召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
最神玲、召喚術を研究する3 (前編)
M&Mのメンバーが新しいことに挑戦したりして忙しい日々を送っている一方で、この人最神玲はと言うと、恐らく彼だけは以前と変わらない日々を送っている。と言うのも彼の場合、ほぼ毎日空いた時間を使って召喚術の研究に没頭しているからだ。そんな彼は、いよいよ古代語の召喚術がベースとなるヘキサグラム型召喚門による転移術の見通しが立ったようだ。だが何やら浮かない顔をしている。と言うのも
"うーん、このままだと
使い物にならないよなー"
と嘆くように、実用的ではないとの結論が出たからだ。このままだと、彼の発見したというか導き出した方法では、かなりの召喚エネルギーを消費してしまうからである。もっとも召喚エネルギーが琵琶湖とかすみに評される玲からすると使う上で特に問題はないのだが、
"かすみが片道ギリギリかなー"
と首を傾げながら呟くように、かすみがそれを使って例えば地球の裏側に転移したとき、彼女の召喚エネルギーの大部分を消費しかねないのだ。そして恐らくよりエネルギー消費量の少ない方法を探りながら長い時間をかけて辿り着いたのが、あのバレル型ではないかと推測した。
「それよりも、恐らくこっちの使い方の方が
メインだったんかなー」
と玲は何やらブツブツと独り言を呟くのだが、実はもう一つの方法も編み出していた。それはヘキサグラム型だからこそできる方法であるのだが、早速彼はあることを確認するために、別荘の自分の離れの地下工房にやって来た。そしてタチアナ特製の召喚エネルギーを測定する装置の傍にヘキサグラム型召喚門を設置した。ただし単に設置しただけでなく、そこにある術式を外側の6つの三角形の中に3回上書きした。通常は上書きを1回すればヘキサグラム型召喚門は機能し、2回上書きすればそれが外れて2つの正三角形の召喚門になる。だが玲は試しに3回上書きをしたところ、その外れた2つの召喚門がある機能を持つことを発見したのだ。そして彼はそのうちの片方を測定装置内に置き、もう片方を手にしてそのまま美土路神社の自室に向かい、そこに設置した。それから別荘の地下工房に再び戻って来て、測定装置内の召喚門に金塊を置いてそのまま「召喚」と呟いた。するとその金塊は一瞬にして消えるが、転移門マーカーで確認すると、自宅に設置したもう片方の中に現れたことを確認した。そしてこの時の召喚エネルギーの消費量を見るとほとんど消費していないことも見て取れた。つまり、バラバラにされたヘキサグラム型召喚門は、ある種の転送装置として作用したのだ。念のために玲は、自分自身を使って確認するも同じ結果が得られたことで、自信に満ちた表情でその場を離れた。
週末のある日、何時もの様に別荘のリビングに集まった玲とかすみと神室霊華に加え、この日はラハニとRINAも顔を揃えている。と言うのも、玲からある機能を紹介したいということで集まってもらったのだ。そして早速かすみが、
「なんや、玲、また何か
新しい動物でも召喚するんか?」
それを自分たちが批評するのか、などとニヤニヤしながら玲を弄り出す。玲は憮然とした表情を漂わせて、
「全く、かすみはそんな発想しかできないのか?」
想像力が実は乏しいのではないか、とかすみに反撃した。すると売られた喧嘩は値切らず即言い値で買い取るかすみからすると、早速
「はぁ?なんやろなー、玲さん、
うちの想像力をバカにしてんのかなー」
と言うや「お前よりましや!!」と叫びながら召喚したマキザッパで玲をシバキにかかる。だが玲はすんでのところでその攻撃をかわしつつ「全く、直ぐに暴力に訴えるのは人としてどうなんだ!」と更に挑発し出すのだが、やはりこのままでは話が進まないと見た神室霊華が
「師匠、そこまでにして頂いて、
それよりも玲さん、その新しい機能について
紹介していただけますか?」
と2人を制止しつつ玲に話を進めるように促した。玲はかすみ以外の3人に謝罪しつつ、直ぐにその場にヘキサグラム型召喚門を設置した。そしてある術式を3回重ね書きしたところで、片方の召喚門を手にしてどこかに転移した。そして直ぐに別荘に戻るや、RINAに向かって、
「RINAさん、ちょっとそこの三角形の
召喚門の中に立ってもらえます?」
とマジシャンが観客を使って実演をするかのようにRINAを誘った。そしてその中で召喚と言ってもらうようにお願いした。RINAは恐る恐るその中に立ち、かなり不安気な表情を漂わせるが、こういう場合の玲は信頼できることも分かっているため、玲の指示通り「召喚」と叫んだ。するとRINAはその場から消えてしまった。それを見ていた玲を除く3人は、呆気にとられてしまうが、直ぐにかすみが何やら騒ぎ出した。と、突然、その場にRINAが現れたため、かすみの騒ぎが尻すぼみになってしまった。それよりも、RINAに一体何があったのかを尋ねようとした時、RINAは興奮した面持ちで
