召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲と物部かすみ、おっさんと再開する(前編)
5月の大型連休が終わって、これから正に風薫る5月を迎えようとする時期。部屋の窓を開けると、境内に植えられた薄緑に染まる楓や楠の木々から、ほのかな若葉の香りが風に乗って部屋の中に漂ってくる。この感覚は、東洛市の下宿では味わえないもので、最神玲ことカーンフェルトは何かしらケンタウリ郊外の樹林を思い出したりしている。そして、毎日の神社の雑務を要領よくこなすことが出来るようになり、そのお陰で最近では自分の時間を持てるようになった今、窓を全開にした自分の部屋で懐かしい雰囲気を味わいながら、ノートパソコンでニュースをチェックしているのである。そんな時、メールソフトにメールが届いたという通知が画面に表示された。早速クリックして送信元と件名を確認すると、見知らぬアドレスと[お礼]の文字が目に入った。あっ、またあれか?と思ってゴミ箱に捨てようとする玲である。あれとは、要するにジャンクメールの事であり、特に最近はフィッシングメールと呼ばれる危ないサイトへ誘導するメールが殆どである。そこでゴミ箱に移そうとクリックした時、メールの先頭の文字が目に飛び込んできたため、一旦マウスから手を放した。そしてよく見てみると、
[最神玲様、物部かすみ様
ご無沙汰しております、ワールド・クローズの
です。
フランス滞在中は大変お世話になりました。
お陰様で無事ロムリアとの商談がまとまりまして、
この秋からロムリアのブランドを弊社でも扱うことが
出来るようになりました。
これも、最神様と物部様のお力添えのお陰です。
さて、パリ滞在中に話をさせて頂いた
お二方との食事ですが、
是非この機会にお願いできればと思いますが、
差し支えなければ皆様のご都合の程を
お聞かせ頂けると幸いです。
ワールド・クローズ代表取締役 若林成政]
と書かれていた。あー、かすみの言う「おっさん」か。さて、かすみにも転送しておくか、と言うことで、かすみにもこのメールを転送しておくことにした。
暫くして、
「玲、邪魔するでー」
あっ、来たな、かすみ。
「邪魔するんだったら帰ってや」
「はいよ」
と言って扉を開けて入るかすみ。はあ、疲れるわ、と溜息をつく玲。
「玲、おっさんからメール来たんだね。で、どうする?」
おっさんじゃないよ、と忠告してから玲は
「そうだね。ワールド・クローズって確か東京だよね。
そうすると、ここから出向くと日帰りは難しいかな。
まあ、尤も転移すれば問題ないけど、
転移先の確保が大変だしね。
東京って人多そうだし。うーん、悩むね、はは」
「ねえ、おっさん、じゃなかった、えっと、誰だっけ?」
さんと教える玲。
「あー、その若林さん、
うちらここに居るのは知ってるの?」
そう言えば、何も伝えて無いよな、というか、僕も忘れてた、とは玲の弁。
「じゃあさ、うちらここに住んでて、
週末しか休みはありませんし、
今遠出する程の余裕もないのですが、
と聞いてみたら?
難しかったらまたの機会にお願いしますとかさ」
まあ、流石にストレートにお断りは気の毒だから、と言うことで、一応こちらに住んでいることと仕事の関係で遠出が当面は難しいですと伝えることにした玲であった。
その日の夕方に、玲の元に再び若林からメールが届いた。文面を読むと、玲とかすみの住む町の隣町である市に有名な温泉旅館があるとのことで、そこで一緒に食事をどうか、というお誘いであった。そこで、再びかすみに転送したところ、5分程経過したところで、ノックもせずにいきなり入って来たかすみが、
「玲、どうする。
確かにね米野市に老舗の温泉旅館があるんだ。
昔、ここに遊びに来ていた時、よくお爺さんやおじさんに
連れて行ってもらったんだよね。
うん、確かにあそこの料理は美味しかったな」
と昔を懐かしみながら舌なめずりするかすみである。そうか、そんな所があったんだ、と言うことは、決まりかな、と思う玲であった。
「じゃあ、返事書いておくけど、
週末であればOKとしておくね。
それで問題なければ、
後は若林さんの都合のいい日でお願いしておくよ」
OKと言って、そのままかすみは自分の部屋に戻って行った。その後、1時間程してから再び若林からのメールが届き、来週末の土曜日に食事をすることが決まった。