悪役令嬢は世界のバグを修正する
魔法研究所・観測室。
暴走していたログが、
ある一点に収束し始める。
無秩序だったはずの情報が、
急激に整列する。
流れが揃う。
順序が揃う。
観測式が――同期する。
円環状の魔法陣が、
すべて同じ速度で回転を始める。
一つではない。
全て。
研究員が息を呑む。
「……同期しました」
別の研究員。
「全観測系、連動しています!」
それは通常あり得ない現象だった。
観測式は独立している。
系統ごとに分離されている。
だが今は違う。
一つの“流れ”に、
全てが繋がっている。
中央の水晶。
その奥。
一点に光が集まる。
表示が浮かび上がる。
WORLD SCRIPT
LINK
ACTIVE
空気が凍る。
誰も動けない。
研究員が叫ぶ。
「世界構造に直接接続しています!」
別の研究員。
「個人単位じゃありません!」
「全体です!」
「階層を飛び越えています!」
表示が重なる。
SCRIPT DEPTH
MAX
SYSTEM LAYER
BYPASSED
通常の魔法では届かない領域。
魔法は、
あくまで“内部操作”。
世界の中での現象制御。
だが――
今、接続されているのは、
その“外側に近い部分”。
構造そのもの。
研究員の声が震える。
「こんなの……観測対象じゃない」
「管理領域です」
主任がゆっくりと水晶を見る。
その奥。
流れの中心。
闘技場。
そして――
レティシア。
主任が低く呟く。
「……本体に触れたか」
誰も否定しない。
否定できない。
表示が静かに明滅する。
WORLD SCRIPT
LINK
ACTIVE
それは、
確定だった。
これはもう、
魔法ではない。
――世界そのものへの接続だ。