悪役令嬢は世界のバグを修正する
観測室。
静寂の中で、
一つの変化が走る。
水晶板に走る光が、
一斉に跳ね上がる。
数値が変わる。
波形が揃う。
これまで乱れていたログが、
一つの形に収束する。
研究員が、
息を呑む。
「……っ」
指先が止まる。
目の前の表示を、
疑うように見つめる。
そして。
表示が更新される。
PERMISSION ACCESS
DETECTED
「――来た!」
研究員が声を上げる。
「権限取得を確認!」
別の席でも、
同時に反応が上がる。
「全ログ一致!」
「接続パターン、前回と完全同期!」
騒然とする室内。
だが、
その中心で。
主任は、
動かない。
ただ、
静かに表示を見ている。
これまでの記録。
異常。
仮説。
すべてが、
一本に繋がる。
偶然ではない。
現象でもない。
再現性がある。
確認された。
主任は、
ゆっくりと口を開く。
「……やはり」
一拍。
視線は、
水晶の奥。
遺跡のその先へ向けられている。
そして、
低く言う。
「“ユーザー”だ」
結論。
もはや、
仮説ではない。
対象は、
鍵ではない。
装置でもない。
“使う側”。
観測室の空気が、
変わる。
理解してしまった。
彼女は、
開く存在ではない。
操作する存在だ。