3人は、昨年見つけたUFOのことを話し合っていた。するとRINAが、神室霊華に向かって
「霊華さん、本当に、本当に、ほんとーに、
UFOってあるんですか?」
と真剣な眼差しで念を押して尋ねた。こういうことに対し、神室霊華は絶対に嘘をつかないとRINAは確信していた。すると神室霊華は、RINAの目をじっと見つめて、「はい、ありましたよ」と真剣な表情でそう答えた。RINAは早速腕組みをして考え始めた。
霊華さんがあるという以上、
そこにあるのは間違いないんだな。
だとすると、この宇宙服も
間違いないということだろうな
と何やら自分の中で結論が出たのか、RINAは
「私は、そのグレイのコスプレ、
じゃなくて宇宙服を着てみます」
と伝えた。するとラハニもグレイの宇宙服に興味津々なようで、
「RINAサンキルナラ、ワタシモキタイデス」
と決まった。後一着だが、かすみが「ほな、うちが着てもええか?」と玲と神室霊華に尋ねるが、2人とも特に固執していないため、「かすみの好きにしたらいいよ」とだけ答えた。そして玲と神室霊華は、自分のグレイ仕様の宇宙服を取りに一度離れに戻って行った。その間に、早速RINAがグレイ仕様の宇宙服を着ようとするのだが、その時
「そういえば、かすみさん、
これってこのまま着ても大丈夫なんですか?」
と今のスウェットの上下のままで問題ないかを尋ねた。するとかすみは
「問題ないで。うちらが行ったときは、
Tシャツに短パンやってんけど、
ぜぇーんぜん、暑くも寒くもなかったわ」
未だにどのような素材でできているのか全く分からない、とRINAにそう答えた。RINAはさてどうしようかと考え、結局スウェットを脱ぐことにした。そこでファスナーに手を掛けたとき、玲と神室霊華が戻って来た。 やっばー、玲さんの前で服脱ぐところだった とヒヤリとしたが、そんなRINAの様子に気づいた玲は、
「僕は離れで着替えてくるから、
皆さんはここで着替えても大丈夫ですよ」
と言って、グレイ仕様の宇宙服をその場に置いて再び離れに戻って行った。そしてリビングに残った女性陣はトイレを済ませた後、早速着替えを始めたのだが、かすみはその場で下着だけになりその上に直接グレイ仕様の宇宙服を着用した。かすみに関しては慣れたものである。その様子を見ていたラハニとRINAもかすみの真似をしてその場で下着だけになり、そのままグレイ仕様の宇宙服に袖を通した。すると、
「うわっ、これマジですごく伸びるんですが、
破れたりしないですよね?」
とかすみに不安げな表情でそう尋ねるが、かすみは「ぜぇーんぜん、問題ないで」と答えるだけであった。確かにかすみはそのまま着ているから大丈夫なのだろうと思うのだが、それでも不安が隠せないRINAである。 あっちにした方がよかったかな と後悔するのだが、そのもう一つの防護服っぽい宇宙服を神室霊華は慣れた手つきで着用した。そこでRINAは神室霊華の着ている方にしようかな、とかすみに相談を持ち掛けたのだが、
「うーん、うちやったら、
間違いなくこっちを選ぶな。
と言うのもな――」
グレイ仕様の宇宙服は生命維持装置を付けずにこれとヘルメットだけで呼吸が楽にできるというのだ。そのため「動きやすさから言うと、だんぜんこっちやな!」と太鼓判を押すのだ。一方神室霊華の着用する宇宙服は、本格的な生命維持装置は不要だが、それでも酸素ボンベを背負う必要があるため、
「玲が言うには、1時間に1本背負っている
ボンベを交換しないとあかんから、
長時間の活動には何本か交換しながら
使う必要があるんやて」
と言う説明をRINAに行った。するとRINAは「やっぱ、自分は、こっちにしておきます」といって、グレイ仕様の宇宙服を着だした。そして女性全員が着用を終えたところで、玲が戻って来た。
玲はそのまま外に出て、まずは前回もお世話になったかまぼこ型シェルターを召喚した。次にその隣でボンベを何本かと充填装置を召喚し、そこで空気を充填し始めた。RINAは玲が何をし始めるのかに興味を持って一緒に外に出てきたのだが、その時
「うわっ、こ、このスーツって、
マジ凄くないですか?
全然寒く感じませんよ」
と薄っぺらい素材なのにどうして寒くないのか、不思議な表情を漂わせながらそんな感想を口にした。玲は
「そうなんですよね、
未だによくわからないんですよ、
その宇宙服の素材がね。
それとね、かすみから
聞いているとは思いますが――」
酸素ボンベが不要なのもよくわからないと玲は答えた。そして最後に
「地球では再現できない
全く未知のテクノロジー
と言うやつですよね、ははは」
と笑うしかないようだ。その後RINAは折角の機会なので玲に色々と聞いてみることにした。
「玲さん、玲さんってどこまで
転移できるんですか?もしかして
火星とか木星までいけるんですか?」
「うーん、火星が最接近する時であれば
火星までは行けますね。ただね――」
往復できないから、恐らく火星で飢え死にするだろうと、笑いながらそう答えた。すると
「えっ、な、何でですか?」
とRINAは玲の言葉を不思議に思ったのでそう尋ねると、玲は直ぐに帰ることが出来ないため、召喚エネルギーの回復を待つことになるのだが、それが何時終わるか分からないこと、その間に食料や水が底をついてお陀仏になるのではとの懸念を伝えた。すると
「えっ、じゃ、じゃあ、
楽に往復できるとなると
どこになるんですか?」
と再び玲に尋ねると玲は、
「うーん、多分ね、最接近したときの金星、
あそこだったら往復は可能だね」
と答えた。するとRINAは何やら興奮して、
「えっ、ま、まじっすか?そうなると、
人類初の金星到達者になるんじゃないですか?」
と若干興奮しながら玲にそう問いかけた。すると玲は
「うーん、どうだろうね。
もし召喚術が一般的になったら
そうなるかもしれないね。でもね――」
金星に行くとなると、高温と硫酸の雨から身を守る必要があり、結局シェルターに閉じこもりっきりになることを指摘した。そして
「そうなると、結局、金星に降り立ったかどうか
怪しく感じるけどね」
と笑いながらそう答えた。RINAも笑顔で「そうですよね。外に出れなければ意味ないですよね」と答えるのだが、それでも人類初と言う偉業は達成できるのではと指摘した。ただし玲が指摘するように、そのためには召喚術が一般的にならないと意味がない訳で、
「僕が生きている間は、
多分無理じゃないかなー」
と溜息交じりにそう答えた。その後、RINAは宇宙人との遭遇について玲に尋ねたりして楽しい時間を過ごしたのだった。