悪役令嬢は世界のバグを修正する
魔法研究所・観測室。
「干渉を試みます!」
研究員が叫ぶ。
別系統の術式が起動する。
遮断。
分断。
強制切断。
管理層に対する、
直接介入手順。
本来なら、
どんな接続でも止められる。
「介入プロトコル、実行!」
表示が切り替わる。
INTERVENTION
EXECUTE
一瞬。
観測室の全員が息を止める。
――結果。
INTERVENTION
FAILED
沈黙。
研究員の声が震える。
「……失敗?」
別の研究員が叫ぶ。
「遮断できません!」
「接続が切れない!」
さらに操作。
再試行。
強制上書き。
すべて。
通らない。
表示が連続で更新される。
INTERVENTION
FAILED
FAILED
FAILED
「そんな……」
研究員の手が止まる。
「干渉が弾かれています!」
「拒否されています!」
その言葉に、
室内の空気が変わる。
拒否。
つまり、
向こう側が“選択している”。
主任が低く言う。
「……理由は」
研究員が震える指でログを拡大する。
表示が切り替わる。
PRIORITY
TARGET > SYSTEM
誰も言葉を出せない。
意味は単純だった。
処理優先度。
現在の実行順位。
“対象が、システムより上”。
研究員がかすれた声で言う。
「優先度が……逆転しています」
「こんな設定は存在しません」
「世界管理より……上です」
あり得ない。
世界そのものを制御する層。
そのさらに上に、
個人が位置するなど。
主任がゆっくりと目を細める。
「……上位?」
その言葉には、
疑問ではなく、
確認の響きがあった。
表示が再び明滅する。
PRIORITY
TARGET > SYSTEM
一瞬だけ。
完全に成立する。
“世界より優先される存在”。
そして、
すぐに数値が揺らぐ。
だが。
その一瞬で、
十分だった。
観測室の全員が理解する。
これは異常ではない。
“例外”でもない。
――定義の外側にある存在だ。