悪役令嬢は世界のバグを修正する
白い空間の中央に、
光が立ち上がる。
点が灯り、
線が結ばれ、
やがて一枚の“表示”として固定される。
TARGET
LETICIA
PERMISSION SIGNAL
CONFIRMED
静寂の中で、
神官たちの視線が揃う。
誰も動かない。
誰も口を挟まない。
ここにあるのは、
意見ではない。
“確認”。
事実の共有だけが進む。
一人の神官が、
淡々と告げる。
「対象、古代遺跡にて権限取得を確認」
別の神官が、
間を置かずに続ける。
「接続状態、継続」
表示の波形が整う。
揺らぎはない。
途切れもない。
常に、
同じ強度で存在している。
それは“発動”ではない。
“接続”だ。
さらに下層の情報が展開される。
ACCESS TYPE
UNKNOWN USER
ほんのわずかに、
空気が止まる。
だが、
動揺はない。
理解できないという事実も、
すでに処理済みの情報として扱われる。
「既存分類に該当なし」
「古代記録との一致なし」
短い報告が続く。
誰も否定しない。
誰も疑問を口にしない。
未知であることは、
障害にならない。
神殿は、
理解してから動く組織ではない。
理解できなくても、
扱えるようにする。
それだけだ。
中央の表示が、
静かに固定される。
TARGET
LETICIA
PERMISSION SIGNAL
CONFIRMED
ACCESS TYPE
UNKNOWN USER
確定された情報だけが残る。
不明な部分は、
空白のまま維持される。
完全な理解には至っていない。
構造も、
原理も、
まだ届かない。
それでも。
“対象として扱うには十分”だった。
神官たちの視線が、
わずかに揺れる。
次に進むための、
最小限の確認が終わる。
ここでは、
理解よりも優先されるものがある。
それは――
“判断”。