悪役令嬢は世界のバグを修正する
セシリアとの会話が終わり、
中庭には再び穏やかな昼休みの空気が戻っていた。
噴水の水音。
学生たちの小さな笑い声。
レティシアは再び本を開き、
静かにページをめくる。
その時だった。
視界の端が――
わずかに揺れる。
ほんの一瞬。
空気にノイズが走るような感覚。
レティシアの瞳がわずかに細くなる。
そして、
赤い光が点滅した。
視界の中に、文字が浮かぶ。
SYSTEM MONITORING
無機質な文字。
一瞬だけ表示され――
すぐに消える。
何事もなかったかのように。
レティシアは本から目を離し、
静かに空を見る。
(また……)
舞踏会の夜。
空に浮かんだ赤い文字。
世界のエラー。
あれと同じもの。
周囲の学生たちは誰も気づいていない。
セシリアも、
紅茶を飲みながら普通に話している。
レティシアだけが見えている。
レティシアは小さく息を吐いた。
(やっぱり)
(この世界……)
その思考は、
突然の音によって途切れた。
――ドォン!!
遠くから、
大きな爆発音が響いた。
中庭の空気が一瞬で変わる。
学生たちが立ち上がる。
「何!?」
「今の音!」
別の学生が指をさす。
「魔法演習場の方だ!」
校舎の向こうから、
慌ただしい声が聞こえる。
教師の怒鳴り声。
「下がれ!」
「魔法暴走だ!」
学生たちがざわめく。
不安。
恐怖。
混乱。
だが、
レティシアだけは静かだった。
彼女はゆっくりと本を閉じる。
その瞳は、
遠くの演習場の方を見ていた。
胸の奥で、
ある考えが浮かぶ。
(魔法暴走……)
ほんの一瞬、
あの赤い文字を思い出す。
SYSTEM MONITORING
そして、
レティシアは小さく思った。
(イベント……?)
静かに、
新しい出来事が始まろうとしていた。