悪役令嬢は世界のバグを修正する
廊下を進む。
人の流れは変わらない。
声も、
足音も、
日常のまま。
だが――
配置が違う。
出入口。
そこに、
騎士が立っている。
一人ではない。
二人。
三人。
間隔を空けて、
並ぶ。
視線が、
重なる。
内側へ。
外側へ。
死角がない。
ただ立っているだけに見える。
だが違う。
“カバーしている”。
通路の端。
階段の前。
角の手前。
すべてが、
繋がる位置取り。
無駄がない。
偶然ではない。
レティシアは、
その中を歩く。
視線が動く。
だが、
声はかからない。
制止もない。
ただ、
確認される。
(……囲ってる)
誰も気づかない形で。
教室に戻る。
そこでも、
変化は続いている。
窓際。
壁際。
見慣れない装置がある。
小さな台座。
水晶のような核。
淡く光っている。
一定の間隔で、
脈打つように。
魔導院の観測機材。
以前はなかったもの。
今は、
当たり前のように置かれている。
音はない。
だが、
確実に動いている。
測っている。
流れを。
魔力を。
授業が始まる。
教師が前に立つ。
だが、
説明の途中で、
ふと手が止まる。
視線が、
板書から外れる。
結界。
教室を覆う防護。
それを、
確認する。
わずかに手をかざし、
状態をなぞる。
問題はない。
だが、
それでも。
もう一度、
確認する。
授業に戻る。
何事もなかったように。
誰も疑問に思わない。
「最近多いな、点検」
その程度で終わる。
だが、
レティシアには違って見える。
すべてが、
繋がっている。
騎士の配置。
装置の増設。
教師の確認。
一つの目的に向けて、
整えられている。
(……観測)
それだけじゃない。
維持。
管理。
異常の検出。
学園全体が、
変わっている。
表面はそのまま。
だが内側は、
別のものになっている。
ここはもう、
ただの学び舎ではない。
(……施設)
その言葉が、
静かに浮かぶ。
学園はすでに、
“観測のための場所”へと変わっていた。