悪役令嬢は世界のバグを修正する
――場面が切り替わる。
学園の喧騒は消え、
別の“静けさ”が支配する空間。
光はある。
だが温度がない。
整然と並ぶ装置。
流れ続ける記録。
中央の表示が、
淡く明滅する。
PERMISSION SIGNAL
UNDER OBSERVATION
INTERFERENCE
DETECTED
数値が揺れている。
安定しているはずの波形に、
わずかな乱れ。
「干渉レベル、上昇しています」
研究員の声。
抑えられているが、
わずかに緊張が混じる。
「神殿が直接触れてきています」
別の表示が展開される。
外部アクセス。
フィールド制御。
優先度変更。
明確な“意図”を持った操作。
観測ではない。
介入。
主任が、
ゆっくりと画面を見上げる。
沈黙。
数秒。
「……想定より早いな」
低い声。
驚きではない。
確認。
「接触は限定的ですが、範囲が広い」
「局所ではなく、環境ごと制御しています」
報告が続く。
分析は進んでいる。
だが、
完全には追い切れていない。
主任の指が、
ゆっくりと机を叩く。
思考ではない。
整理。
「封じる気はないな」
ぽつりとした言葉。
「はい。制御と観測を優先しています」
即答。
つまり――
“管理”。
主任の視線が細まる。
「……こちらの領域に踏み込んできたか」
境界線が、
静かに越えられている。
観測だけの領域ではない。
干渉が前提の領域。
数値が、
さらに揺れる。
レティシアに対応する信号が、
わずかに歪む。
「このままでは、主導権を取られます」
研究員の声。
否定はない。
主任は、
一度だけ目を閉じる。
短い間。
そして、
開く。
「対抗策を検討する」
それだけ。
指示は簡潔だった。
新しい表示が立ち上がる。
COUNTER MEASURE
INITIALIZING
まだ、
実行ではない。
だが、
準備は始まる。
学園の表では、
静かな監査。
その裏で、
別の戦いが、
すでに動き出していた。