悪役令嬢は世界のバグを修正する
闘技場中央。
第1試合の課題が提示される。
教師の声が響く。
「第一課題――同時詠唱」
ざわめきが広がる。
「来た…」
「一番難しいやつだ」
「二重詠唱でも無理なのに…」
教師が続ける。
「二重詠唱、もしくは三重式展開」
空気が一気に重くなる。
「三重!? 無理だろ!」
「一つでもミスるのに!」
「今年レベル高すぎる…」
開始の合図。
一斉に魔法が起動する。
詠唱が重なる。
光が走る。
魔法陣が展開される。
だが。
すぐに異変が出る。
一人の生徒。
詠唱を重ねた瞬間、
魔法陣が歪む。
「っ!?」
バチッと火花が散る。
発動失敗。
別の生徒。
二重詠唱の途中で、
一つ目の魔法が暴走する。
「やばっ――!」
術が途中で崩壊する。
さらに別の生徒。
三重式に挑戦した瞬間、
タイミングがズレる。
魔法陣が重ならない。
発動せず消える。
観客席がざわつく。
「全然できてない…」
「難しすぎるだろ」
「今年レベル高いって聞いたのに」
レティシアの視界。
光が消える。
代わりに表示が浮かぶ。
FLOW BREAK
CONTROL FAIL
さらに。
ORDER ERROR
彼女は静かに周囲を見る。
魔法が失敗している。
だが原因は単純だった。
順番。
一つ目の式。
二つ目の式。
三つ目の式。
その接続順。
発動順。
処理順。
全部ズレている。
(違う)
一人の生徒を見る。
魔力は十分。
式も正確。
だが。
順番が逆。
結果、
発動しない。
(順番…)
別の生徒。
詠唱は完璧。
だが魔力配分が偏る。
一つ目に流しすぎる。
二つ目が足りない。
崩れる。
(配分…)
さらに別の生徒。
全部正しい。
だが。
タイミングが一瞬遅れる。
重ならない。
成立しない。
(タイミング…)
彼女の中で結論が出る。
(順序)
表示が浮かぶ。
ORDER
PRIORITY
MAX
彼女は小さく息を吐く。
(これ…)
少し間。
(処理順の問題だ)
騎士団席。
副官が眉をひそめる。
「失敗多いな」
別の騎士。
「暴発寸前が多い」
実際、
何人かの魔法が不安定に揺れている。
結界がそれを押さえ込んでいる。
隊長が低く言う。
「危険だな」
視線は中央。
「制御できていない」
表示が騎士団側にも出る。
CONTROL
UNSTABLE
RISK
MEDIUM
再び闘技場。
生徒たちが次々と失敗していく。
成功者はほとんどいない。
歓声は減り、
代わりに緊張が増していく。
レティシアはそれを見ながら、
静かに立っている。
視界には、
すべての流れが見えている。
線。
順序。
接続。
処理。
(簡単だ)
少し間。
(順番通りにやればいい)
表示が静かに光る。
FLOW
VISIBLE
ORDER
CONFIRMED
彼女はゆっくりと手を上げた。
まだ誰も気づかない。
だが。
この瞬間から、
「壁」は崩れ始めていた。