召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
神室霊華、霊障の相談を受ける (第2幕)
名越佑真はそのまま上階に向かった。そしてある部屋にやって来た時、更に強い視線を感じたという。そしてその感じた方向にスマホを向けたとき、それがいた。部屋の中央にあるキングサイズのベッドの残骸の上に、女性らしき幽霊を見たのだ。それは肉眼でもはっきりとわかるようで、余りに突然のことで思わず手にしていたスマホを落としそうになった。そしてスマホに気を取られた隙に、その幽霊は両腕を前に伸ばしたまま急速に名越に近づいて来た。そして名越は逃げる間もなくそのまま幽霊によって首を絞められたのだった。驚いた名越は、咄嗟にその幽霊の腕をつかんで引き離そうとするが、凄く強い力で締め付けられたため、徐々に意識が遠のいて最後はそのまま気絶したという。
「それから気が付いたのは、
車の中に運ばれた後でした」
と淡々と語るが、名越だけが戻って来ていないのを不審に思った仲間たちは彼を探し回るものの、実はそのラブホテルの上階に彼の姿は見えなかったという。では彼はどこにいたのかと言うと
「ホテルの裏手のゴミ置き場みたいなところで
倒れていたんだそうです」
とのことである。勿論彼が知らないうちにそこに逃れてきて、そのまま倒れたということは十分に考えられる。だが、
「僕のスマホは、その上階の部屋の中で
見つかったんです」
だとすると、彼はスマホを放り出したまま逃げてきたということになるのだが、どうやら本人にその記憶はないという。念のためスマホの映像を確認したかどうか、その点を神室霊華は尋ねるが、
「えぇ、確かにあの幽霊を捉えた映像は
残ってました」
と言って、名越はカバンの中から画面がひび割れたスマホを取り出した。そしてある動画を再生して神室霊華に見せたのだが、神室霊華は眉間に皺を寄せてじっと画面を見つめていた。
"これは相当な霊力の悪霊ですね"
と言うのが神室霊華の印象である。そこでその点を名越に伝えると、「やっぱり...」と呟いたきり黙り込んでしまった。ちなみに、この悪霊だが、今現在名越に憑りついていることはなく、その点も併せて伝えると、少しだけホッとしたような感じになった。ただ残念ながら顔中包帯で巻かれているため、その表情までは確認できない。
それよりも、これだけであれは特に何も問題はなく、相談する意味がない。すると、名越は更に驚くことを神室霊華に伝えた。それは、肝試しから帰ってからのことである。洗面所で手洗いをしていた時、ある異変に気付いたという。それは
「自分の首周りに赤く手の跡が残っていたんです」
丁度幽霊に首を絞められたときの跡がそのままの形で残っていたというのだ。それを念のためにスマホで撮影しておりそれも見せてもらったところ、
「確かに、そのまま手の跡が残ってますが、
これだと......」
かなり強烈な力で絞められないとつかないのではないかと神室霊華はそう指摘した。もし仮に手の跡が残る位の力で誰かが首を絞めつけてきた場合、確実に死に至ると思われた。名越は神室霊華の意見に頷きながら更に
「実はあの時、幽霊の手を
引き離そうとしたんですが......」
自分の両手が同じように赤くなっていたという。この時の神室霊華は
"霊体を触れたということは、
かなりの霊力が無いとあり得なかった筈では?"
という疑問を感じていた。確か最神玲か物部かすみからそんな話を聞いた記憶があるのだが、何れにしても相手の霊体はかなり厄介な存在であることは間違いなさそうだ。
さて、神室霊華が何やら考え込んでいる状況を知ってか知らずか、名越はそのまま話を続けた。そしてここからが問題なのだが、その首周りと両手の赤身がそれ以降、徐々に膨れ上がって来たという。
「勿論、医者に行って診てもらったのですが、
どこに行っても原因が分からない
となりまして......」
結局痛み止めと塗り薬を渡されただけだっらしい。ちなみに症状はどうなのかを神室霊華は尋ねると、どうやら痛みはないが、時折痒みがあるという。
「見た感じ、ただ膨らんでいく、
しかもそれがずっと続いている、
そんな感じなんです」
と言いながら、その場で左手の包帯を外し始めた。しかも手のひらだけでなく、肘の辺りまで包帯に巻かれているようで、数分後露わになった左腕を見せられた神室霊華は目を反らしたくなる光景に出くわした。その腕は重度の火傷の様に爛れており、しかもその爛れは二の腕まで伸びようとしているという。その後顔の部分もお見せしましょうかと言われた神室霊華は、元に戻すのが大変そうなので今は遠慮しますと言って断った。そして名越佑真が神室霊華を訪れた理由とは、この恐らく霊障と思われる爛れを何とか治せないか、と言う切なる願いであった。
神室霊華はその場でしばし目を閉じて考え込んでしまう。だが直ぐに
"こういうことは、あの方達に
相談するしかありませんね"
と何時もの2人に相談するしかないと結論付けた。そこで名越佑真に
「名越さん、残念ながら私の所で
霊障の類を扱うことは出ません。
そのため――」
直ぐに何か対応できることはないことを伝えた。神室霊華の返答を聞いた名越佑真は、明らかに肩を落として落胆の表情を漂わせたのだが、そんな彼に向かって直ぐに神室霊華が
「ただですね、私の師匠にあたる方達であれば、
何か解決策をご存じかもしれませんので、
その方達に相談はしてみます」
と言うことを伝えた。それで安心したかどうかは定かではないが、今の名越佑真にとって、神室霊華だけが頼みの綱であり、まさしく藁にも縋る思いでここにやってきたため、その場で
「はい、無理を承知なのは分かっておりますが、
どうかお願いします。僕を助けてください!」
と涙声で頭を下げてお願いするしかなかった。その後名越佑真は神室亭を後にするが、一人応接室に残った神室霊華は目を閉じて
"でもあの方達でも解決できなかったら
どうしましょうか......"
と、ついネガティブな思考に陥ってしまう。もっとも自分がそこまで責任を負う必要がないことは十分に理解しているものの、だが藁にもすがる思いで頼られると、どうしても助けたくなってしまう。とりあえず、夕方になって何時もの様に美土路神社に相談しに行こうかな、などと考えながら応接室を後にした。