召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
作戦会議
ロドニー・カヤンから、彼の妻のラハニが亡くなったという連絡を未明に受けたその日の夕方、最神玲は差間見町にある美土路神社の自宅で、ロドニーからある知らせを受けた。それはラハニが誰の命令の下で働いていたかと言う内容である。それによると、ラハニはアメリカ軍統合参謀本部のある組織の下に配属されていたという。ただ残念ながら、その目的はロドニーの身分では知ることが出来ないのだが
「まあ、ラハニさんがあそこで
行方不明になったとなると、
多分あの国のあの件と関係があるんだろうな」
と玲は呟いた。ロドニーからの連絡は、ラハニが自宅に置いて行ったスマホにあるM Mが使用するチャットアプリが使われており、内容はM Mの誰でも目にすることが出来る。そして今、自宅のダイニングでは、何時もの3人だけでなく、なぜかRINAも加わった晩御飯となっている。今日は久しぶりのかすみ特製お好み焼きである。このメニューにした理由は、
「こういう落ち込んだ気分の時は、
美味しい料理を食べるのが一番やねん!」
ということのようだ。だが、ここに集まっている4人の若者たちからすると、確かにかすみの作る絶品のお好み焼きは、落ち込んで気が滅入る心を癒してくれる。そんな晩御飯の最中に玲が何気なく呟いた言葉に対し、早速RINAが何か事件があったのかと尋ねた。そこで玲が、7月の丁度ラハニの誕生日会が開催された日にあった出来事をRINAに話した。
「......それで恐らく、アメリカ政府は、
このままだとやばいと思ったんだろうな。
早速その計画を無力化するというか、
もしかしたらあの国の指導者を排除しようとか、
そんなことを考えたんだろうけど――」
恐らくその時点で、当時の国防長官であるダニエル・ヘンドリクソンが反対したのではないかと考えている。だがそのヘンドリクソン長官が辞任した途端、計画は動き出した。
「......それで、ヘンドリクソン長官の
歯止めが効かなくなって
ラハニさんが呼び出された。
そして結果は今回の通り、
と言うシナリオかな」
と玲は自分の考えを披露した。かすみもほぼその通りだろうと思っており、特に驚くことはなかった。神室霊華も玲とかすみが以前アメリカ政府から仕事を請け負ったこと、その結果ラハニと出会ったことは承知している。一方のRINAだが、
「ま、まさか、2人ともそんな偉い人と
繋がりがあったんですね......」
とまずは、アメリカ政府の要人と接点があることに驚いた。するとかすみが、何やら調子に乗って、
「でもな、玲に関してやったら、
あっこのトップにも面識があんねんで。
しかもな――」
寝込みを襲ってマキザッパでフルボッコにしたという話を面白おかしく披露すると、流石にRINAはかすみの冗談かと思って、眉間に皺を寄せて怪訝な表情を浮かべた。勿論神室霊華もこの話は全く知らないし、やはり師匠の何時もの冗談だろうとみていた。ところが、玲が
「まあ、あれは向こうが悪いからね。
CIAを使っていきなりここに来て
僕を拉致しようとしたんだから、
当然その報いは受けないとね」
とかすみの言葉を否定どころか完全に肯定したのだ。神室霊華もRINAも玲がかすみの様に冗談を言うような性格ではないことは分かっているため、彼の言葉に対し目を見開いたまま言葉を失って沈黙してしまった。すると2人の様子を見ていたかすみが
「あーあ、玲、どないすんねや。
2人とも固まったやんか」
とニヤニヤしながら玲を弄り出した。すると玲も、
「いやいや、かすみがそんな話に
持っていくからだよ」
とやり返した。何時もなら売られた喧嘩は値切らず即言い値で買い取るかすみだが、この時は特に玲の挑発には乗らず、代わりに
「ほいで、今回もあいつをボコりに行くんか?」
と何やら興奮した面持ちで玲にそう尋ねた。どうやらかすみとしては、あの男にしっかりと説教したい気分なのだろうと推測された。そして玲は
「まあね、最終的にはあの男が
ゴーサインを出したんだろうから、
