悪役令嬢は世界のバグを修正する
シーン1-② 表面:通常の学園
中庭は、
明るかった。
陽の光が広がり、
芝生の上に人が集まる。
笑い声。
足音。
風に揺れる木々の音。
どこにでもある、
学園の昼。
「遺跡マジでやばかったよな」
「分かる。あれ絶対普通じゃないだろ」
「でも結局、なんだったんだ?」
輪になった生徒たちが、
興奮気味に話している。
「古代遺構って話じゃなかったっけ?」
「いや、それであんな動くか?」
「宝とかあったのか?」
軽い調子で笑いが混じる。
答えは出ない。
誰も、
確信を持っていない。
ただ――
それでいいと思っている。
話題はすぐに変わる。
昼食の話。
次の授業。
くだらない冗談。
違和感は残らない。
残せない。
教室でも同じだった。
教師が前に立ち、
板書を進める。
生徒たちはノートを取り、
時折、隣と小声で話す。
何も変わらない。
いつも通りの授業。
いつも通りの空気。
その中で、
レティシアは席に座っている。
背筋を伸ばし、
前を向いている。
特別なことはしない。
発言もしない。
ただ、
そこにいる。
周囲の会話が耳に入る。
遺跡の話。
あの時の感覚。
何が起きたのか。
だが――
どれも、
核心には触れない。
誰も、
理解していない。
理解できていないことすら、
気づいていない。
レティシアは、
何も言わない。
言葉にしても、
伝わらないと分かっている。
だから、
ただ聞いている。
教室の外。
廊下に出ても、
空気は変わらない。
生徒が行き交い、
声が重なる。
日常の流れが、
そのまま続いている。
何も起きていないように見える。
何も変わっていないように見える。
それが、
すべてだった。
表面だけは。