悪役令嬢は世界のバグを修正する
何も変わっていないように見える。
声があり、
人が動き、
時間が流れている。
だが――
レティシアの視界だけが、
違う。
表示がある。
消えない。
PERMISSION
ACTIVE
以前のように、
ふと現れては消えるものではない。
常にある。
視界の奥に、
固定されている。
まるで、
それが前提であるかのように。
さらに、
重なる。
新しい層。
LOCAL FIELD
MONITORED
囲まれている。
範囲が分かる。
どこまでが、
観測されている領域か。
空間を見る。
いや、
“感じる”。
流れがある。
本来なら、
滑らかに連続しているはずのもの。
それが――
引っかかる。
ほんのわずか。
だが、
確実に。
人が歩く。
一瞬だけ、
遅れる。
声が響く。
わずかに、
ずれる。
順序。
その並びが、
揃っていない。
どこかで、
調整されている。
どこかで、
触られている。
(……増えてる)
レティシアは、
それを理解する。
量ではない。
“干渉の濃さ”。
(干渉が)
見えない層で、
何かが動いている。
観測。
調整。
制御。
それらが重なって、
流れに歪みを生む。
誰も気づかない。
違和感にすらならない。
だが、
レティシアには分かる。
それは知識ではない。
経験でもない。
もっと直接的なもの。
“触れられる側”ではなく、
“触れる側”になったからこそ分かる。
世界が、
わずかに重い。
処理が、
遅れている。
優先順位が、
揺れている。
(……誰かが)
この空間に、
手を入れている。
レティシアは、
静かに息を吐く。
変化は小さい。
だが、
確実だ。
そして――
それを感じ取れるのは、
自分だけだった。