召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
なぜ物部かすみは拉致されたのか? (第3幕)
物部かすみが行方不明になった夜が明けて暫くすると、かすみが突然別荘に現れた。最神玲と神室霊華は、1人になると心配の余り変な事を想像してパニックになることを恐れたからか、結局2人でリビングのソファーに横になって朝を迎えた。そんな状態のリビングにかすみが「ただいま」と呑気な声で挨拶しながら突然現れたため、その姿を目にした神室霊華は、
「し、師匠!! 無事だったんですね!!
良かったー!!」
と泣き叫びながら、かすみに抱きついた。玲も2人の傍に駆け寄って、2人を包み込むように抱きしめた。かすみは神室霊華に抱きつかれるまま、なす統べなくただじっとしていたのだが、それでも2人に迷惑をかけたことに対して申し訳ないと思いつつ、彼らがどれだけ自分の事を心配していたのかを痛感した。そして神室霊華は涙でぐちゃぐちゃになった顔をそのままに、かすみに何があったのかを尋ねた。かすみは
「その話もするねんけど、
まず何か食べる物あらへん?」
昨日の昼から何も口に入れてないため腹ペコであることを訴えた。そこでようやく笑顔を取り戻した神室霊華は、急ぎ食事の支度をしにキッチンに向かった。そしてかすみは、ダイニングテーブルの椅子に腰を落ち着けて、これまでにあったことを2人に話し始めた。
「かすみ......本当に誘拐されていたんだね?」
「せやねん、ただな、まだ誘拐犯とは
接触してへんねんけどな――」
お腹を満たしてから一度元の監禁場所に戻り、そこで誘拐犯を尋問することを2人に伝えた。すると神室霊華が心配し出して、自分達も一緒に手伝うことをかすみに訴えた。だがかすみは、神室霊華の申し出に対し首を横に振り、
「霊華さんの申し出は有難いねんけど、
多分うち1人でも対応は出来るねんな。
ただな、念のために――」
2人には近くで待機してもらえないか、と逆提案した。とりあえず、かすみが監禁されていた場所は分かっているため、かすみには念のためにカフリングを持って行ってもらい、自分達は
「あそこの廃校にでも待機しているかだなー」
と玲は呑気な感じでそう呟いた。だがそれよりも、玲としては気掛かりな事がある。それは、
「そのかすみの見つけた隣の部屋の装置って......
何だろう、普通の誘拐事件にはそぐわないよね。
ちなみに、その装置って昔使われていたまま
残されているとかじゃなかったんだね?」
「うん、そやで。近くにもあったしな、
何やら実験でもしていそうな感じやったわ」
「えっ、ま、まさか、師匠を使って
何か実験しようとしているのでしょうか?」
と神室霊華は再び心配になってかすみに尋ねるも、かすみは首を横に振りながら分からないとだけ答えた。ただし、
「まあ、その場で連中の魂を分離して話聞けば
すべて明らかになる筈やねんけどな」
なのであまり心配していない、とかすみはニコニコしながらそう答えた。そしてかすみは、空腹を満たせたところで、「ほな、ぼちぼち戻るとするわな」と言って転移しようとした時、玲と神室霊華も一緒について行きたいと言い出したため、仕方なくかすみは2人を連れて戻ることにした。
「まだ、誰も戻ってきてないみたいやねんけど...」
とかすみはそう呟きながら、ストレッチャーに横たわるかすみの身代わりを召喚解除しようとした。すると暗視ゴーグル越しにそれを目にした玲と神室霊華は、
「かかか、かすみ、それってかすみなの?」
「師匠、師匠ってこんな感じでしたか?」
と2人は唖然とした表情でストレッチャーに横たわるかすみを見つめていた。かすみは憮然とした表情で
「そんなん、当たり前やろ!
