召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
凶報 (前編)
[らはに しんだ]
その知らせは突然だった。たった6文字の平仮名だけの短いメッセージが、M Mが使うチャットアプリを通じて真夜中の日本に送られてきた。最神玲は、電子メールの着信音とは異なるメロディーを耳にした途端、がばっとベッドから起き上がった。そして机の上に置いてある自分のスマホを手に取り、そのままベッドに腰かけて内容を確認し出した。こんな夜中にメールではなくチャットをするなど、自分たちの仲間の中では今まで経験したことは無かった。時差のある地域に住んでいるラハニ・カヤンですら、時差を考慮して日本時間の日中にメッセージをわざわざ送信する配慮を見せたりする。そう思うと何かしら悪い予感がしなくもなかった。そして――
たった6文字を目にした途端、その破壊力の凄まじさから、手にしたスマホが小刻みに震え出し、更に見る見る玲の顔色が青褪めていく。もっとも真夜中で、明かりは窓から差し込む境内の照明だけであり、しかもカーテンで遮られているため、その表情を確認することは難しい。それよりも、これは何かの悪戯か冗談なのかと勘繰ってしまう。もしそうであれば、が悪すぎる。一応念のために、玲は[これは じょうだんですか?]とメッセージを平仮名で送信した。暫くすると[既読]が表示され、直ぐに[ほんとう]とだけ帰って来た。そこで玲は、送信者が誰なのかを尋ねた。すると[ろどにーです]と返ってきたことで、ラハニの夫のロドニー・カヤンからであることが判明した。となると、これは冗談では全くないし、ロドニーがわざわざこんな悪い冗談をする理由が見当たらない。それに、このメッセージはラハニのスマホから送信されている。これらの事実が一気に玲の心の中に押し寄せてきた時、そこにはラハニの死という現実に直面する。その途端、スマホを持つ玲の手が更に震え出した。そして遂に
「うわーーーー!!!」
と絶叫してベッドから滑り落ち、力が抜けたのか立ち上がることも出来ずにその場にってしまった。
物部かすみは、 なんか音がしてんけど気のせいか と思い、再び夢の中を旅し始めた。だが暫くすると、玲の部屋から物凄い絶叫が木霊した。そのためかすみは、寝ぼけの状態で
全く、あいつ今何時や思うてんねん!!
と心の中で悪態をつきながら、重い足取りで玲の部屋に向かった。
「玲、今何時や思うてんねんな!!」
と玲の部屋のドアを拳で激しくノックしながら、かすみは文句を垂れている。だが中から玲の返事が来ない。ドアノブを回すと鍵がかかっていないため、そのまま押し開けて中に入った。すると、ベッドの下で膝を抱えて蹲る玲を見た途端、心配になったかすみは「玲、どないしたんや?」と声をかけたが、まだ返事がない。だが何か声がするのは分かるのでかすみは聞き耳を立てていると まさか、泣いてるんか? と普段の玲にはない状態に少し動揺し出す。とその時、玲の足元にスマホが落ちているのをかすみは見つけた。そこで玲の傍に近寄ってスマホを取り上げた。そしてそこに表示されているチャットアプリの文面を目で追ったとき、「......う、うそやろ!?」と絶句した。だが送り主のロドニーが嘘でラハニが死んだことを伝える理由が全く見当たらない。そこで
「れ、玲、これ......何かの間違いちゃうか!?」
と玲に確認するのだが、玲はかすみの問い掛けに応えることなく、ただその場で泣き続けていた。そしてこの時、かすみは玲の態度からこれが嘘でも冗談でもなく現実に起きたことであることを確信した途端、自分も「うわーーーー!!」と絶叫してその場にへたり込んでしまった。そしてそのまま声を出して泣き出した。
同じ頃、神室霊華は自宅のベッドに横たわってこれから眠りに就こうとしていた。夕方に美土路神社で師匠のかすみと玲と3人で何時もの様に晩御飯を共にし、その後午後10時から1件の降霊術の予約があるため、2人と別れて自宅に戻って来た。そして降霊術による対話が何やら盛り上がり、気づけば日付が変わる少し前にその仕事を終えたのだ。その後シャワーを浴びて漸く10分ほど前にベッドに潜り込んだところであった。だが先程の降霊術の余韻に浸かっていたのか、なかなか寝付くことが出来ずベッドの上でんでいたとき、サイドテーブルに置いてあるスマホに着信があったのか、無音で着信メッセージを画面に表示してそのまま消えた。
どうせDMか、あるいは仕事の依頼か、
何れにしても明日の朝に確認しよう
と言うことでそのまま目を閉じたのだが、その後立て続けに着信メッセージが表示されたことから、もしかして知り合いかな、と思いつつ、ついスマホを手にした。そしてチャットアプリを開いた途端、わが目を疑った。
「えっ、うううう、うそ。
どどどど、どうして......」
と声に出すがその後が続かない。と言うのは、そのメッセージの内容に驚愕したためであり、その内容の凄さのため神室霊華はそこで意識を失ってしまったのだ。
は、その時間、RINAとしての活動中であった。丁度都内のスタジオにて、次のアルバムのレコーディングの打ち合わせをしていたところであった。夕方から始まったレコーディングは、毎度のことながら日をいで続けられる。無理して続ける必要はないのだが、何やら今日は気分が乗っているからか、そのまま徹夜覚悟で続けている。音楽業界と言うか、RINAの周りの業界人達は、揃いも揃って夜型人間ばかりのため、徹夜仕事を全く苦にしない。そのためか、RINAも知らず知らずのうちに、夜型に改造されつつあった。そして打ち合わせの最中に、テーブルの上に置いてある自分のスマホにチャットアプリの着信音が鳴った。
この音はあの人達のチャットだな?
とRINAは直ぐに発信者が誰なのかを検討つけた。ただし、時間が時間なため、少し奇妙に感じたりもしたのだが。すると暫くして立て続けに着信音が鳴るので、誰かが反応して返信しているのかな、と考え始めた。もっとも自分は今は打ち合わせ中のため、流石に参加する訳にはいかない。なので、休憩時間にでも確認しようと決めた。そして10分程して「RINAさん、休憩にしましょうか?」と言うことで、RINAはそのままテーブルにある自分のスマホを手にした。そして早速チャットアプリを立ち上げたとき、思わぬ内容に目と口をカッと開いたまま動きが止まってしまった。そして「うう、嘘だろう。何かの冗談なの...」と呟いたきり黙り込んでしまった。とりあえず、事情を知っていそうな玲に電話をするも全く出る気配を感じない。そこでかすみに電話したのだが、かすみも応答なし。こういう時に一番頼りになる神室霊華も、深夜を承知の上で電話するも全く出てくれない。一体皆どうしたのかと更に心配し出すRINAである。
くそっ、もし転移術が出来たら、
直ぐにでも確認しに向かうのに......
と思わずにいられない位にRINAは焦燥感に駆られた。とにかくどうなっているのか、誰か教えくれ!! と叫びたくなる気持ちを必死に抑えていた時、タバコ休憩からスタッフが戻って来た。そこで親友が亡くなったという訃報が届いたことを伝え、今日は気持ち的に無理そうなので後日に延期してほしいと訴えた。スタッフも事情が事情だけに、直ぐに隣室で打ち合わせ中のマネージャーを呼んで事情を説明した。そしてRINAはマネージャーに送られて自宅に戻った。