悪役令嬢は世界のバグを修正する
魔法研究所・観測室。
中央の観測盤の周囲に、
新しい魔法陣が展開され始めていた。
床に刻まれた基盤陣が光る。
円が一つ。
その上にもう一つ。
さらに外側に補助陣。
複数の術式が重なり、
観測用の構造が組み上がっていく。
研究員が順番に式を起動する。
「第一観測陣、起動」
光が走る。
「補助解析陣、接続」
別の円が回る。
「流れ追跡式、展開」
空中に線が浮かぶ。
観測盤の上に表示が現れる。
MAGIC FLOW CHECK
文字が固定される。
さらに式が追加される。
STRUCTURE MONITOR
円の中に細い線が増える。
魔法の流れを示す光が動き出す。
さらに。
SCRIPT TRACE
観測盤の上に、
式のような文字列が流れ始める。
研究員が操作しながら言う。
「流れ、追えます」
別の研究員が確認する。
「大会会場の結界まで接続完了」
「参加者魔力反応も取得可能です」
主任は腕を組んだまま見ている。
短く言う。
「深度を上げろ」
研究員が一瞬止まる。
「……深度を?」
主任は視線を動かさない。
「足りない」
操作盤に新しい項目が出る。
OBSERVATION DEPTH
LOW
MID
HIGH
DEEP
研究員が迷う。
「DEEPは……」
主任。
「上げろ」
操作。
表示が切り替わる。
OBSERVATION DEPTH
DEEP
観測陣の光が強くなる。
円がもう一つ現れる。
今まで見えなかった層が開く。
表示が増える。
SCRIPT LINK
観測盤に細い線が現れる。
イベント構造と、
別の層が繋がる。
さらに、
新しい項目が浮かぶ。
ANCIENT RESPONSE
LOCK
その瞬間、
観測室の空気が変わる。
温度が少し下がったような感覚。
誰も声を出さない。
若い研究員が小さく言う。
「……古代層です」
別の研究員。
「ここまで開きますか」
表示が点滅する。
ANCIENT RESPONSE
LOCK
研究員が主任を見る。
「古代まで見ますか」
少しだけ間。
主任は静かに答える。
「必要だ」
研究員が息を飲む。
「ですが」
「古代層は干渉が」
主任が遮る。
「観測だけだ」
短く言う。
「開けろ」
操作。
LOCKが外れる。
ANCIENT RESPONSE
READY
観測陣の外側に、
さらに巨大な円が現れる。
今までより古い式。
複雑な線。
読めない文字。
空中に浮かぶ表示が増える。
MAGIC FLOW CHECK
STRUCTURE MONITOR
SCRIPT TRACE
SCRIPT LINK
ANCIENT RESPONSE
全部が同時に動き出す。
研究員が確認する。
「接続完了」
別の研究員。
「大会開始と同時に観測可能です」
主任はゆっくり頷く。
「いい」
観測盤の中央に、
対象が表示される。
TARGET
LETICIA
その下に、
小さく点滅する文字。
UNKNOWN PATH
ACTIVE
主任が低く言う。
「今回出る」
少し間。
「古代反応が」
誰も否定しなかった。