その落とし前はつけないといけないけどね」
それもこれも、まずはラハニの復活が先であり、その後の対応になることを玲は伝えた。そしてようやく神室霊華とRINAが何とか復帰したようで、それでも今の玲とかすみのやり取りを聞いていたのか、何やら興奮した面持ちで、2人揃って「私たちもお供します!!」と伝えてきたのだ。
ところが、玲からの反応はと言うと、2人の申し出に対し明確にを伝えた。理由は
「2人の申し出は有り難いんだけど、
一緒に行ったら、間違いなく
2人ともアメリカ本国に対して出禁になるよ」
と言うことであった。玲とかすみに関しては、出禁になっても全く影響はないと考えている。と言うのも、アメリカ本国で事業をしている訳ではないからだ。
「僕とかすみの場合、別に出禁になっても
困らないしね――」
行きたいときに転移していけば何も問題はないのだ。ところが、
「RINAさんの場合、出禁になったら
向こうでの活動は全くできなくなるよ。
そうなると、自分だけの問題ではなく、
恐らく――」
大勢の関係者が被害を受けるだろうし、それよりも
「アメリカにいる多くのファンを
失望させちゃうからね。
やはり、アーティストとしては
それだけは避けた方がいいんじゃないかと、
僕は思うんだ」
と玲はRINAの目をじっと見つめて、自分の考えを伝えた。RINAはいて考え込んでしまう。そして気持ちとしては皆と一緒に行動したいと思うものの、やはり玲の指摘するようにその結果生じる影響は自分だけでなく、ファンやスタッフに対しても及んでしまう。その点に考えが及ばなかったことに対して、自分に腹が立つと同時に、いざと言うときに役に立たない自分にも腹が立つのだった。そんな思いを吐露すると、かすみが
「RINAさんが何の役にも立たへんなんて、
ここにいるうちらは誰もそんなこと
思ってへんで」
とかすみが真剣な表情で伝えると、玲と神室霊華はかすみの言葉に大きく頷いた。そして
「あいつんとこへ行かれへんのは
我慢してもらうけど、ラハニさんの
復活には大いに頑張ってもらわんとな!」
と明るい表情でRINAを元気づけた。RINAは、かすみの心遣いに感謝して
「そうですね、私は自分が出来ることだけを
精一杯頑張ろうと思います!」
と言ってかすみと玲と神室霊華に向かって「これからもよろしくお願いします」と伝えた。
一方の神室霊華だが、玲としてはやはり神室霊華をこれ以上巻き込むべきではないと考えていた。
「神室さんの場合は、恐らく出禁になっても
困ることはなさそうだけど、ただね――」
恐らくずっとこの先もマークされ続けるのではと懸念した。そして
「場合によっては、他の国に圧力をかけて
出禁させるとか、そんなこと
あいつらならしでかしそうだよね」
「せやな、霊華さんもRINAさんも、
それされたらどこにも行かれへんくなるよな」
とかすみも腕組みをしながら心配気にそう呟いた。だが神室霊華の決心は固いようで
「私の場合、別に外国で仕事をすることは
そんなにありませんし、それに――」
英語の通訳がないとダメではないかと2人に訴えた。実はその点は確かに問題であり、玲とかすみはお互いの顔を見あったまま沈黙した。そしてかすみが頭を掻きながら
「確かに通訳無いと厳しいんはそやねんけどな、
でもホンマにええんか、霊華さん?」
ブラックリストに載ったら永遠に消えないことを改めてかすみは神室霊華に指摘した。それでも神室霊華の決心は固いため、
「ほな、霊華さんは連れていくでどやろ、玲?」
「そうだね。でも出来れば僕らも行かずに済めば
それに越したことはないんだけど――」
それは絶対にありえないことは玲も分かっている。特にラハニの今後の処遇を考えたとき、きっぱりと彼らからの干渉を防ぐことは重要であり、そのための話し合いはする必要がある。玲は慎重に言葉を選びながらもそのような考えを披露すると
「せや、ラハニさん復活したとして、
その後どないするかは、
なーんも決めてなかったな」
「そうですね。恐らくあの国で
軍人を続けることは出来ないでしょうからね」
4人はその後ラハニの復活後のことを話し合って時を過ごした。