「わわわ、私の部屋、部屋、に、
いい、行ったんですが...」
とその後の言葉が続かなくなった。そんな興奮で声を震わせているRINAに対し、玲はRINAの頭の回転の良さに驚いていた。と言うのは、恐らく向こうに行ったはいいがこちらに戻る手段が分からないだろうから、その時は迎えに行こうとしていたのだ。所が直ぐにRINAはここに戻って来たことから、この召喚門の正体を瞬時に見抜いたのだろうと推測した。そこでRINAにその点を確認すると、
「は、はい、い、いいや、何だろう、
余りにビックリして、つい『召喚』と
叫んでしまったようですね、はい」
と頭を搔きながら照れた様子でそう口にするのだが、それよりもRINAを除くかすみとその弟子たちは、まだ何があったのか分からず、ポカンとした表情で玲とRINAを見つめていた。そこでRINAの口から何があったのかを語ってもらったのだが、
「ほ、ほな、これって、RINAさんの部屋との
直通転移装置っちゅうことなんか?」
とかすみはまだ驚きから覚めない様子で玲にそのことを確認した。玲は頷いて
「うん、これはねかすみの言う通り、
転移装置というか、転送装置かな、
そんなものだね。ただし――」
これが設置されている2点間だけでしか転移できないことを説明した。しかも
「この転送装置だけど、実は召喚エネルギーを
殆どと言うか全く使わないんだよ」
というおどくろべき事実を玲は披露した。となると、
「じゃ、じゃあ、私でもここと自分の家の間を
自由に行き来できるということですか?」
とRINAはまだ興奮から覚めない様子で玲にそのことを確認した。玲はにこやかな表情でRINAの方に振り向いて
「はい、そうなりますよ。ですから、
これからは好きな時にここに来れますよ」
と答えると、RINAは「やったー!!これで好きな時に露天風呂に入れるぞ!!」とガッツポーズをしてそう叫んだのだった。玲はその場に設置しているヘキサグラム型の片割れをRINAに渡し、「それを自分の離れに置いておけば、そこと自宅との間で自由に行き来できますよ」と伝えた。ただし、これは当面の措置であり、やはり自分の召喚エネルギーで来れるようになったら、それで来た方がいいことも伝えると、RINAが不思議そうな表情で玲を見つめた。そこで玲は、やはり自分の召喚エネルギーを消費することで結果的には召喚エネルギーの総量が増えること、そしてレベルアップしたときには更に多くの召喚エネルギーを蓄えられることを伝えると、それで納得したのだった。
そして玲は序にラハニにもどうかと勧めた。ラハニも片道であれば今の自宅とここを転移することは可能である。ただし1人であればと言う制限がつく訳で、家族で週末ここで過ごしたいときにはあってもいいのではと言うことだ。ただし、次のレベルアップを過ぎたら恐らく余裕で転移できるからそれまでの暫定措置になることは付け加えておく。するとラハニは嬉しそうに玲からヘキサグラム型転移門を受け取った。そして早速片方を離れに置き、そのまま自宅に転移した。そして部屋にそれを置いたところで、そのヘキサグラム型を使って戻って来た。それからその足でリビングにやってくると、RINAと同様に興奮した面持ちで転移が簡単に出来たことを報告した。そして一応その術式に関しては、全員にその場で召喚の書に記入したのだが、
「多分ね、今の所これを召喚出来るのは
僕とかすみと神室さん位だろうから、
必要であれば僕らに行ってくれれば
用意するよ」
との注意点を与えた。要するに設置するのにそれなりの召喚エネルギーを必要とするということである。
その時かすみが、ある点を玲に尋ねた。
「なぁ、何時もうちらが使うアニュラスやと、
設置よりも移動する時に召喚エネルギーを
使うやんか?逆にバレル型やったら、
設置の時に使って、移動はエネルギーゼロやんか?
それやったら――」
わざわざこれを使わずバレル型で十分ではないかとの指摘である。かすみにしては至極真っ当な指摘をするのだが、これに対し玲は明確な答えを提示した。
「うん、かすみの指摘はその通りだよ。
ただね、アニュラスやバレル型は
片道しかできないけど、
これだと往復も問題ないんだよ」
と言うことである。つまり彼らが日常的に使用する転移は、転移先から戻る場合にも転移術を行う必要がある。ところが、ヘキサグラム型の転送装置は、その必要がない。つまり
「決められた2点間で往復するのであれば、
絶対にヘキサグラム型の転送装置の方が
便利なんだよ!」
と言うことである。玲の答えを聞いた4人は、一様に頷いて納得したのだった。