召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最後のピース (中編)
翌朝、早速何か動きがあったようだ。M Mの何時もの3人はそのまま別荘に泊まり込んだのだが、早速神室霊華から招集がかかったので、目がパッチリの最神玲と相変わらず寝ぼけ眼な物部かすみはパジャマ姿のままリビングにやって来た。そして
「師匠、玲さん。分かりました!!
エッカート少佐の部屋が!!」
と神室霊華にしては珍しく興奮した面持ちでそう2人に伝えた。そこで神室霊華の案内の元、早速転移門でその場所を確認することにした。
「うわー、こんなに追いやられてるって、
何やろな、何か可愛そうに思えてくるねんけど」
と一見同情する風に見えたかすみだが、実はその眼は笑っていた。一方の玲はと言うと、決して僻地に追いやられているとか、邪魔者扱いされているとかではなく、むしろ作戦の性格上、周りに知られることを最も警戒するはずだから、この場所は最適ではないかと指摘した。神室霊華も玲の推測に大きく頷いて同意を示した。かすみは若干れるも玲の指摘は分かっており「もう、冗談やで、冗談!」と言って誤魔化した。それよりも、場所が分かったものの、そこに人のいる気配は感じない。
「まだ、勤務時間には早いんとちゃう?」
「まあ、確かにね。もっとも、
エッカート少佐だったっけ、彼の任務の性格上、
夜勤とかあるようには見えないけどね」
「そうですね、夜間の作戦ならともかく、
今となってはラハニさんがいないので、
作戦を進めようにも出来ないでしょうし」
となると、暫くここを見張らないといけないのだが、
「なあ、玲、これ誰かがずーっと
見てないとあかんのか?」
「うーん、それは僕たちも、神室さんも困るよね。
仕事にならないからね」
かと言ってロドニーに任せようにも彼は召喚術師でないため、転移門を見ることは出来ない。さてどうしようか、と3人は考えていた時、玲が「あっ、そうだ!!」と何やら思いついたのか、大声を出して叫んだ。これにはかすみは「び、ビックリさせるなや、玲!」と毒づいたかと思ったら、早速マキザッパを召喚して、玲を一シバキした。そんな玲はかすみに猛抗議するも、それよりも
「全く、かすみのせいで忘れるところだったよ。
それよりもね、いい方法を思いついたんだ!」
と言って玲は2人にある方法を提案した。するとかすみが
「そ、そんなこと、マジでできるんか、玲?」
と興奮しながら玲に尋ねるが、少しだけその眼に疑いの気持ちを覗かせていた。そこで玲は、召喚の書を開いて何かを書き始めた。そして暫くしてから、その場に2匹のにくたまを召喚した。ただし何時ものにくたまではない。そして玲は片方を連れて美土路神社の自宅に転移し、もう片方はその場に残した。一方でかすみは玲に指示された通り、その場でホワイトボードとマーカーを召喚して、そこに何か文字を書いた。それをにくたまに見せたところ、玲が直ぐに転移で戻ってきて、
「おい、こら、かすみ!
