召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲、召喚術を研究する3 (後編)
その後、最神玲はもう一つヘキサグラム型召喚門による本格的な転移術もその場で披露したのだが、早速RINAから質問の手が上がった。それは
「玲さん、自分達は先程話に出た
アニュラスでしたっけ、あれとか
バレル型ですか、それが使えるので
特にこのヘキサグラム型ですか、
これの必要性を感じないのですが......」
と誰もが思う質問である。神室霊華もラハニ・カヤンも言葉にはしないが、RINAの質問に頷いている。だが物部かすみはと言うと、実はすでにその答えが分かっているようで、玲の代わりにかすみが答えることにした。
「せやねん、RINAさんの言うことも
当然やねんけどな、実は転移防止措置
言うのがあんねん。ほいでな――」
多分今知られている転移防止措置でもこのヘキサグラム型による転移は防止できないだろうという推測を披露した。玲はかすみの答えに満足して大きく頷き、
「うん、かすみの言う通り、この術式の転移は
誰にも防ぐことが出来ないんだ。だからこそ、
いざというときのための最後の切り札かな、
そんな感じで思ってくれたらいいよ」
と補足した。RINAは、過去にかすみが転移できない状況に追い込まれて命を失う危険性があったことを思い出した。そして
「そっか、あの時にこれが分かっていたら、
かすみさんは怪我せずに脱出できたんですね」
とRINAは腕組みをしながらそんなことを呟くが、これに対し玲が
「うん、理屈はそうだけど、
でもね仮にこれが分かっていたとしても、
あの時のかすみが無事に脱出できたかどうかは
わからないね。と言うのも――」
これを設置するには、膨大な召喚エネルギーを必要とするからだと玲は指摘した。そして
「かすみの場合だと、今の状態で設置して
地球の裏側に転移したとして、
残念ながらこれを使ってここに戻ることは
できないんだよ」
ましてや神室霊華やラハニ、そしてRINAがこれを使って近所に買い物に行こうとすると、召喚エネルギー切れを起こしてしまうことを指摘した。するとラハニはあの時のことを思い出したのか、顔面蒼白になり震え出したのだが、そんなラハニの傍にかすみは直ぐに寄り添って、ラハニをしっかりと抱きしめた。ラハニはかすみに抱かれたことで安心したようで、直ぐに落ち着きを取り戻したのだが、それくらいに強烈な召喚術だということであった。そんなラハニの様子を目にした玲は、頭を掻きながら
「ごめんね、ラハニさん。
嫌なことを思い出させて」
とラハニに謝罪しつつ、この術式は緊急時の最期の手段として位置付けて欲しいと伝えながら、一応全員の召喚の書に記述した。
さて玲が召喚術の話を終えようとしたとき、突然かすみが、
「玲、さっきのRINAさんに渡した奴やけどな、
あれって転移防止措置って通用するんか?」
と聞いてきた。玲は一瞬虚を突かれたようにキョトンとするが、直ぐに
「あっ、そういえば、そっちは試してないなー」
と言うことで、早速その場にヘキサグラム型の転送装置をまず召喚した。そして分離した片方をかすみに渡し、かすみに別の所に向かってもらった。それから玲は直ぐに、その場にバレル型の転移防止措置を施すのだが、暫くするとかすみが転移防止措置を施した転送装置内に姿を現した。その様子を見ていた玲は、瞬きを忘れてただひたすらかすみを凝視し続けた。そしてそのままの状態で一言「まじかー」と呟いたのだった。その後腕を組んで何やら考え始めるが、やがて
「うーん、そうすると、これって......」
と玲は呟いたきり黙りこんでしまった。実はこの時、玲はもう一つの使い道に思い至ったのだ。それは、ある意味抜け穴というべきものだろうか。例えば仮に転移防止措置を施した施設や敷地があったとしても、普通にこれを持ち込んでどこかに設置すれば、そこが抜け穴になるということだ。しかも
"この抜け穴を解除するには、
元のヘキサグラム型の召喚術を
理解しないとできないよな"
と思うように、この世界でこれを操れるのは自分と
"ヴェルハムか..."
となる。一方、玲の中に潜むカーンフェルトの故郷であるサモナルドとなると大召喚術師エンペラール位しか存在しない。しかもこの抜け穴は、召喚術師であれば誰でも利用可能である。現に召喚術師初心者のRINAは、これを使って自宅と別荘を自由に行き来できるようになったからだ。
"だとすると、これは慎重に扱わないとな"
と何やら結論が出たところで、玲はその場でじっと玲のことを見守っていた4人の女性たちに今のことを伝えた。4人は黙って玲の話に耳を傾けているが、そのうちかすみが
「ほな、これに関してはラハニさんと
RINAさん以外の所に設置せん方がええよな」
と提案するように、外に出さずに自分たちだけの秘密にしておくことになった。
さて、玲が召喚術の話を終えようとしたとき、RINAは何やらまだ聞きたいことがあるようで再び手を上げて
「このヘキサグラム型の転移防止措置って
出来ないんですか?」
と玲に尋ねた。すると、玲はRINAの質問に笑顔で「いい質問ですね!」とある人の物真似をしながら、
「うん、理屈の上ではできるんだけど、
恐らく――」
不可能だろうと指摘した。と言うのも、転移防止措置は、転移する時の召喚エネルギーよりも多くの召喚エネルギーを必要とするためであり、
「まあ、それを設置できるのは、
恐らく僕とエンペラールさん位かなー」
と玲は遠くを見つめる感じでそう呟いた。かすみと神室霊華は、"そりゃそうやろなー"と心の中で納得していたのだが、RINAはまずエンペラールなる人物のことを知らないため、その人は誰なのかを尋ねた。
「そういえば、RINAさんもラハニさんも
知らないんですよね。実はですね――」
と言って玲が説明したのは、エンペラールとはこの召喚術の基礎を作った、玲にとっては偉大なる大召喚術師であるということだ。そして
「まぁ、僕の尊敬する先生でもあるんだよ」
と付け加えたのだが、勿論そこには少しの嘘は含まれているものの、全く間違ってはいない。するとRINAが
「えっ、そんな玲さんの更に上をいく人ですか......
全く想像できないですねー」
と正直な感想を伝えた。するとかすみが、自分のスマホに写真を表示して「この人がエンペラールさんやで」と言ってRINAとラハニに見せた。それは昨年の夏に神室霊華を交えた3人で温泉施設の視察(と言う名の遊び)に行った時の写真である。するとRINAは
「へぇー、凄くスタイルの良い魅力的な
大人の女性ですね。どこかでモデルか俳優でも
してそうですが、それよりも――」
右目が金色になっていることを指摘すると、ラハニが「タホマトイッショデスネ」と驚いたようにRINAの言葉に同意した。まさに召喚術師の特徴がよく出ていたのだった。そして「自分も会ってみたいなー」と呟くと、かすみが
「来年の夏にまたこっちに来るから、
そん時にでも紹介するな」
と伝えると、RINAは嬉しそうに「はい、お願いします」と答えた。
さて、今回の玲による新しい召喚術のお披露目はこれで終了となった。この後は、何時もの様に全員で露天風呂に入って疲れを癒したのだった。