7/6再開《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~5サイト33KPV
王都の地下ドックから放たれた超弩級飛行戦艦『希望号』は、天狗族の秘宝『風神の翼』が生み出す爆発的な推進力により、音速を遥かに超えて空を駆け上がっていた。
重力が振り切られ、青い空が急速に群青、そして漆黒のへと変わっていく。
だが、神の領域である成層圏の境界線には、絶望的な厚みの「壁」が待ち構えていた。
「上空、敵影多数! 数、計測不能! あれは……天竜族ではありません!」
艦橋でオペレーターを務めるシエルの警告と共に、虚空に無数の光点が実体化する。
それは、人の形を模していながら、生物的な温かみを一切感じさせない無機質な兵器の群れだった。
純白のセラミックスのような流線型のボディ、顔には冷たい光を放つモノアイが一つ。背中からは光の粒子で構成された六枚の翼を展開し、両手には高熱の光刃を形成している。
「『』……。神の庭を汚す者を排除するためだけの、自動殺戮機械か」
ヒカルは『調律の剣』を握りしめ、その無機質な殺意を睨みつけた。
「排除スル。排除スル」
機械的な音声と共に、数万体の機動天使が雲霞のごとく『希望号』へと殺到する。その数は、単独の戦艦で対処できる限界を遥かに超えていた。
『希望号』の迎撃砲火が火を噴くが、天使たちは幾何学的な回避運動でそれを躱し、死角から光刃を突き立ててくる。
「くっ……! 速い! 天竜族より厄介だわ!」
「このままでは装甲が持ちません! 防御結界、飽和します!」
レヴィアが甲板から炎のブレスで迎撃するが、圧倒的な物量差に押し込まれていく。テラナが悲鳴を上げる。
万事休すかと思われた、その時。
『王よ、上を見るな! 前だけを見ろ! 背中と足元は、地上の我々が支える!』
通信機から、地上に残った総司令ガイアの重厚な声が響いた。
それを合図に、遥か眼下の地上が、一斉に輝き出した。
◇◆◇◆◇
地上、王都『調和の座』および統一領全土。
そこには、かつて敵対し、今は一つの目的のために結束した「世界」の姿があった。
「全軍、照準合わせ! 敵の機動パターンは、レオーネ皇女とシエル殿の解析により全て把握済みだ!」
陣頭指揮を執るのは、人類側摂政レオナルドだ。彼は通信機を片手に、対空魔導砲部隊へ檄を飛ばす。
「我々は、ただ守られるだけの存在ではない! カインが遺したデータ、アウラ殿の解析、リヒター総帥の武人の魂……。それら全てが、我々の知恵となり、力となっているのだ! 神よ、これが人間の意地だ!」
「「「撃てぇぇぇぇぇッ!!!」」」
レオナルドの号令と共に、数千の魔導砲が一斉に火を噴く。
その弾頭には、ソルニアが調整した「愛の調律」の波動が封入されており、機動天使の防御障壁を中和する特性を持っていた。
南の砂漠では、獣王ヴォルグが咆哮を上げていた。
「吠えろ、獣の戦士たちよ! 獣の目は、神の光にも眩まない! 奴らの動きの癖を見切れ! そこだッ!」
『餓狼族』、『黒豹族』、『戦象族』。多種多様な獣人たちが、野生の勘と驚異的な身体能力で魔力の槍を投擲する。槍は空高く舞い上がり、天使のコアを正確に貫く。
東の山脈では、天狗の若き族長フウガが風を操っていた。
「風よ、刃となれ! 船を押し上げる上昇気流を作れ!」
無数の天狗たちが起こす風が、巨大なエア・ストリームとなって『希望号』を後押しし、同時に真空の刃となって天使の翼を削ぎ落とす。
北の峡谷では、ドワーフの将軍アイラ・アイアンハンドが、巨大な列車砲を空に向けていた。
「アネキ(ボルタ)が作った船だ! 傷一つ付けさせるな! 特大のをぶっ放せ!」
ドワーフの技術の粋を集めた超長距離砲が火を噴く。
そして、エルフの里では、武将アルス・アルゴリズムが魔術師団の指揮を執っていた。
「照準補正、リンク完了。……放て、五千の術式!」
幾何学的な光の矢が、正確無比に天使の急所を貫いていく。
「私たちも……!」
王都の大聖堂では、聖女クラリスと信仰の側妃シルヴィアが、祈りを捧げていた。
「光よ! 盾となり、剣となり、王を守りたまえ!」
人々の想いが魔力となり、地上の攻撃に神聖な加護を与えた。
ギュギュギュッ!!!