人を誹謗中傷するなよな!」
とかすみに対し抗議の声を上げた。かすみが書いた文字、それは[れいのアホ ボケ]であった。そしてそれをにくたまが目にしたのだが、同時に玲が自宅に連れて行ったにくたまがその言葉を玲に伝えたのだ。つまり、にくたまという召喚動物を介して、長距離での情報伝達を試したのだ。そしてその実験は見事に成功したのだが、玲は
「ただね、ここに召喚したにくたまは
普通のにくたまと少し違うんだ」
と言いながら、その変更したところを召喚の書を使って解説し始めた。だがかすみと言い、神室霊華と言い、そんな細かな内容を理解できるほど召喚術に精通していないため、彼女たちの頭上には???が湧き続けた。そのうちかすみが痺れを切らして
「玲、あんな、そんなこと説明されてもな、
うちらはエンペラールさんちゃうねんからな、
そこんとこ分かってるか?」
と抗議しながら、再びマキザッパを召喚して玲をしばいた。玲は再びかすみからしばかれたことに腹を立てて抗議するも、かすみは知らん顔をしてしまう。そんな2人を仲裁する訳ではないが、神室霊華が
「でも玲さん、そうなると、この子たちは
どのように呼び出せばいいのですか?」
と運用の仕方が分からないことを玲に訴えた。すると、
「うーん、例えば、この子たちは
『にくちゃんず』みたいな名前で登録するとか、
後は――」
かすみだったら『カラスのカスミブー』なんていいんじゃない、などと玲はかすみをったりした。これには流石のかすみも黙ってはいられない。売られた喧嘩は値切らず即言い値で買い取るや
「はぁ?何やろなー、玲さん。
なんや調子こいてんねんけどな、
自分の動物に自分の名前つけるわけないやろー」
と玲を怒鳴りつけながら、今日何度目かのマキザッパによる猛攻撃を加えた。そのためこれには玲もひたすら逃げるしかなかった。そして何時もの様に神室霊華が
「2人とも、そこまでにして、それよりも
こちらの準備をすべきではないですか?」
とめるように忠告した。そして神室霊華が早速玲に対し、自分の召喚動物たちの改良をお願いしたところ、玲は直ぐにそれを行い、ついでに神室霊華の決めた名前で登録を済ませた。かすみは、玲から「かすみは別にいいんだね?」と言われると、少し、いやかなり腹立たしく思うも、ここで拗ねたら何も良いことはないと分かっているので
「ほな、うちも、やってーな」
と高飛車に構えて玲に伝えた。当然玲は、そんな不遜な態度のかすみを甘やかす気はなく、ここぞとばかりに、
「おやー?かすみさーん。
人にものを頼むときの仕方を
忘れたんですかねー」
と首をくねくねと動かしながらかすみを挑発し始める。神室霊華は首を横に振って もうあなたたちの相手はしませんよ と早々に離脱宣言をするので、かすみは くそっ、玲の奴、また調子こきやがって と腹が立つも、仕方なく
「玲さん、私のもお願いします」
と抑揚のない、AI音声のような声で玲にお願いした。玲はかすみのそんな不遜な態度に腹が立つも、これ以上困らせると収拾がつかなくなると思い、
「しょうがないな、今回だけは許してやろう」
と上から目線で言いながらかすみの召喚動物も改良した。かすみは悔しそうな表情を漂わすも、それよりまた新たなおもちゃが手に入ったことの方が大きかったようで、直ぐに機嫌を直してそのおもちゃを召喚しようとするのだが
「はぁ?おい、玲。
何を勝手に名前つけてんねや?」
とかすみはまたもや不機嫌さを漂わせる。何が気に入らないかと言うと、玲が登録した名前が[カラスのカスミブー]であったからだ。とは言え、これは後で名前を変更することは可能なため、玲は「そんなの仮だからね。後で自分のいいように変更すれば」とかすみの因縁に対し反論する。かすみは「ちっ」と舌打ちしながら、直ぐに名前を変更した。ちなみに変更後の名前は、やはりと言うか『カラスのクソレイちゃん』となったとか、ならなかったとか。それよりも、変な名前を付けられた召喚動物たちが気の毒としか言いようがないのだった。
さて、長距離通信可能な召喚動物たちを使って、問題の部屋を張り込ませることにしたM Mの3人だが、場所的な問題から、かすみのカラスと神室霊華の雀がベストと判断し、それぞれの召喚動物を召喚することにした。ただし、神室霊華は何やら疑問を感じたようで早速玲にあることを尋ねた。それは
「玲さん、向こうに送る動物たちを
沢山召喚した方が効率がいい感じが
するのですが――」
なぜ一対しか送らないのか、という疑問である。それに対する玲の答えは明確で
「沢山送っても、こちらで処理する動物が1体だけ
ですから、全ての情報を処理しきれませんよ。
もしそうしたければ――」
ペアをその分召喚するしかないということである。ただしそうなると、別の問題が発生する。それは
「何がどこに行ったのかを、こちらが、
つまり僕たちが把握できるかどうか
と言う問題が出てきますね」
もしちゃんと計画的にこのペアはこっち、などと配置すれば問題ないだろう。ただし、どれも全く同じ姿形をしているため、果たして見分けがつくかどうか......そして玲の回答に満足した神室霊華は、そのまま一対の雀たちを召喚した。そして
「とりあえず、この転移門で
直ぐ近くに転移させるからね」
と玲が言うや、2人の召喚した召喚動物の片割れたちは転移していった。