悪役令嬢は世界のバグを修正する
山間部。
木々が密集する森の中を、
遠征隊は進んでいた。
足元には落ち葉。
踏みしめるたびに、
乾いた音が鳴る。
視界は狭い。
枝が張り出し、
光を遮る。
だが、
その奥に。
わずかに、
違和感が混じり始めていた。
最初に見えたのは、
石だった。
自然の岩ではない。
角がある。
削られた痕跡。
さらに進む。
木々の隙間。
そこに、
崩れた柱が倒れている。
苔に覆われ、
半分は地面に沈んでいる。
誰かが足を止める。
「……これ」
声が小さく漏れる。
また一歩。
今度は壁。
風化した石壁が、
途中で途切れている。
ひび割れ、
崩れ、
原形を保っていない。
さらに奥。
半分だけ顔を出した階段。
上へ続いているはずのそれは、
途中で土に埋もれている。
「これが遺跡か……」
誰かが呟く。
期待していたものとは違う。
壮大な建造物。
神秘的な空間。
そういうものではない。
ただの、
残骸。
別の生徒が肩をすくめる。
「思ったより普通だな」
軽い笑いが起きる。
「もっとこう……すごいの想像してたわ」
「わかる」
さらに一人。
「ただの廃墟じゃね?」
その言葉に、
何人かが頷く。
確かに、
その通りに見える。
崩れた石。
壊れた構造。
風化した跡。
時間に負けて、
残ったもの。
それ以上でも、
それ以下でもない。
遠征隊は進む。
奥へ。
さらに奥へ。
だが、
誰も気づいていない。
その“普通さ”が、
不自然であることに。
崩れ方が、
均一すぎることに。
残っている部分が、
妙に整っていることに。
そして何より。
ここにあるすべてが、
“止まったまま”であることに。