悪役令嬢は世界のバグを修正する
## 第4巻 第8章 研究所パニック
### シーン2 アクセス権の異常
魔法研究所・観測室。
暴走するログの中。
一部の情報だけが、強制的に切り分けられる。
「権限ログ、抽出します!」
研究員の声。
別系統の観測式が起動する。
干渉を避けるための、独立解析。
乱れた情報の中から、
一つの表示が固定される。
ACCESS LEVEL
ADMIN:不明
USER:LETICIA
AUTH:UNKNOWN
空気が止まる。
研究員が息を呑む。
「……おかしい」
別の研究員が確認する。
「管理権限、該当なし」
「登録データに存在しません」
さらに操作。
照合。
検索。
結果は同じ。
「権限が……存在しません」
一拍。
それでも、
ログは動いている。
接続は維持されている。
処理は続いている。
別の研究員が、
震える声で言う。
「でも接続しています」
「遮断もできません」
「……あり得ない」
表示が更新される。
USER:LETICIA
STATUS:CONNECTED
AUTH:UNKNOWN
矛盾。
権限がない。
だが接続している。
認証されていない。
だが操作が通っている。
通常なら、
起こり得ない状態。
主任が静かに言う。
「矛盾しているな」
誰も答えない。
それは“間違い”ではない。
“成立している矛盾”。
つまり――
この接続は、
この世界の権限体系の外にある。
研究員の一人が、
小さく呟く。
「管理層に……直接触れています」
「認証を通さずに」
沈黙。
表示がさらに一行追加される。
ACCESS ROUTE
UNKNOWN
その意味を、
誰もが理解する。
正規ルートではない。
裏口でもない。
例外でもない。
“定義されていない経路”。
主任がゆっくりと目を細める。
「……管理外か」
その言葉は、
結論だった。
この対象は、
異常ではない。
“枠の外にいる”。