悪役令嬢は世界のバグを修正する
保守派が目を細める。
慎重派も表情を動かした。
だがレティシアは、
視線を逸らさない。
「反発は続きます」
「市場も、すぐには戻りません」
「地方不安も残ります」
一つずつ、
現実を切り分けるように言う。
それは、
理想論ではなかった。
現実を知った者の言葉だった。
王は黙って聞いている。
レティシアは続けた。
「でも――」
そこで初めて、
わずかに空気が変わる。
「流れは戻せます」
静かな声。
だが、
会議室の全員に届く。
“解決”ではない。
“改善”。
壊れたものを、
一瞬で元には戻せない。
止まった流れも、
急には正常化しない。
だが、
動かし始めることはできる。
レティシアの視界に、
淡い表示が浮かぶ。
SYSTEM STATUS
UNSTABLE
RECOVERY POSSIBILITY
CONFIRMED
完全回復ではない。
だが、
崩壊一直線でもない。
戻せる。
少しずつなら。
その理解が、
今の彼女にはあった。
会議室の空気が、
ゆっくり変わっていく。
誰も、
奇跡を期待していない。
だからこそ、
その言葉は重かった。
“全部は救えない”
その前提を認めた上で、
なお進めると言っている。
王は静かに目を閉じる。
そして、
小さく息を吐いた。
それは、
決断の直前に出る呼吸だった。