悪役令嬢は世界のバグを修正する
通路は続いている。
誰もが、
ただ歩いている。
生徒たちは、
先ほどの現象を話題にしながら、
慎重に足を運ぶ。
「さっきの、なんだったんだよ……」
「踏んだら戻るって意味分からんだろ」
だが今は、
何も起きていない。
進めている。
それだけで、
十分だった。
教師も、
騎士団も、
同じだ。
警戒はしている。
だが、
理解はしていない。
この通路は、
“通れる場所”だと認識している。
レティシアは、
その中を歩いている。
同じ速度で。
同じ距離で。
だが、
感じているものは違う。
足元。
流れがある。
踏む位置。
通る順序。
すべてが、
“管理されている”。
(違う)
進んでいるのではない。
進めているわけでもない。
(許されてる)
その感覚が、
はっきりと形になる。
一歩踏み出す。
床のルーンが、
わずかに光る。
拒絶はない。
遮断もない。
ただ、
静かに受け入れられる。
次の一歩。
同じ。
何も起こらない。
それは、
“何もない”のではない。
すべてが正常に処理されている。
正しい順序。
正しい位置。
だから、
止められない。
後ろでは、
別の生徒が少しだけ踏み外す。
一瞬。
空気が歪む。
「っ……!」
その足が、
元の位置に戻る。
何事もなかったかのように。
レティシアはそれを見る。
違いは明確だった。
通れたのではない。
通されたのでもない。
“許可された”。
その違いは、
決定的だった。
同じ道を歩いているようで、
まったく違う。
他の者は、
条件に触れているだけ。
レティシアは、
条件を満たしている。
(通過……じゃない)
理解が、
一段深く沈む。
通過とは、
結果ではない。
判定だ。
この場所では、
すべての行動が評価されている。
一歩ごとに。
一瞬ごとに。
そして今、
その結果は一つ。
“許可”。