悪役令嬢は世界のバグを修正する
レティシアの足が、
見えない境界を越えた瞬間。
視界の奥で、
静かに何かが切り替わる。
床に走るルーンが、
一瞬だけ淡く光る。
流れが、
わずかに動く。
止まっていたはずの構造が、
ほんの一部だけ再開される。
表示が浮かぶ。
SEQUENCE
VALID
一拍。
続けて、
別の表示。
PROCESS
CONTINUE
それは短い。
だが、
明確だった。
順序。
正しい。
処理。
継続。
レティシアは、
それを“読む”。
理解する。
だが、
深く考えない。
(……通れた)
ただそれだけの認識。
彼女の足は止まらない。
次の一歩。
また次の一歩。
進むたびに、
床のルーンが微かに反応する。
だがそれは、
警告ではない。
拒絶でもない。
“確認”。
そして、
“承認”。
後ろでは、
まだ混乱が続いている。
「どうやったんだ……?」
誰かが声を上げる。
だが、
答えは返らない。
レティシアは振り返らない。
ただ、
前を見ている。
その動きは自然だ。
迷いも、
試行もない。
まるで最初から、
その順序を知っていたかのように。
視界の表示は、
すでに消えている。
だが、
意味だけは残っている。
これは罠ではない。
試験でもない。
“処理”。
そして、
今行われている判定は――
行動そのものだった。