悪役令嬢は世界のバグを修正する
廊下を、
レティシアは歩いている。
足取りは変わらない。
速さも、
呼吸も、
いつも通り。
前には教師。
自然な距離で、
先導している。
振り返らない。
だが、
進む先は決まっている。
後ろには騎士。
一定の間合い。
近すぎず、
遠すぎず。
逃げ道を意識させない距離。
側面には、
観測員。
視線は向けていない。
だが、
常に位置が維持されている。
囲まれている、
というほど露骨ではない。
誰かが命じているわけでもない。
それでも――
配置は崩れない。
前後左右。
すべてが、
わずかに調整されている。
完全な“ソフト包囲”。
レティシアの視界に、
淡い表示が浮かぶ。
EXTERNAL CONTROL
ACTIVE
空間の流れが、
閉じている。
進める。
歩ける。
だが、
外へは出られない。
(……閉じてる)
内側で、
静かに理解する。
壁はない。
檻もない。
それでも、
境界は存在する。
誰もそれを指摘しない。
誰も異常だと言わない。
日常は続いている。
会話もある。
笑いも戻り始めている。
すべて、
いつも通りに見える。
だが――
レティシアの周囲だけが、
別の構造で組まれている。
自由に見える。
選べているように見える。
それでも、
すべては制御の内側。
彼女は歩く。
止まらない。
抗わない。
その姿は、
どこまでも自然だった。
だからこそ、
誰も気づかない。
――完全に囲まれていることに。