うち以外の誰に似てんねんな」
と切れだすのだが、玲は明らかに首を横に振り、神室霊華はそこまで失礼な態度を見せないが、下を向いて黙ってしまった。そんな2人、特に玲の態度に対し
「玲、なんやねんな。その態度は?」
と文句を言いながら早速手にはマキザッパを召喚した。すると玲も負けじと、
「そそ、そこに横たわっているかすみって――」
背が大きくないか?とかすみに問い掛けた。更に玲は畳みかけるように
「しかも、髪の毛も何やら長い気がするし、
顔もかなり弄ってる感じだぞ!!」
と指摘した。最早、玲は腹をってかすみに現実を直視して目を覚ますように訴えている感じがする。だが同時にこの時の玲は、 あれ?この姿ってどこかで見たことがあるような と思いながら、つい神室霊華の方に目を向けていた。確かに雰囲気は神室霊華に似ていなくもないが、だがもっと記憶の奥底に眠っている何かに似ていたりするのだった。
一方、かすみはと言うと、玲の無礼な態度に怒りで顔を真っ赤にして、手にしたマキザッパで思いっきり玲を数発シバキだした。そして
「れれ、玲、しし、失礼にも程があるぞー!!」
と叫ぶと同時に、もう片方の手にもマキザッパを召喚し、更に数発マキザッパの二刀流で玲をシバキ倒したのだった。流石の玲もマキザッパの二刀流によるシバキの猛攻に耐えられず、その場にってしまった。そして更にかすみの猛攻が続こうとした時、神室霊華が何とか仲裁に入り、それ以上の制裁が玲に加えられるのを何とか食い止めた。だがかすみの怒りは収まらないようで玲を眼光鋭く睨み付けていたのだが、その時かすみの監禁場所の外の部屋で物音がしたため、止む無くいがみ合いは中断となった。そしてかすみは急ぎ自分の身代わりの召喚を解除し、そのままストレッチャーに横たわって自分の両手足と胴体を召喚物で固定した。一方の玲はというと、神室霊華の手を借りて何とか立ち上がり、かすみにしっかりしばかれたところを摩りながら、神室霊華を伴って近くの廃校に転移した。
かすみがストレッチャーに横たわってから数分後、部屋の扉が開いて2人の人物が現れた。そしてかすみが横たわるストレッチャーの傍にやってきて、入口から差し込む隣室の明かりに照らされたかすみを見下ろした。かすみは寝たふりの演技をし続けるのだが、そんなかすみに気づくことなく、年配の方が若い方に「連れていけ」と指示を出した。すると若い方がかすみの枕元に移動して、そのままストレッチャーを押して隣の部屋に移動させた。そこでかすみは、「うっ、うぅ」と呻き声をあげて今起きだしたという演技をし出した。するとストレッチャーを押している男が、「お父さん、起きたみたいですよ」と年配の男に向かって声をかけた。どうやら2人は親子のようだ。すると父親の方は、そんなことわざわざ言う必要はないと言いたそうに、少し苛立ちながら
「分かっておる、どうせ何もできないから、
いつものように処理するだけだ」
とぶっきらぼうに答えた。そこでかすみは、
「お、お前ら、ううう、うちをどないする気や!!」
と驚きと戸惑いを声に含ませる演技をし始めた。ちなみに、この時のかすみは うちって、めっちゃ演技うまない? であった。そんなかすみの演技に気づくこともなく、親子はかすみを隣の部屋の中央部に連れてきた。そしてそこに設置されているヘルメットらしき物をかすみに被せようとしたその時、かすみは親子の魂を分離した。
かすみはストレッチャーから起き上がると、直ぐにカフリングを通じて玲と神室霊華に連絡をした。すると直ぐに2人は戻ってきたのだが、玲は早速、かすみが連れて来られた部屋の様子を興味深げに調べ始めた。玲のそんな様子を苦笑いを浮かべながら見ているかすみの視界には、先ほどまでなかったある物体が目に入った。そこでかすみは、早速その物体に近づいて観察を始めた。それはテーブルの上に載せられたガラスで出来た円筒形の容器であり、直径は10cm位で高さは50cm程だろうと推測された。そしてガラス容器の中には、気体か液体が入っているのか、部屋の明かりに反射した何かが中で揺らいでいるようである。そのガラス容器を不思議そうに眺めていたかすみの傍に神室霊華がやってきて、
「師匠、どうされましたか?」
と尋ねてきた。かすみは神室霊華の問い掛けに対し、この容器が先程まではここになかったことを伝え、この中に何が入っているのか気になったので見ているだけだと答えた。とその時、「うわっ!!」とかすみは驚いて体を仰け反らせてしまった。そのため後ろにあったストレッチャーにしたたかに体をぶつけてしった。
「いててて」とストレッチャーにぶつけた背中を摩りながらかすみは起き上がるが、そんなかすみの挙動に対し神室霊華が「師匠、何かあったのですか?」と心配そうに尋ねながらかすみが起き上がるのを手伝った。するとかすみは、その容器から目を離さずに、
「そそ、そこの容器ん中に、
ひひ、人の顔が現れたんや!」
と今も余りの衝撃からか、その容器から目を離さずにそう答えた。すると、またもや人の顔が現れたのを目にしたかすみは、「ひっ」と小さい悲鳴を上げた。
かすみの悲鳴を聞きつけた玲もその円筒容器の所にやってきた。そして3人でその円筒容器をじっと見つめていた時、またもやそこに人の顔が現れたのを3人は目にした。
「こ、これって......」
と玲は呟くも、そのあとの言葉が続かず、ただ腕組みをして何かを考え始めた。そして暫くしてから、一言
「多分魂だろうか......」
とそう口にした。もちろんその答えは、その場で魂を分離されている2人の人物が持っている筈である。そこでかすみは、年配の方に対しこれが何かを含めて尋問することにした。その結果、玲とかすみはある出来事を同時に思い出し、お互いに見合って、
「こいつらやったんなやな......」
「こいつらが原因だったんだ......」
と口にした。彼らが思い出した出来事、それは――