悪役令嬢は世界のバグを修正する
王都・王国騎士団本部。
石造りの会議室。
長い机を囲んで、
数人の騎士が座っていた。
壁には王国の紋章。
机の中央には水晶板。
そこに映っているのは、
大会決勝の記録映像。
巨大結界が発生した瞬間で止まっている。
誰もすぐには口を開かなかった。
沈黙のまま、
しばらく映像を見ている。
やがて、
隊長が腕を組んだまま言った。
「……もう一度」
副官が操作する。
映像が再生される。
レオンが攻撃。
レティシアが動く。
空間が歪む。
結界が出る。
ログなし。
詠唱なし。
魔法陣なし。
再生が止まる。
副官が言う。
「以上です」
また静かになる。
別の騎士が低く言う。
「ありえないな」
誰も否定しない。
副官が資料を開く。
「対象」
ページをめくる。
「レティシア・アルヴェルン」
「アルヴェルン公爵家長女」
「魔法成績、学園首位」
「大会成績、満点優勝」
次のページ。
評価欄。
副官が読み上げる。
「戦闘能力……SS」
「魔力制御……SS」
「反応速度……S以上」
少し間を置く。
次の行。
「特殊能力……不明」
さらに下。
「未知能力あり」
部屋の空気が重くなる。
隊長が口を開く。
「結論を言え」
副官が一瞬だけ迷う。
だが、
はっきり言う。
「戦力としては最高です」
隊長が小さく頷く。
「同意だ」
腕を組んだまま、
映像を見る。
「前線に出せば」
「一個小隊分の働きはする」
別の騎士が苦笑する。
「小隊どころじゃないでしょう」
誰かが言う。
「一人で戦局変える」
隊長が静かに続ける。
「だが」
視線を上げる。
「問題はそこじゃない」
副官が頷く。
資料の次の行を見る。
「制御評価」
読み上げる。
「制御不能の可能性あり」
部屋が静まる。
別の騎士が言う。
「本人は暴走してない」
副官が答える。
「今は、です」
水晶板を指す。
「術式ログが存在しません」
「発動過程不明」
「干渉範囲不明」
「限界不明」
隊長が低く言う。
「つまり」
副官が答える。
「制御不能です」
沈黙。
重い空気。
しばらくして、
隊長が椅子に深く座る。
目を閉じる。
少し考える。
そして言った。
「結論」
全員が顔を上げる。
隊長の声は静かだった。
「保護対象」
一人が驚く。
「保護…?」
隊長が続ける。
「失うには惜しい」
一拍。
「だが同時に」
目を開く。
鋭い視線。
「監視対象だ」
副官が頷く。
すぐに書き込む。
「王国騎士団判断」
「対象:レティシア・アルヴェルン」
ペンが止まる。
そして書く。
「保護対象」
もう一行。
「監視対象」
部屋の空気がさらに重くなる。
別の騎士が小さく言う。
「研究所も動くだろうな」
副官が答える。
「確実に」
隊長が最後に言う。
低く。
はっきり。
「なら先に動く」
全員が見る。
隊長は映像を見たまま言った。
「あれは」
少しだけ間を置く。
「放っておける存在じゃない」