ゴォォォォオオオオオ!!
ズガガガガガガガッ!!
ドォン! ドォン!! ドォン!!!
地上から伸びる無数の光の帯が、空を埋め尽くす機動天使たちを次々と撃ち抜いていく。
かつては傷一つつかなかった神の兵器が、地上の「結束した力」の前に、紙くずのように砕け散っていく。
「すごい……! 地上のみんなが、空への道を切り開いてくれている!」
セフィラが歓声を上げる。
地上からの援護射撃と強烈な上昇気流は、機動天使の包囲網に巨大な風穴を開け、『希望号』の進路を確保していた。
「今です! ソルニア、お願い!」
代理指揮のアクアが叫ぶ。
「はい! アウラ様の遺志、今こそ!」
『希望号』の制御室で、光の六天将ソルニアが両手を広げた。
彼女の周囲に展開された無数の魔導スクリーンに、亡き師アウラから継承した複雑な幾何学模様が高速で描かれていく。
「全砲門、リンク接続。ターゲット、機動天使群の中枢制御ユニット! 術式展開、『』!!」
『希望号』の全砲門から、無数のレーザーが放たれる。
それは単なる直線的な攻撃ではない。ソルニアの計算によって軌道制御された光線は、まるで生き物のように曲がり、反射し、敵の死角を正確に貫いていく。それは、アウラが遺した「神のシステムへの介入コード」を応用した、対神兵器の極致だった。
チュンッ、チュンッ、チュンッ……!
一瞬の静寂の後、空を埋め尽くしていた残りの機動天使たちが、連鎖的に爆散した。
光の雨が降り注ぎ、神の防衛ラインが完全に崩壊する。
「やった……!」
ソルニアが額の汗を拭う。
「見事だ、ソルニア。アウラも誇りに思うだろう」
ヒカルが彼女の肩に手を置く。
「はい……! 王の道を、切り開きました!」
目の前には、神の居城『天上の御座』が、その巨大な姿を露わにしていた。
防衛部隊を突破した今、いよいよ神の中枢への突入が始まる。
だが、ヒカルは知っていた。隔絶されたプログラムの世界のなかで、カインとのやり取りで知った事実。その城門の前には、さらなる強大な気配――神の側近である「セラフィム」たちが待ち構えているのを……。
「総員、衝撃に備えろ! 強行着陸する!」
アクアが叫ぶ。
「レヴィア! フレア! 正面の扉をぶち抜くぞ!」
「任せなさい! 夫の道は、我らが切り開くわ!」
「御意! 我が炎、王のために!」
船首に立ったレヴィアとフレアが、炎のユニゾンブレスを放つ。
炎の奔流が神の居城のゲートを融解させ、風穴を開ける。
『希望号』は、爆炎と光の粒子をかき分け、神の居城の着陸ポートへと突っ込んでいった。
ズガァァァァァンッ!!
激しい着地音と共に、船体が停止する。
ハッチが開き、ヒカルたちが飛び出した。
そこは、白一色で統一された、無機質で静謐な空間だった。
ついにたどり着いた、神の領域。
「行くぞ、みんな! ここからが本当の戦いだ!」
ヒカルが剣を掲げ、六龍姫、六天将、そして子供たちがそれに続く。
地上からの熱いエールを背に受けて、彼らは神への最後の挑戦を開始した。
次回より、フェーズ4「神殺しの13元ユニゾン」開幕。
最初の敵は、炎を司る。
【第181話へつづく】