曖昧な記憶の、その隣で
「未来。」
「買い物は俺一人で済ませてくる。」
「だから家で横になっててくれ。」
未来はすぐに首を横へ振った。
「そんな、もう大丈夫です!」
「それに……。」
少し照れくさそうに笑う。
「一緒に買い物したいです。」
彬は小さくため息をつく。
「未来。」
「買い物なんて、いつでもできる。」
「今日は休むのが仕事だ。」
未来は少しだけ頬を膨らませた。
「でも、一人で待ってるのは寂しいです。」
その一言に、彬は思わず言葉を失う。
「……。」
「お願いです。」
「少しだけなら歩けます。」
真っすぐ見つめられ、彬は観念したように息を吐いた。
「分かった。」
「ただし、途中で少しでも痛くなったらすぐ帰る。」
「約束できるか?」
未来は嬉しそうに笑う。
「はい!」
「約束します。」
彬はその笑顔に苦笑しながら、小さく頷いた。
「じゃあ行くか。」
「今日の夕飯、何が食べたい?」
未来は少し考えてから、照れくさそうに笑った。
「……彬が作ってくれるものなら、何でも嬉しいです。」
彬は思わず吹き出す。
「俺が作る前提なのな。」
未来は「あっ」と口元を押さえた。
「ご、ごめん。」
「勝手に決めちゃいました……。」
彬は未来の頭をぽんと優しく撫でる。
「冗談。」
「そのつもりだった。」
「でも、『何でも』って言われるのが一番困る。」
「食べたいもの、一つくらい言え。」
未来は少し考えてから、嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ……。」
「彬が好きなもの、一緒に食べたいです。」
「きっと今までも、彬が好きなものを一緒に食べてたと思うから。」
彬は思わず足を止める。
「……そういうこと、さらっと言うな。」
耳を少し赤くしながら前を向いて歩き出す。
未来はその後ろ姿を見て、不思議そうに小さく笑った。