召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最後のピース (前編)
美土路神社に戻って来た最神玲と物部かすみは、仕事が始まるまでの数時間程、再び仮眠をとることになった。だが、玲は何やら考え込んでしまうようでなかなか寝付けず、結局そのまま朝を迎えてしまった。一方、相方のかすみはと言うと、こちらはいつでもどこでも寝てしまえるため、只今熟睡中である。そしてもう一人のM Mのメンバーである神室霊華は、そのまま自宅に転移して床に就くのだが、彼女も直ぐに寝付けなかったものの、幸いにもその日の午前中に仕事が入っていないため今は熟睡中である。
そして迎えたそれぞれの朝。夜明けを迎えるまで1時間以上あるが、玲は結局一睡も出来ず、仕方なくリビングに向かい、を連発しながらテレビでニュースを見始めた。そのうち6時を過ぎた頃になって、かすみが寝ぼけでパジャマ姿のまま起き出してきた。何時もの様に洗面所で顔を洗いそのまま歯磨きしていると、リビングから音がするので、歯磨き姿のままリビングに向かった。
「、れい。?」
「ん?かすみか、おはよう。
ちゃんと寝れたようだね」
自分は全く眠れなかったからこうして起きだしたことをかすみに伝えた。かすみはそのまま口をゆすぎに洗面所に向かい、暫くして再びリビングに戻って来た。そして
「そんなん、ぐっすり寝るのは当たり前やろ。
寝る前にあれこれ考えすぎやで、自分!」
と朝から玲に対し説教を垂れる。だがそのうち説教に飽きたのか、かすみは着替えるために自分の部屋に戻った。そしてこの後、かすみの準備した朝食でお腹を満たした2人は、作務衣に着替えて仕事場である社務所に向かった。
何時もの時間に仕事を終えた玲とかすみは、社務所の戸締りをして自宅に戻った。特に玲は、仕事中に何度か睡魔に襲われるも、かすみのように無駄な抵抗をせずに居眠りすることなく、何とか無事仕事を終えてホッとしていた。そして自宅に到着すると、既に神室霊華の姿がキッチンにあり、早速夕飯の準備を行っていた。
「ごめんな、霊華さん。
先に準備させたみたいやね」
「いいえ、師匠。私が早く来過ぎたのが
いけないんです。どうか気になさらないで下さい」
「ほな、直ぐに手伝うな」とかすみは神室霊華にそう言いながら急ぎ部屋にて着替えを済ませ、2人で夕飯の準備を行った。玲はと言うと、何やらリビングで転移門を展開している。そんな玲を目にしたかすみは
「玲、どや?なんか分かったか?」
と尋ねるが、玲は首を横に振って「駄目だね。転移門からだと全く分からないな」と答えた。ただし、現地に転移する上で安全な場所を見つけたということで、食後に早速3人で現地に向かうことにした。
3人がやって来た所は、ある国のアメリカ軍の駐留基地である。ちなみに、アメリカ本国とは異なり、この基地には陸海空および海兵隊が1つの基地内に常駐しているが、その中でも陸軍と空軍が主力となっている。しかもここで働くアメリカ兵は、ウェブの情報からではあるものの、数万人規模で駐留しているという。その数万人のアメリカ兵の中からたった1人の将官を見つけ出すのは困難を極めそうである。
「とりあえずやな、誰か適当に捕まえて
聞いてみるしかないんちゃう?」
「まあそうだけど、畑違いの部隊の人を捕まえても
意味がないからね......」
とりあえず陸軍の制服を着ていて、かつ星の多そうな人に聞いてみようとなった。
1時間後、再び転移場所にしていた倉庫にやって来た3人だが、その表情には落胆の色が濃く出ていた。
「全く、だーれも知らへんって、
どないなってんねや?」
「確かに,将官ですから誰か知っていても
おかしくありませんが......」
「それよりも、何で僕だけ二等兵なの?」
「玲、今それ言うか?」
とかすみは早速マキザッパを召喚して玲を一シバキした。だが玲も納得いかないのか、まだかすみに抗議する姿勢を示していた。
ところで、なぜ玲が二等兵の格好をしているのかと言うと、美土路神社で玲はかすみたちと同じように将官の制服を創生召喚した。だが、
「玲......お前なー、もう少し
使い込んだ感っちゅうのが
出されへんのか?」
これではまるで下ろしたてのピチピチ状態やんか、とかすみはダメ出しをした。そこでかすみが、玲の代わりに制服を召喚したのだが、それが二等兵のものであったのだ。と言うのも
「てか、全員将官っちゅうのも変やろ。
ここは誰か下っ端が必要ちゃう?」
と言うかすみの謎理論のためである。そんな訳で、玲は現地にやって来てもやはり不満たらたらであるのだが、玲もここで揉めている場合でないことは百も承知であるため、仕方なく今の任務に神経を集中することにした。
それから更に1時間ほど聞き込みをしたのだが、残念ながら全く何の手掛かりも得られない。
「仕方ないけど、一度出直そうか?」
と玲が2人に問いかけた。すると神室霊華が、何かを思いついたのかハッとした表情を漂わせた。そしてその変化に気づいたかすみが「霊華さん、どないしたん?」と問いかけると、神室霊華は興奮したようにある考えを披露した。
「師匠、玲さん! エッカート少佐宛に
手紙を書きませんか?」
この神室霊華の提案に対し、玲とかすみはキョトンとした表情を漂わせる。そしてかすみが なんで今更手紙なん? と言う雰囲気を漂わせたとき、神室霊華はその理由を説明した。すると2人とも、目から鱗の心境になったようで、目を見開いたまま言葉を失ってしまった。だがかすみが直ぐに
「そやそや、霊華さん。
うちらその手があるんやんか!!」
「流石は霊華さんや!!」と興奮して騒ぎ立てたので、玲は「かすみ、しっ、静かにして!」と自分の口に人差し指を立てて静かにすように注意した。かすみは「ご、ごめん、つい興奮してもうた」と頭を掻きながら謝罪するが、玲はかすみの興奮も分からなくもないことを理解している。神室霊華が提案した方法、それは召喚した手紙をエッカートなる人物に送るということである。これと言って何か凄いアイデアがある訳ではないように見えるが、召喚した手紙であれば、召喚術師はそれを追跡することが出来る。そして手紙であれば、間違いなく当人に届けられる訳で、それによって本人の居場所を特定することが出来るのだ。
そこで早速神室霊華は、その場で白い封筒を召喚した。宛先はエッカート少佐宛、差出人は
「あいつにしたらええんちゃう!」
とかすみが未だに腹正しく思う人物、マクファーレン大佐である。なお、封筒の中には何も入っていない。あくまでも届けられた時点で召喚解除するので、特に中身を必要としないのだった。そして
「確か郵便物に関しては、
あの建物の中で管理してましたよね」
と神室霊華は誰にともなくそう尋ねるが、玲もかすみもその場所は分かっているので、
「ほな、そこにこっそりと置いてくれば
ええねやな?」
と言うや、その封筒を手にしてかすみは転移してどこかに向かった。10分後、かすみは戻って来て「置いて来たで」と言うことで、後はその封筒が届けられるのを待つだけである。
「じゃあ、後は神室さん次第と言うことで、
僕らは一度戻ることにしようか」
との玲の提案で、3人は自宅、ではなく別荘に向かった。そして早速、露天風呂で体を温めて結果を待つことにしたのだった。